育児ノイローゼの症状と対処方法。つらいときは1人で悩まないで

第110回 みんなが共感!ママのお悩み
育児ノイローゼとは、家事や育児を頑張っているママの誰もが陥る可能性のある心身の不調です。紹介する症状と照らし合わせて、セルフチェックしてみましょう。負担を減らすための対処法や、いざというときに頼れる場所についても解説します。

育児ノイローゼとは

子育て世代であれば「育児ノイローゼ」という言葉を耳にしたことのある人は多いでしょう。とはいえ、その実態について世間に深く理解されているとはいえません。まずは、どのような状態を育児ノイローゼと呼ぶのか知っておきましょう。

精神的に不安定な状態のこと

育児ノイローゼとは、「子育てのストレスがたまって精神的に不安定な状態になること」です。気持ちが悪い方向へ傾きやすいとしたら、育児ノイローゼの兆候かもしれません。

こうした精神状態を「今はちょっと疲れているだけ」と軽く考えるのは危険です。元々神経質な面がある人だけが発症するとは限らず、誰にでも育児ノイローゼになる可能性があります。

無理を重ねた結果、どうしたらよいのか判断できないほど追い詰められてしまうケースも少なくありません。自分や周囲が気づいた時点で、早めに対処することを優先しましょう。

どのような症状が表れる?

続いて「精神的に不安定な状態」が、具体的にどのような症状として表れるのか見ていきましょう。「子育ての疲れがたまっている」と感じるときは、気軽にセルフチェックしてみることをおすすめします。

気力や興味がなくなる

育児ノイローゼの典型的な症状として、気力と興味を失ってしまうことがあげられます。「頭の片隅でやらなきゃと思っているのに、座ったまま動けない」「今まで好きだったこともやりないと思えない」というのであれば、危険信号がともっているといえるでしょう。

体力的には動けるはずなのに、心が疲れているせいでやる気が起きないのです。以前は好きだったショッピングや習い事、食べ物への興味が突然フッと消えてなくなってしまったかのように感じることもあります。

我が子をかわいいと思えない

いとおしく思っていたはずの我が子に対して、何も感じなかったりイライラしたりするのも育児ノイローゼの症状です。

イライラがピークに達した瞬間、反射的に手が出そうになってしまうことも少なくありません。そのような状態が続くと「子どもと2人きりになるのが怖い」「母親失格だ」という思考に陥りやすくなります。

親が子に向ける無償の愛も、心に余裕があってこそ与えられるものです。その余裕が生まれるゆとりが一切なくなるほど、心が擦り切れているのでしょう。

疲れているのに眠れない

心の不調が不眠につながることもあります。「疲れ切っているのに眠れない」という場合は、育児ノイローゼの傾向にあるといえるでしょう。

子どもに対応しながら「何時までにあれをして、その合間にこれをして…」と育児中のママの頭はフルに活動しています。気づかないうちに、自分の処理能力を超えてしまうことも多いものです。

うまく気持ちの切り替えができなくなると、常に不安と緊張にさいなまれるようになります。リラックスとは程遠い状態にあるため、寝ようと思っても眠れなくなってしまうのです。

誰とも会わずに引きこもる

人と会って話すという行為には、少なからずパワーが必要です。育児ノイローゼで気分が落ち込んでしまうと、そのパワーがなくなるため引きこもりがちになります。

出かける準備をするのも家に招くのも、段取りを考えるだけで面倒になってしまうでしょう。友人からのメールには明るい返事を返していても、実際の精神状態は文面とは真逆です。

一方で「誰かと話したいけど子どもと外出する気力がない」というケースもあります。出先で子どもがぐずり出すのは、通常の状態でもストレスがかかるものです。

育児ノイローゼになると突然のトラブルに対する不安がさらに大きくなり、外出するよりも家で過ごすことを選んでしまいます。

育児ノイローゼになる原因

育児ノイローゼを改善するには、その原因を取り除くことから取りかかる必要があります。「育児ノイローゼになっているかもしれない…」と思ったら、下記の4点に心当たりはないか考えてみましょう。

寝不足やホルモンバランスの乱れ

「寝不足」は、様々な体調不良を引き起こします。寝不足によって十分な休息が取れていないと、たっぷり睡眠が取れているときに比べて育児ノイローゼの状態にも陥りやすくなるでしょう。

