2022年6月から開始された「顕著な大雨に関する情報」。線状降水帯とは?

2022年6月から開始された「顕著な大雨に関する情報」。線状降水帯とは?

大雨による災害をもたらすことのある、線状降水帯とは

数時間にわたって同じ場所で大雨を降らせて、豪雨災害を引き起こす要因にもなる線状降水帯。予報用語では、「次々と発生した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50〜300km程度、幅20〜50km程度の強い降水をともなう雨域」と定義されています。

線状降水帯には風上側で次々と積乱雲が発生して連なってしまうことでできるタイプと、局地的な前線や地形などの影響で前線上に次々と積乱雲が発生してできるタイプの2つのパターンがあります。
積乱雲が一つだけなら雲が風に流されて通り雨で終わることもありますが、積乱雲が連なってしまうことで、長さ50〜300km程度、幅20〜50km程度の地域で数時間にわたって非常に強い雨が降り続く、線状にのびた雨雲のまとまりになります。
線状降水帯が発生している地域では、100mmから数百mmの雨量の雨が降ります。
線状降水帯が発生している状況は、気象庁の危険度分布(キキクル)では、赤い楕円で表示されます。

線状降水帯による大雨は、過去にも大きな災害を

ここ数年で「線状降水帯」という言葉を聞く機会も増えてきました。ニュースなどで災害の発生とともに「線状降水帯」という言葉を耳にしたことで、「線状降水帯が発生したら大変なことになるかもしれない」と感じるようになった方も多いかも知れません。

過去の災害をたどってみると、例えば、2020年7月、熊本県の球磨川流域で河川の氾濫や土砂崩れなどが発生し、全国で死者84名、行方不明者2人、住宅の全半壊9,628棟、住宅浸水6,971棟に被害を出した、「令和2年7月豪雨」。球磨川流域で線状降水帯が形成され、およそ8時間にわたって、1時間あたり30ミリを超える激しい雨が降り続きました。球磨川流域が氾濫し、球磨村の特別養護老人ホームへの浸水により、14名の高齢者が犠牲になるなど、亡くなった方の86%が65歳以上の高齢者で、死因の半数以上が洪水による溺死でした。

2018年7月に発生した「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」では、東海地方から西日本で15個の線状降水帯が形成され、そのうちの9個は3時間の積算降水量が最大で150ミリを超えました。さらに、台風も発生し、前線や台風の影響により、西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨となりました。
特に、広島県、岡山県、愛媛県では、河川の氾濫や浸水害、土砂災害などが相次ぎ、死者237名、行方不明者8名、重軽傷者432名と、多数犠牲者を出しました。住家被害についても、街全体が浸水した岡山県倉敷市真備町を中心に、全壊が6,767棟、半壊・一部損壊が15,234棟、浸水が28,469棟と多くの被害が出ています。

他にも、2017年7月に発生し福岡県と大分県を中心に九州北部で多数の被害を出した「平成29年7月九州北部豪雨」や、2015年9月に発生し宮城県などの東北と栃木県や茨城県などの関東北部を中心に24時間雨量が300ミリを超えて大規模な被害をもたらした「平成27年9月関東・東北豪雨」なども線状降水帯による大雨が甚大な被害をもたらした大雨災害です。

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