●働き始めると兆候が顕著になる
「発達障がいは突然なるものではなく、生まれつきのものですので、子どもの頃から多少なりとも兆候があるはずです。ただ、知的障がいとは別物なので、周囲も『ちょっと変わっている子ね』という理解のまま大人になってしまうことも多いです」(椎名先生 以下同)
生活に大きな支障がないまま成長するものの、社会に出て働き始めると、発達障がいの傾向が表面化するそう。
「働きはじめると人より要領が悪く、優先順位がつけられないとか、何度も同じ失敗を繰り返したりして上司や周囲から怒られる機会が増えてきます。また、たとえば『10時から会議室をセッティングしておいて』と言われたとすると、10時に会議室の扉は開けるけど、予約はしないというようなこともあります。言葉に紐づくイメージができないことが多く、怒られることが増えてうつ病になるというケースもありますね」
仕事で求められる臨機応変さについていけなくなったとき、自分でもおかしいと感じるようになるのだそう。
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●発達障がいを疑う3つのポイント
では、発達障がいが疑われるケースにはどのようなものがあるのでしょうか。椎名先生によると発達障がいはおもに3つのカテゴリで違和感を察知できるといいます。
<コミュニケーション>
良い面は素直で正直だが、思ったことがすぐ口に出るため相手を不快にさせることがある。また言葉通りの解釈をするため、コミュニケーションが円滑に進まない。たとえば、車庫入れのとき、「バックするから車を見てて」と言われると、じっと車を見ている。頼んだ方からすると、「ぶつからないように後ろを見ていてほしい」という意味だが、それが伝わらない。
<社会性>
天真爛漫なので、基本的にストレスはあまり感じない。興味があればどこまでも一直線に、集中力を持ってやり続けることができる。執着心が強いので、一度結婚すると離婚をしないという人が多い。また、人に流されない一方で、共感することができない。
<想像力>
決められた仕事や約束は、正確に緻密に実行することができる。単純作業が苦ではないが、柔軟な対応ができないので、「雨だから今日は出かけるのをやめよう」という発想がない。予定を変更されると極端に機嫌が悪くなり、怒り出すこともある。
じつはこうした兆候が見られたとしても、実際に精神科で検査をすると、完全なる発達障がいだと診断される人は少ないそう。まずは、相手の特性を理解した上で、ストレスを感じさせないような対応をしてあげることが望ましいのかもしれません。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)
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