離婚後の養育費の相場はどのくらい?適正な養育費を獲得するための全知識

離婚後の養育費の相場はどのくらい?適正な養育費を獲得するための全知識

3、養育費の正しい相場(適正金額)は裁判所が公表している

実は、世間一般で支払われている養育費の金額は、必ずしも適正なものとはいえません。

そこで、ここでは養育費の適正金額としての正しい相場をご紹介します。

(1)養育費算定表とは

養育費の適正金額を調べるには、裁判所が公表している「養育費算定表」を見るのが便利です。

養育費算定表とは、両親の収入や子どもの人数・年齢別に相当と考えられる養育費の金額をまとめた早見表のことです。

本来は養育費の金額を算定するには複雑な計算が必要となりますが、個別のケースごとに実際に計算するのは困難です。また、通常の世帯では、両親の収入や子どもの人数・年齢に応じて、概ね同程度の養育費が必要となります。

そこで、裁判官の研究によって簡単に養育費の目安が分かるようにまとめられたものが、「養育費算定表」です。

養育費算定表は、最初に2003年に公表されましたが、その後の物価上昇や社会情勢の変化によって、算定表の金額も増額すべきであると考えられていました。

そこで、2019年12月に、養育費の目安を増額した改訂版が公表されました。

養育費算定表の改訂版は、こちらの裁判所のページから確認していただけます。

参考:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について

(2)養育費算定表の見方

養育費算定表は、子どもの人数・年齢ごとにそれぞれ別の表が用意されています。ですので、まずは上記の裁判所のページから、ご自身のお子様の人数・年齢に応じた算定表を開きましょう。

