離婚後の養育費の相場はどのくらい?適正な養育費を獲得するための全知識

離婚後の養育費の相場はどのくらい?適正な養育費を獲得するための全知識

5、養育費を確実に獲得するための請求方法

養育費の相場(適正金額)が分かったとしても、実際に獲得できなければ意味がありません。

そこで次に、適正な金額の養育費を請求する方法を解説します。

養育費を取り決める際には、裁判所の養育費算定表が重視されますが、算定表の金額はあくまでも目安であり、法的な拘束力はありません(ただし、調停、審判及び裁判では、ほとんどのケースで養育費算定表の範囲内で定められます。)。

そのため、まずは養育費算定表に記載された金額に縛られることなく、子どもを育てるために必要かつ適正と考える金額を話し合って決めることが重要です。

子どもを育てていくと、想定外のお金が必要になることが少なくありません。

子育てに支障をきたさないため、妥協せずにきっちり交渉して、少しでも多くの養育費の獲得を目指しましょう。

(1)できるだけ多くの養育費を獲得するコツは?

では、できるだけ多くの養育費を勝ち取るにはどうしたらよいでしょうか?

①きちんと相手の収入を把握しておく

養育費算定表の計算によると、相手の収入が多ければ多いほど、もらえる養育費は多くなります。そのため、相手が過少申告してきても適正な養育費を獲得できるよう、きちんと相手の収入を把握できるようにしておくべきでしょう。

同居している時点から、相手の給与明細等を確認しておくことなどが重要となってきます。

②これからの子どもの学習計画をある程度明確にしておき、主張する

まだお子さんが幼稚園や保育園に通っていたり、小学校の低学年である場合などは、今後どのような教育を受けさせるかなどは決まっていないでしょう。

しかし、中学受験や高校受験で学習塾に通わせたり、私立学校に通わせる場合にはどうしてもお金がかかります。まだ子どもが幼いとしても、将来のことを考えずに養育費を決めてしまうと、後で多額の教育費が必要になった場合などは支払いが困難となります。

また、子どもが様々な選択肢から自分の将来を決定できるようにするために、教育費に充てられる金額は余裕を持って決めておくべきでしょう。

余裕ある教育費を含んだ養育費をもらえるようにするには、現時点で分かっている範囲での学習計画を立てておき、その計画に基づいて交渉するべきです。

計画の内容については、例えば

  • 小学校5年生から学習塾に通わせる
  • 高校は県内有数の私立学校に通わせる
  • 中学2年生から家庭教師を雇う

などです。

学習塾の受講料や私立学校の授業料については、それぞれ月額2万円、月額5万円などと、交渉前にあらかじめおおよその相場を確認しておき、計画に盛り込んでおくとよいでしょう。

そして計画書はあらかじめ紙に書いておくようにしましょう。

③面会交流に適度に応じる

非親権者となった相手方には、子どもと継続的に会って親子の交流を図る「面会交流」を行う権利があります。

この面会交流に応じなくても養育費を請求することはできますが、適正な金額の養育費を獲得するためには、面会交流に適度に応じるのが得策です。なぜなら、定期的に面会交流を行ってもらうことで、相手方の子どもに対する愛情も維持されますし、養育費を支払うモチベーションや責任感が強まることも期待できるからです。

(2)話し合いがまとまったら公正証書を作成しておく

以上の点に注意しつつ相手方と交渉し、話し合いがまとまったら、口約束だけで済ませずに離婚協議書や合意書を作成しましょう。

これらの書面を作成する際は、公正証書にしておくことが大切です。なぜなら、もし相手方が約束どおりに養育費を支払わない場合、強制執行認諾文言付きの公正証書があれば裁判をしなくてもすぐに強制執行を申し立て、相手方の給料や預金口座などの財産を差し押さえることができるからです。

(3)話し合いがまとまらなければ調停・審判をする

話し合いがまとまらなければ、いつまでも養育費を受け取れないことになります。

どうしても話し合いがまとまらない場合や、相手方が話し合いに応じないときは、家庭裁判所へ「養育費請求調停」を申し立てましょう。調停では、家庭裁判所の調停委員のアドバイスや説得を交えて話し合いが進められるため、当事者だけで話し合うよりも合意に至りやすくなります。

調停でも話し合いがまとまらない場合は「調停不成立」となり、自動的に審判の手続きに移行します。

審判では、それまでに提出された資料などを基にして、審判官(裁判官)が養育費の支払い方法や金額を決定します。

なお、いきなり審判を申し立てることも可能ですが、ほとんどの場合は家庭裁判所の判断で、まずは調停に付されることになります。

(4)途中で相手が養育費を支払わなくなった場合は?

