離婚調停における調停調書とは?失敗しないためのチェックポイント

離婚調停における調停調書とは?失敗しないためのチェックポイント

3、調停調書と似ている公正証書や和解調書とは何が違う?

調停調書と勘違いしやすいものに「公正証書」と「和解調書」があります。違いは次のとおりです。

 

公正証書

和解調書

調停調書

作成される場面

協議離婚

(作成は任意)

離婚裁判で判決前に和解が成立

離婚調停で離婚が成立

作成場所(作成者)

公証役場(公証人)

裁判所(書記官)

裁判所(書記官)

強制執行できる範囲

金銭のみ

金銭以外も可能

金銭以外も可能

強制執行認諾文言

必要

不要

不要

以下でそれぞれについて詳しく解説します。

(1)公正証書は協議離婚の条件がまとまった後に作られる

公正証書は、裁判所の手続を利用せずに協議離婚をする場合に任意で作成される書面です。

離婚に関する取り決めをした後に夫婦で公証役場に出向き、申請して公証人に作成してもらいます。

公正証書にするメリットは、改めて訴訟を起こさなくても強制執行が可能になることです。

もし公正証書にせず、協議離婚で合意した内容を自分たちで書面にした場合、後に違反があってもすぐには強制執行ができません。わざわざ裁判所で訴訟などをして権利の存在を確定させなければ、強制執行の手続きに移れないのです。

これに対して「強制執行認諾文言」を入れた公正証書があれば、すぐに強制執行が可能になります。「強制執行認諾文言」がなければ強制執行はできないので注意してください。

また、公正証書を用いて強制執行できるのは金銭支払いの義務だけです。

  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 養育費

についての強制執行はできますが、面会交流についてはできません。

公正証書は調停を申立てなくてもよいため取得しやすいですが、調停調書より効力が弱い面もあるといえます。

(2)和解調書は離婚裁判になって和解すると作られる

和解調書は、調停が成立せず離婚裁判になり、そこで判決前に和解した場合に作成される書面です。どの段階で作成されるかが異なるだけで、和解調書と調停調書は同様の効力を持ちます。

(3)調停調書の原本・謄本・抄本・正本って何?

調停調書の中でも、

  • 「原本」
  • 「謄本」
  • 「抄本」
  • 「正本」

があり、微妙な違いがあります。

 

意義

必要な場面

原本

最初に作成されたオリジナル

裁判所での保管

謄本

原本の全部の写し

役所への届出

抄本

原本の一部の写し

正本

原本と同じ効力を持つ特別な謄本

強制執行

①原本

「原本」とは、最初に作成されたオリジナルの文書です。裁判所において保管されます。

②謄本

「謄本」とは、作成する権限を持つ公務員が、原本の内容の「全部」を写したものです。調停離婚を役所に届け出る際には、調停調書の謄本が必要になります。

調停調書の謄本を作成できるのは書記官です。当事者が原本の内容と同一内容の文書を作ったとしても、作成権限がないため謄本とはならず、単なる「写し」に過ぎません。

③抄本

「抄本」とは、作成する権限を持つ公務員が、原本の内容の「一部」を写したものです。謄本と同様の役割を持ち、違いは原本の「全部」の写しか「一部」の写しかという点だけになります。

④正本

「正本」は謄本の一種ですが、「原本と同一の効力を有する」とされる特別なものです。強制執行をする場合には調停調書の正本が必要になります。

4、調停調書ができても終わりではない~離婚届提出までの流れ

調停が成立したからといってすべての手続が終わったわけではありません。その後の手続を解説します。

  • 裁判所に謄本を請求する
  • 役所に離婚届を提出する
  • 離婚調停成立後必ず「調停調書正本の送達」と「送達証明書の取得」を行う
  • 調停調書が届かなかったらどうすればよいのか

(1)裁判所に謄本を請求する

調停が成立したら、その足で裁判所に調停調書の謄本を請求してください。離婚を役所に届け出る際には、調停調書の謄本の添付が必要なためです。後日郵送で申請することも可能ですが、その場で申請してしまった方が楽でしょう。

(2)役所に離婚届を提出する

調停調書の謄本を入手できたら、役所に出向いて離婚届を提出してください。調停離婚の場合には調停成立から10日以内に届出をしなければなりません。

離婚届の提出についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

(3)離婚調停成立後必ず「調停調書正本の送達」と「送達証明書の取得」を行う

調停が成立した際には、調停調書正本の送達の申請も忘れないでください。

送達とは、裁判所が調書を当事者双方に送付することをいいます。謄本だけでは強制執行ができず、正本が手元に存在しなければならないため、送達申請が必要です。

後から送達申請することも可能です。しかし相手が住所を変更していてスムーズにいかないケースも考えられます。調停成立直後に申請することをお勧め致します。

また、同時に送達証明書の取得も申請してください。送達証明書は正本の送達があったことを証明するもので、強制執行に必要となります。

相手が取り決めを守らなかった際にスムーズに強制執行ができるよう

  • 正本の送達
  • 証明書の取得

を忘れないようにしましょう。

(4)調停調書が届かなかったら?

調停調書を申請しても、その場ですぐに受け取れるわけではありません。郵送されるまで数日かかるのが通常です。1週間経っても手元に届かなければ裁判所に問い合わせをした方がよいでしょう。

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