3、モラハラを理由に離婚することはできる?
それでは、モラハラを理由として、離婚することはできるのでしょうか?
離婚できる場合とできない場合に分けて、解説します。
(1)離婚できる場合
まず、相手の同意があれば、モラハラで離婚することができます。
離婚はお互いの同意さえあれば、自由にできるからです。
話し合いでお互いが同意すれば、協議離婚が成立します。
同意が無い場合には、「法律上の離婚原因」があれば最終的には離婚できます。
モラハラの場合「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかが問題となります(民法770条1項5号)。
モラハラの程度が酷く、きちんとこれを証明できる証拠が揃っていたら、モラハラを理由として、裁判で離婚を認めてもらうことができるでしょう。
また、相手が同意していなくて、法律上の離婚原因がない場合や微妙な場合でも、調停をすると、調停委員が相手を説得してくれることがあります。
それにより、相手の気が変わり離婚に同意してくれれば、調停でも離婚することができます。
(2)離婚できない場合
離婚できない場合は、相手が離婚に同意しておらず、モラハラの程度が低い場合やモラハラの証拠がない場合です。
相手が離婚に同意していない以上、協議離婚や調停離婚はできませんし、裁判では証拠があることしか認められないので、モラハラの証拠がなかったら、裁判官は離婚を認めてくれないからです。
実際には、モラハラをする人は、離婚を拒絶することが多いです。
そこで、モラハラを理由に離婚したいなら、きっちりモラハラの証拠を集めておくことが非常に重要となります。
(3)できる限り協議離婚をするのが得策
モラハラ夫(妻)と裁判で離婚する方法や、そのための証拠を集める方法についてはこの後ご説明しますが、できる限り話し合いによって協議離婚をするのが得策といえます。
なぜなら、モラハラの事実があったとしても法定離婚原因に該当するとまではいいがたいケースも多いからです。
また、目に見えないモラハラの証拠を集めるのは難しく、証拠があったとしても証明力が弱いことが多いからでもあります。
慰謝料についても、裁判でルールに従って決めてもらうよりも、話し合いで決める方が高額になる可能性があります。
何よりも、既に精神的に傷つけられているあなたにとっては、裁判で時間と労力を消費するよりも、話し合いで早期に解決できるに越したことはありません。
話し合いがまとまらない場合は躊躇なく裁判すべきですが、丁寧に話し合うことによって協議離婚を成立させる方が望ましいということも知っておきましょう。
4、モラハラ夫(妻)と離婚するために準備すべきこと
モラハラ夫(妻)は、離婚に反対することが多いものです。
離婚を切り出すと、モラハラがエスカレートする可能性も高いです。
そのため、離婚を切り出す前に準備をしっかりとしておくことが大切です。
モラハラ夫(妻)と確実に離婚するためには、以下の3つの準備を欠かすことはできません。
(1)証拠を集める
モラハラ夫(妻)が離婚に同意しない場合には、裁判に備えて証拠を集めておく必要があります。
離婚訴訟だけではなく、離婚調停においても証拠は重要です。
モラハラ夫(妻)は外面が良いことが多いので、家庭裁判所の調停委員もモラハラ夫(妻)の言うことを信用してしまい、やり直すように説得してくることがあるからです。
訴訟では、証拠のない言い分は一切通りません。
モラハラの証拠になるものとしては、以下のようなものが中心になります。
- 日記
- 相手の発言を録音したデータ
- 第三者の証言
- 診断書
モラハラは目に見えないものであるだけに、一発で裁判に勝てるような決定的な証拠をつかめることは、あまりありません。
日常生活の中で相手がどのような言動をして、それによってご自身がどのような被害を受けたのかを丹念に記録していくことが重要です。
そのために、日記を継続的に書いていくことが基本になります。
相手の発言をボイスレコーダーやスマホを使って録音するのも有効ですが、一つや二つの発言を録音したところで、あまり意味のないことが多いです。
やはり、継続的に数多くの発言を録音していくことが大切です。
録音した日時も記録しておきましょう。
それから、モラハラで悩んでいることを第三者に相談していた場合は、その人の証言も一つの証拠として使用できます。
また、モラハラによって心身に不調をきたし、心療内科や精神科などに通院した場合は、診断書を発行してもらいましょう。
診断書もモラハラの被害を受けたことの証拠になります。
(2)別居する
モラハラ夫(妻)との離婚を決意したなら、別居した方がよいでしょう。
同居したままでは支配・服従の関係が続いてしまい、その状態で離婚を切り出しても建設的な話し合いができる可能性は低いです。
また、離婚を切り出した途端、モラハラがエスカレートして身に危険が及ぶおそれもあります。
ご自身の精神状態を健全に回復させるためにも、お早めに別居する方が望ましいといえます。
別居することで、本気で離婚を考えていることを相手に示すことにもなります。
(3)第三者に相談する
長期間にわたってモラハラの被害にあっていると、正常な思考力が損なわれている可能性もあります。
その状態では、正しい対処法を考えることも難しいですし、そもそも離婚するかどうかを正しく判断できないかもしれません。
そこで、第三者に相談して、冷静な意見をもらうとともに、励ましてもらうとよいでしょう。
ただし、モラハラ夫(妻)には外面が良いという特徴がありますので、相談する相手によっては実情を理解してもらえず、「考え直しなさい」と言われてしまうことがあります。
これではご自身がかえって傷ついてしまいますので、本当にあなたのことを考えてくれる人や、弁護士・医師などの専門家に相談するのがおすすめです。
配信: LEGAL MALL