なお、上記のページには「養育費」の他に「婚姻費用」の算定表も掲載されていますが、必ず「養育費」の算定表を開いてください。

算定表には、義務者(養育費を支払う側)の年収と権利者(養育費をもらう側)の年収に応じて、養育費の金額が掲載されています。

あなたが権利者である場合は、まず(元)パートナーの年収を確認し、算定表の縦軸に記載されている年収額の中から該当する欄を見つけます。

そこから、右に線を引いていきましょう。

次は、横軸に記載されている年収額の中から、あなたの年収に該当する欄を見つけます。

そこから、上に線を引いていきましょう。

以上の2本の線が交わる欄に記載されている金額が、あなたがもらうことのできる養育費の金額(適正金額)になります。

(3)養育費の計算方法

養育費算定表を使えば簡単に養育費の相場を確認できますが、算定表の金額はあくまでも目安であり、絶対的なものではありません。

そこで、養育費の本来の計算方法も解説しておきます。

①両親の基礎収入を計算する

ここでいう基礎収入とは実際の年収ではなく、そこから税金や仕事のために必要な費用や住居費などの特別経費を差し引いた金額のことで、次の計算式によって求めます。

総収入×〇%=基礎収入

総収入に掛ける割合は、職業や年収に応じて定められています。

例えば、年収500万円の給与所得者の場合は42%です。

したがって、この場合は「500万円×42%」により、210万円が基礎収入となります。

②子どもの生活費指数を確認する

生活費指数とは、親の生活費として必要な金額を「100」とした場合に、子どもの生活費がどのくらいの割合になるのかを示す数値のことです。

その数値は、以下のとおりに定められています。

親:100

子ども(0歳~14歳):62

子ども(15歳以上):85

③子どもの生活費を計算する

次に、①、②で求めた数値を使って子どもの生活費を計算します。計算式は以下のとおりです。

義務者の基礎収入×(子どもの生活費指数÷(義務者の生活費指数+子どもの生活費指数))=子どもの生活費

上記の例で子どもが0歳~14歳だとすれば、

210万円×62/(100+62)=80万3,704円

となります。

④養育費の金額を計算する

上記の生活費がそのまま養育費となるのではなく、さらに次の計算式に当てはめていきます。

子どもの生活費×{義務者の基礎収入÷(権利者の基礎収入+義務者の基礎収入)}=1年間の養育費

上記の例で権利者が専業主婦のため収入ゼロだとすれば、

80万3,704円×{500万円/(500万円+0円)}=80万3,704円

これは1年間の養育費の金額なので、12で割ると6万6,923円が1か月当たりの養育費の金額となります。

ちなみに、養育費算定表ではこのケースの金額は「6万円~8万円」とされています。

このように、養育費の計算は複雑ですので、本格的に計算する必要がある場合は弁護士に相談することをおすすめします。

こちらの記事でも養育費の計算方法について詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

4、養育費の正しい相場~ケース別に紹介

養育費算定表を使うのは難しくありませんが、慣れないうちは大変かもしれません。

そこで、ここでは算定表を使った養育費の正しい相場について、ケース別にご紹介します。

手っ取り早く相場を確認したい方は、参考になさってください。

(1)子どもの人数でチェック

子どもの人数が多ければ多いほど、当然ですが養育費も高額となります。

子どもが1人~3人のケースで、養育費の金額は以下の表のように異なります。

なお、子どもは全員0歳~14歳とし、義務者の年収500万円、権利者の年収0円と仮定しています。

子どもの人数            

 養育費の金額            

1人

6~8万円

2人

8~10万円

3人

10~12万円

(2)子どもの年齢でチェック

子どもの年齢が高くなればなるほど養育費は高額となりますが、養育費算定表では「0歳~14歳」と「15歳以上」の2段階に分けられています。

義務者の年収500万円、権利者の年収0円の場合、子どもの年齢に応じて養育費の金額は以下の表のようになります。

子どもの人数・年齢

養育費の金額

1人(0歳~14歳)

         6~8万円        

1人(15歳以上)

        8~10万円       

2人(第1子・第2子とも0歳~14歳)

        8~10万円       

2人(第1子15歳以上、第2子0歳~14歳)

       10~12万円      

2人(第1子・第2子とも15歳以上)

       10~12万円      

(3)両親の年収でチェック

子どもの人数・年齢が同じでも、両親の年収に応じて養育費の金額は異なります。

次の表では、義務者の年収ごとの養育費の金額について、権利者が年収0円の場合と年収200万円の場合とで比較してみました。

子どもは1人(0歳~14歳)いるとします。

義務者の年収

養育費の金額

権利者の年収0円

権利者の年収200万円

200万円

2~4万円

1~2万円

300万円

4~6万円

2~4万円

400万円

4~6万円

4~6万円

500万円

6~8万円

4~6万円

600万円

6~8万円

6~8万円

1,000万円

12~14万円

10~12万円

(4)権利者が母親か父親かでチェック

養育費は父親から母親へ支払われるケースが圧倒的に多いですが、なかには逆のケースもあります。

次の表では、養育費をもらうのが母親か父親かでもらえる金額を比較してみました。

子どもは1人(0歳~14歳)いるとします。

両親の年収

養育費の金額

母親がもらう場合

父親がもらう場合

父親200万円、母親200万円

1~2万円

1~2万円

父親500万円、母親200万円

4~6万円

1~2万円 

父親700万円、母親200万円

6~8万円

1~2万円

父親1,000万円、母親200万円

10~12万円

1~2万円

このように、養育費をもらうのが父親か母親かによって金額が大きく異なることがあります。

ただし、これはあくまでも義務者の年収と権利者の年収によって生じる差であり、性別によって差がつくわけではありません。

(5)両親が離婚した場合と未婚で認知したケースで養育費は異なる?

養育費算定表では、両親が離婚した場合と未婚で認知したケースとで養育費は異なりません。

まったく同じ金額となります。

(6)東京の場合と地方の場合で養育費は異なる?

東京等の大都市圏と地方では必要な生活費が異なりますが、養育費算定表では特に考慮されていません。

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