もし、途中で相手が養育費を支払わなくなったとき、公正証書がある場合や、調停・審判・裁判をした場合には、強制執行を申し立てることによって養育費を回収できます。

調停・審判・裁判をした場合なら、家庭裁判所から履行勧告や履行命令を出してもらうこともできます。

当事者間の離婚協議書や合意書(公正証書にしていないもの)しかない場合には、調停や審判、裁判を起こした上で以上の手段を取ることになります。

なお、最近では民間の業者による「養育費保証サービス」も広まってきています。

保証料について自治体の補助を受けられるところもありますので、養育費保証サービスの利用を検討してみるのもよいでしょう。

6、相場どおりの養育費では足りなくなったときは増額できる?

養育費の金額をいったん取り決めたら、容易に変更できるものではありません。とはいえ、子どもが成長してくると、思っていたよりもお金がかかり、増額が必要になることもあるでしょう。

では、いったん相場どおりに養育費を取り決めた場合に、将来、必要に応じて増額できるのでしょうか。

(1)事情が変われば金額の変更も可能

まず、当事者間の話し合いで合意ができれば、自由に養育費の金額を変更することができます。

しかし、実際には増額を求めても相手方が応じてくれないことが多いものです。

そのようなときでも、事情が変わった場合には、家庭裁判所の調停や審判の手続きを利用することで、養育費の金額を変更することができます。

過去に養育費を取り決めたときには、その時点における事情しか考慮していなかったはずです。

将来の事情を考慮して取り決めたとしても、それはあくまでも、その時点で予想していた「将来」に過ぎません。子どもは親の予想どおりに成長するとは限りませんし、両親の経済状況も一定ではありません。

そのため、事情が変わった場合には改めて現在の事情を考慮して、子どもの養育のために適切で、かつ、現実的と考えられる養育費の金額を決めなおすことが認められているのです。

(2)増額される要素

養育費の金額を変更する際には、さまざまな「事情」が総合的に考慮されます。そのため、増額される条件を一概にいうことはできません。

ですが、増額が認められやすい要素として、以下のような事情を挙げることができます。

  • 子どもの進学によって教育費が増大した
  • 子どもの病気や怪我のために想定外の医療費が必要となった
  • 親権者が病気や失業などによって収入が減った
  • 物価の上昇や増税など社会情勢の変化によって生活が苦しくなった

ただし、社会情勢の変化については、相手方の生活も同じように苦しくなっている場合には、増額は認められにくくなります。

職種や雇用形態などの違いによって、ご自身の生活のみが苦しくなり、相手方の生活には影響がないというような場合には、増額が認められやすいでしょう。

(3)養育費の増額を請求する方法

養育費の増額を請求する方法は、前記「5」でご説明した養育費の請求方法とほとんど同じです。相手方に直接連絡できる場合は、連絡をして事情を話し、増額を求めてみるとよいでしょう。

直接話し合いにくい場合や、相手方が話し合いに応じようとしない場合には、内容証明郵便で増額請求書を送付するのがおすすめです。

内容証明郵便の形を取ることで心理的な圧力をかけることができるので、話し合いが進む可能性があります。

話し合いがまとまったら、新たに合意書を作成し、公正証書にしておきましょう。

話し合いができない場合や、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「養育費増額請求調停」を申し立てます。

調停でも話し合いがまとまらない場合は、自動的に審判の手続に移行し、家庭裁判所が養育費の金額を新たに決めてくれます。

養育費増額の請求方法についてさらに詳しくは、こちらの記事をご参照ください。

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