離婚のために別居するメリット・デメリットと注意点を弁護士が解説

離婚のために別居するメリット・デメリットと注意点を弁護士が解説

離婚する前の準備として別居をする夫婦は多いです。

離婚は、良くも悪くも大きく人生を変えます。

ですから、本当に離婚をして自分、子ども、そしてパートナーの双方がそれ以降も大きなデメリットを被らずに進んでいけるかを、まずは別居で試したい、ということなのかもしれません。

ただ、離婚まえに別居をする上で、知っておきたいこともいくつかあります。

そこで今回は、

  • 離婚前に別居するメリット・デメリット
  • 離婚のために別居する際に注意すべきこと
  • 離婚のための別居で生活費を確保する方法

などについて、離婚問題に精通したベリーベスト法律事務所の弁護士が分かりやすく解説していきます。

その他にも、離婚を成立させるためにはどれくらいの別居期間が必要か、離婚前に別居したら親権はどうなるのか、専業主婦の方はどこへ別居すればよいのかなど、気になる点についてもご説明します。

この記事が、離婚の可能性を見て別居をお考えの方の手助けとなれば幸いです。

1、離婚前に別居するメリット・デメリット

まずは、離婚のための別居にどのようなメリットがあるのか、その反面でどのようなデメリットがあるのかを確認しておきましょう。

(1)メリット

離婚前の別居のメリットは、主に以下の4点です。

①パートナーとの関係性を冷静に考えることができる

第一のメリットは、やはり、冷静になれることです。

一緒に住んでいるとどうしてもこれまでの関係をリセットできず、相手との距離感を詰めすぎてしまいます。

自分にとって本当に必要な人なのか。

離れてみた自分がどう感じるのかを知って、後悔のない離婚に踏み切るために、一旦離れることを決意される方は多いでしょう。

②苦痛だった婚姻生活から解放される

ギクシャクした結婚生活だった場合は、別居によってそのストレスから解放されることができます。

性格の不一致があった場合はもちろん、DVやモラハラを受けていた場合は、もう被害を受けることがなくなるので、精神的安定を手に入れることができます。

③離婚する意思の固さがパートナーに伝わる

離婚をしたいのにパートナーが同意してくれないというケースにおいて、同居をしながら離婚を訴えても、パートナーが本気にしてくれないということもままあります。

同居したまま離婚の話し合いを進める場合には、生活状況が変化しないこともあり、相手が真剣に離婚について考えないことも多いものです。

しかし、現実にあなたが家から出て別居を始めれば、離婚する意思が固いことが相手に伝わります。

生活状況が一変しますので、相手も離婚について真剣に考え始めるでしょう。

別居した当初は相手が「すぐに戻ってくるだろう」と考えていたとしても、別居が続いていくにつれて、あなたが本気で離婚したがっていることが伝わるはずです。

本気度が伝わることで、離婚が現実味を帯びてくることでしょう。

④婚姻関係の破綻を認定されやすい

別居で本気を見せてもなおパートナーが離婚に同意してくれないケースでは、このメリットは大きいでしょう。

別居を長期間続けると、婚姻関係が破綻していることが認定されやすくなり、法律上も離婚が成立しやすくなるということです。

離婚するためには、パートナーに不貞行為や悪意の遺棄、DV・モラハラなどの「法定離婚事由」がない限り、相手の同意が必要です。

しかし、その他の原因でも婚姻関係が破綻した場合には「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(民法第770条1項5号)があるものとして、相手の同意がなくても離婚が認められるようになります。

ただし、そのためには長期間の別居継続が必要となるので、婚姻関係の破綻を証明できる期間まで粘る場合は、本項(2)でご説明するデメリットに長期間耐えなければならないことを覚悟する必要があります。