また「ホルモンバランスの乱れ」も原因のひとつです。妊娠・出産・授乳と、体とともにホルモンバランスも急激に変化します。数時間おきの授乳や夜泣き、育児と仕事の両立など、乳幼児を育てている間はどうしても寝不足になりがちです。

「生理前にイライラする」とよくいわれるように、ホルモンバランスの変化は精神面に影響を与えると考えられています。こうした身体的な不調や変化が、育児ノイローゼのきっかけとなっているのかもしれません。

夫や家族の協力が得られない

近年、ワンオペ育児の問題がたびたび取り上げられています。ワンオペとは「ワン・オペレーション」の略で、「1人だけで子どもを育てている状態」のことです。

夫の仕事が忙しい・実家が遠い・ひとり親であるなど、家庭により理由は様々でしょう。しかし、ワンオペ育児は、周囲のサポートがある家庭と比べると「育児ノイローゼになりやすい環境である」といわざるを得ません。

赤ちゃんは、ほぼ何もできない無力な状態で生まれてきます。ある程度成長すれば、今度は危険のないよう目を光らせる必要があります。

乳幼児を育てている間は、いわば年中無休の24時間勤務をしているようなものです。ワンオペ育児で心が疲れてしまったとしても、無理はありません。

すべて完璧にこなそうとする

「完璧主義」「几帳面」「真面目」こうした一般的に美徳とされる性格が、育児においては裏目に出てしまうことがあります。もともときちんとした性格の人は、「何事も完璧にこなして当たり前」といった価値観を持っていることが珍しくありません。

こうした価値観の人は、計画どおりできなかったことに対して落ち込みやすい傾向があります。がっかりすることが多いほど精神的に追い込まれ、育児ノイローゼになってしまうでしょう。

他人から「しっかりしているね」とほめられることがあるとしたら、自分ではそれほど完璧主義ではないと思っていても、真面目な部類に入るのかもしれません。

いつも子どもと2人で過ごしている

「ワンオペ育児ではないが、日中はいつも子どもと2人きり」という状態も、育児ノイローゼの原因となりがちです。子どものタイプによっては、日中だけでもかなりハードな日々となるでしょう。

不機嫌の理由もわからず、ギャン泣きを続ける子もいます。声が大きすぎるために放置もできず、かといって抱いても収まらず「ご近所に迷惑をかけているのでは」と気が休まりません。

ひとり遊びができないタイプの子だと、意思の疎通ができるようになっても四六時中ママにぴったりくっついています。朝しっかりメイクをすることも、落ち着いてトイレに入ることもできないでしょう。

「自分のことが何もできないのは今だけ」と自分を犠牲にした生活を続けていると、気づかないうちにストレスが積み重なってしまうのです。

育児ノイローゼの対処法

育児ノイローゼは、心や体の負担を減らしてあげることが何よりの対処法となります。ここで紹介するリラックス方法を参考に、自分を楽にする方法を探してみましょう。

1人の時間をつくる

「子どもがわずかに身じろぎをしただけで目が覚める」「泣き声の幻聴が聞こえる」といった経験はないでしょうか?乳幼児がいると、常に気が張った状態になりやすいものです。

こうした緊張状態から解き放たれるために、1人だけの時間をつくりましょう。「土曜の午後は子どもを預けて出かける」など、何もしなくてよい休日を決めるのです。

週に1回が難しければ、月に1回でもかまいません。「美容院で髪のカットやケアをする」だけでも、気持ちが晴れやかになり前向きな気持ちになれます。

いつ終わるともしれない育児を続けているのと決まった休みがあるのとでは、心にかかる負担がまったく違うものです。「子どもには自分がついていなければ」というプレッシャーを、ほんの少しだけ信頼できる誰かに背負ってもらいましょう。

たまには手抜きをする

子育て中は、「いつもよりも心の余裕を多めに空けておく」のがポイントです。家事に育児に頑張りすぎている人は、手抜きする方法を考えてみましょう。

肩の力を抜いてみると、家事にも育児にも手を抜けるところが見えてきます。たとえば、子どもに3食ごはんを与えるのは必要ですが、そのすべてを手作りする必要はありません。

