離婚のために別居するメリット・デメリットと注意点を弁護士が解説

離婚のために別居するメリット・デメリットと注意点を弁護士が解説

3、離婚成立に必要な別居期間

それでは、別居を何年続ければ離婚が認められるようになるのでしょうか。

ケースによって異なりますので、ケース別に解説していきます。

(1)性格の不一致で離婚するには5年以上

まず、性格の不一致などで、どちらが悪いともいえないケースで別居を理由に離婚を認めてもらうためには、一般的には5年以上の別居が必要といわれています。

もっとも、別居中の離婚協議の状況などによっても期間は異なってきます。

目安としては、5年~10年程度と考えておくとよいでしょう。

(2)有責配偶者からの離婚請求が認められるための「長期」とは

一方で、あなたが不倫や浮気などの離婚原因を作って別居に至った場合、あなたからの離婚請求を認めてもらうためには、最低でも7~8年以上の別居が必要といわれています。

離婚原因を自ら作っておきながら離婚を求めるのは不合理だと考えられているため、より長期間の別居継続が必要となるのです。

もっとも、婚姻期間や子どもが独立しているかどうか、パートナーが夫婦関係の修復を望んでいるかどうかによっても期間は異なってきます。

目安としては、10年~20年程度とお考えください。

(3)単身赴任による別居は別居期間に入るか

単身赴任がきっかけで別居を始めたものの、実質的に夫婦関係が冷めている場合はどのように考えるべきでしょうか。

まず、原則として単身赴任による別居は離婚のための別居期間としてカウントされません。

なぜなら、単身赴任は仕事上の必要性があってやむを得ず別居するものであり、通常は夫婦関係が破綻しているとはいえないからです。

しかし、すでに夫婦関係が冷めている場合には、別居のきっかけが単身赴任であったとしても、離婚のための別居期間としてカウントできます。

ただし、夫婦関係が冷めたことを立証できる時点からカウントすることになります。

したがって、性格の不一致で離婚を求める場合には、そのときから5年~10年の別居が必要となります。

パートナーが単身赴任中に不倫や浮気をした場合は、5年よりも短い期間で離婚が認められる可能性が高くなります。

逆に、あなたの方が不倫や浮気をした場合には、10年~20年以上の別居継続が必要となるでしょう。

なお、離婚に必要な別居期間については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。ぜひ、併せてご覧ください。

4、離婚のために別居する際の注意点

離婚のために別居する際には、さまざまなことに注意する必要があります。

別居をお考えの方は、以下のポイントを確認しておきましょう。

(1)原則としてパートナーの同意を得ること

まず、あなたが家から出て別居を始める場合は、その前に原則としてパートナーの同意を得ておくべきです。

なぜなら、夫婦には同居義務があるからです(民法第752条)。また、パートナーを置き去りにして家から出て行ったことが「悪意の遺棄」(同法第770条1項2号)に該当する可能性もあります。

つまり、勝手に出て行くことはあなたを有責配偶者にしてしまい、あなたからの離婚請求が認められにくくなるだけでなく、相手から慰謝料を請求される可能性があります。

ただし、勝手に別居を開始した場合も一定期間が経過すれば夫婦関係の破綻が認定されるので、いずれ離婚は認められます。

有責配偶者が勝手に出て行った場合であっても、長期間の別居継続が必要となりますが、離婚を実現させることは可能です。

なお、パートナーからDVやモラハラを受けていて身の危険がある場合は、同意を得る必要はありません。

また、パートナーに不倫や浮気などの離婚原因があり、一緒に生活することに精神的に耐えられないような場合も、同意を得なくても違法にはなりません。

(2)財産分与でもらえる財産が少なくなる可能性がある

離婚するときには、財産分与として、夫婦共有財産の2分の1を受け取れるのが原則です。

ただ、離婚前に別居していた場合は、基本的に別居開始時までの財産のみが財産分与の対象となります。

なぜなら、別居後は夫婦で共同して財産を築いたとは認められないのが通常だからです。

したがって、別居後にパートナーの資産が増えたとしても、その分については財産分与を求めることができません。

(3)別居中の不貞行為には要注意

自分は離婚をするつもりでも相手が離婚に同意をしていない場合、別居中に恋愛をすると「不貞行為」としての責任を追及される可能性があります。

不貞行為とは、自由な意思で配偶者以外の異性と性的関係を持つことを指します。

夫婦関係が破綻した後は、どのような恋愛をしても「不貞行為」をしたものとして有責配偶者になったり、慰謝料の支払い義務が発生することはありません。

しかし、相手が離婚に同意していない場合、別居期間によっては、夫婦関係が破綻していないと判断されることがあるでしょう。

したがって、この期間中に恋愛をすると、不貞行為に該当して離婚で不利になる可能性があるのです。

別居中の恋愛が一切禁止されるわけではありませんが、離婚を有利に進めたいのであれば、慎重に行った方がよいでしょう。

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