(2)デメリット

一方で、離婚前の別居にはデメリットもあります。

別居を開始する前に、以下の4点のデメリットを頭に入れておきましょう。

①生活費が二重にかかる

別居すると、当然ですが家賃や光熱費などの生活費が二重にかかります。

次項でご説明するように、別居中はパートナーから生活費がもらえますが、夫婦単位で見ると経済的に大きなデメリットとなることは間違いありません。

夫婦の収入にもよりますが、多くの場合は同居中よりも生活が苦しくなることを覚悟すべきでしょう。

②自身の状況が不安定

離婚前の別居中は、まだ離婚したわけでもない、独身でもない、かといってパートナーと円満に暮らしているわけでもありません。

離婚できるかどうかも、まだ不明という状態です。

なぜそんな暮らしをしているのか、これからどうするのかということを周囲の人から聞かれた場合にも、説明が難しくなりがちです。

こういった不安定な状況では、精神的なストレスを抱えてしまう可能性があります。

ご自身だけでなく、子供にも精神的に不安定な状況を強いることにもなりかねません。

③「証拠」を掴みづらくなる

パートナーの同意なしに離婚を成立させるためには、さまざまな証拠を確保しておく必要があります。

たとえば、相手が浮気をしているならその証拠を掴んでおかなければ、離婚原因の証明ができませんし、慰謝料請求も難しくなります。

また、財産分与を求めるには相手にどこにどのような資産があるかを証明できる資料が重要となります。

これらの証拠は、通常は相手が握っているか、家庭内に存在するものです。そのため、別居をするとどうしても証拠を掴みづらくなってしまいます。

④夫婦関係を修復しにくくなるケースも

あなたの離婚意思が固く、気が変わらないのであれば問題ありませんが、別居すると夫婦関係の修復が難しくなるケースもあるということも知っておいた方がよいでしょう。

別居のメリットとして「冷静になれる」を挙げましたが、自分自身は冷静になれたもののパートナーには逆効果が、というケースも当然あります。

別居を開始すればパートナーも離婚について真剣に考え始める可能性が高くなるからです。

「愛される」ことを比較的重視しているにパートナーの場合は、自分の気持ちよりも「もう愛されていないのでは」と信頼できなくなり、相手の方から離婚を切り出されるケースもあります。

また、別居を続けると、「他人」として別々の生活が日々築かれていきます。

そのため、気が変わって別居を解消したとしても生活が噛み合わなくなり、元の夫婦生活には戻れなくなる可能性があります。

冷却期間を置くために別居が有効なこともありますが、一般的に離れて暮らすことは夫婦関係の破綻につながっていくという意識は持っておくようにしましょう。

2、離婚前の別居ではパートナーから生活費がもらえる

離婚前の別居では、現実的な問題として生活費を確保することも重要です。

ここでは、別居中の生活費をパートナーからもらう方法を解説し、併せて他にも生活費を工面する方法をご紹介します。

(1)婚姻費用とは

まず、離婚前の別居中はパートナーから生活費をもらうことができます。

夫婦はお互いに助け合って生活しなければならないとされていますので(民法第752条)、婚姻生活にかかる生活費はそれぞれの収入に応じて分担して負担する義務があります。

婚姻生活にかかる生活費のことを「婚姻費用」といいます。

別居していても、離婚するまでは法律上の夫婦ですので、基本的には収入が少ない方から多い方に対して、婚姻費用の分担を請求することができます。

この請求のことを「婚姻費用分担請求」といいます。

婚姻費用の金額は、夫婦の話し合いで合意ができれば、自由に決めることができます。

合意できない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決めることになります。

原則として請求する前の過去の分はもらえませんので、別居を始めたら早めに婚姻費用の分担を請求するようにしましょう。

(2)その他別居中の生活費を工面する方法

パートナーに生活費の「分担」を求めることはできますが、全面的に保障してもらえるわけではありません。

したがって、婚姻費用分担請求だけでなく、他の方法でも生活費を工面する必要があるでしょう。

工面する方法としては、以下のものがあります。できる限り、別居を開始する前から検討しておきましょう。

①別居前に貯金をする

最も確実な対処法は、同居中から貯金をしておくことです。

厳密にいうと、婚姻中の貯金は「夫婦共有財産」として財産分与の対象となりますが、別居後の生活費も夫婦で分担すべきものですので、貯金を当座の生活費に充てることに問題はありません。

②安定した仕事を確保する

別居が何年も続く場合は、貯金だけで乗り切ることは難しいでしょう。

そのため、同居中は専業主婦だった方も、できることなら別居後は仕事について収入を得た方がよいといえます。

スムーズに別居するためには、同居中に仕事を確保しておいた方がよいでしょう。

③ひとり親支援制度を利用する

各自治体において、母子手当・医療費助成・家賃補助など、さまざまな種類のひとり親支援制度が実施されています。

ひとり親支援制度は、すでに離婚したシングルマザーやシングルファーザーを対象とした制度ですが、なかには離婚に向けた別居中でも利用可能な制度もあります。

詳細は自治体によって異なりますので、お住まいの地域の役所で相談してみましょう。

また、国の支援制度である「児童扶養手当」も、一定の要件を満たす場合には別居中でも受給可能です。

児童扶養手当の申請先も、お住まいの地域の役所となります。役所にご相談の上、利用可能な制度があれば積極的に利用しましょう。

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