子どもに外遊びをさせてのびのび育てることは大切ですが、子ども番組やアニメから学べることもたくさんあります。

「やらなくてもいいんだ」と思うと、驚くほど気が楽になるかもしれません。よい意味での適当な家事・育児を、1日の計画に取り入れてみましょう。

夫にも家事や育児を手伝ってもらう

家事や育児の手を抜くと「やることがたまって後から大変になる…」と心配する人もいるでしょう。そういった場合は、必要最低限の部分だけでもパパにお願いしましょう。

「家事や育児はママの仕事」と決まっているわけではありません。特に子どもが小さいうちは、ママの背負う荷物だけが極端に重くなっているケースもあります。

「平日の帰宅後30分だけ」「休日の数時間だけ」ではなく、ヘルプが必要なときに必要なだけのサポートを求めてよいのです。

不安を吐き出せる相手をつくる

もともと1人で過ごすのが好きな人や、家にいる方が落ち着くという人もいるでしょう。しかし、育児中に限っていえば、「言いたいことが言える相手」を見つけることをおすすめします。

相手はパパでも友だちでも実家の親でもかまいません。「子育てに関する不安や不満をいつでも吐き出せる相手がいる」ということが重要です。

同じ年代の子どもを育てるママ友であれば、互いに共感できる部分も多いでしょう。「つらいのは自分だけではない」と思えることも、ストレスの緩和につながります。

夫に直接話すと感情的になってしまうことも、ママ友に話してみると「それはこうするといいよ」と、経験者ならではのアドバイスをもらえて気持ちが落ち着くこともあるはずです。

つらいときは専門の機関も利用しよう

育児ノイローゼが重症化すると、自分の気持ちを整理するのも難しくなります。「育児の何がつらいのか」「どうしたら解決できるのか」をうまく他人に説明できないこともあるでしょう。

解決の糸口を見つけにくい問題は、専門の機関に相談するのがおすすめです。家庭内で話し合っているだけでは思いつかないようなアプローチ方法を見つけてくれるかもしれません。

子育て支援センター

「孤独感がつらい」「育児の不安を相談したい」というときには、「子育て支援センター」がおすすめです。「厚生労働省」では、2014年の4月から「地域子育て支援拠点事業」について実施要項を定めて推進しています。

20年の調査では、全国の拠点は常設の「一般型」と児童館や児童福祉施設を借りて実施する「連携型」を合わせて、7500カ所以上にものぼるそうです。

職員に話を聞いてもらえるのはもちろん、「一時預かり」を実施している施設もあります。子育て世代のママが集まるため、子どもをきっかけに同じ立場で話せるママ友が見つかるかもしれません。近所にある施設を探し、どのような支援を行っているか調べてみてはいかがでしょうか?

出典;地域子育て支援拠点事業実施状況(令和元年度)

児童相談所

児童相談所というと、虐待など大きな問題が起こったときに利用される施設といったイメージがあります。しかし、実際にはもっと幅広い相談を受け付けている場所です。

児童相談所のメリットは、「児童福祉司」や「保健師」といった専門知識を持った人に相談できるという点でしょう。第三者の冷静な目で、自分の状況を判断してもらえます。

子育ての悩みに対応する適切な機関や施設のこともよく知っているため、自分に必要なサービスがどこで受けられるのかといったことも気軽に相談してみましょう。

全国児童相談所一覧|厚生労働省

心療内科

気持ちが不安定になっているときには「心療内科」を受診してみるのもよい方法です。病院というと大げさに感じるかもしれませんが、心療内科では軽度の悩みを持った人のカウンセリングも通常の診療として行われています。

メンタルな問題を専門に取り扱っているため、心を軽くする方法についてもアドバイスがもらえるでしょう。「歯が痛いから歯医者に行こう」くらいの気持ちで、予約の電話を入れてもよいかもしれませんね。

まとめ

「子どものために我慢しなくちゃ」「子どもを幸せにしたい」と思い、子育て中の多くのママが日々頑張っています。とはいえ、心が悲鳴を上げるほど頑張りすぎては本末転倒です。子どもの本当の幸せとは、大好きなママが笑顔でいてくれることなのではないでしょうか?

もし今「うまく笑えない」「子育てがつらい」と思っているのなら、育児ノイローゼかもしれません。自分からSOSが出せるうちに、なるべく早く身近な人や専門の機関に相談しましょう。