離婚時の財産分与に「贈与税」はかかる?かかる場合・かからない場合とその他の税金

離婚時の財産分与に「贈与税」はかかる?かかる場合・かからない場合とその他の税金

財産分与で贈与税以外にかかる税金

先ほど解説したように、財産分与には原則として贈与税はかかりません。
しかし、次の税金はかかる可能性がありますので注意してください。

登録免許税

登録免許税とは、建物や土地の名義変更登記をするに際して、法務局で支払う税金です。
家や土地を財産分与の対象にする場合には、登録免許税の課税対象となります。

財産分与に伴って不動産の名義を変える場合の登録免許税の額は、その土地や建物の固定資産税評価額の1,000分の20です。
たとえば、固定資産税評価額が3,000万円の不動産を財産分与で受け取った場合の登録免許税額は、60万円にものぼります。

価値の高い不動産の財産分与を受けた場合には、無視することができないほどの額の登録免許税が課される可能性がありますので注意しましょう。

なお、登録免許税の計算ベースとなる不動産の固定資産税評価額は、「固定資産税課税明細書」などで確認することができます。
固定資産税課税明細書は、毎年4月から6月頃に、その年1月1日時点における不動産の所有者宛に市区町村役場から送付される、固定資産税の納付書に同封されています。
また、固定資産税評価証明書などを不動産が所在する市区町村役場から取り寄せることで確認することも可能です。

固定資産税と都市計画税

毎年1月1日現在における不動産の所有者に対しては、固定資産税と都市計画税が課税されます。
市区町村役場から自動的に納付書などが送られてきますので、名義変更の登記をしたのであれば、自分で計算したり申告したりする必要はありません。

これらの税金に不動産の取得原因は関係がありませんので、たとえ財産分与で不動産を受け取った場合であっても、原則どおり課税の対象です。

固定資産税の金額は、「その不動産の課税標準額×税率」で計算されます。
税率は市区町村によって異なりますが、1.4%前後であることが多いでしょう。
ただし、さまざまな軽減制度があります。

また、都市計画税の計算方法も「その不動産の課税標準額×税率」とされており、税率は0.3%程度です。

その不動産にかかる固定資産税額や都市計画税の金額を具体的に知りたい場合には、不動産所在地である市区町村役場へ問い合わせる他、前年分の固定資産税納税通知書などを確認するとよいでしょう。

年によって多少の前後はあるものの、よほど大規模な区画整理などがあったなどでない限り、1年で大幅に金額が変わることはありません。

譲渡所得税

財産分与で土地や建物を「渡した側」の人に対しては、譲渡所得税が課される場合があります。
譲渡所得税とは、不動産などの資産を譲渡した際に、その譲渡における「儲け」に対して課される税金です。

財産分与では、不動産を売却した場合などとは異なり対価を得ているわけではありませんので、譲渡所得税は無関係であると考えるかもしれません。
しかし、結論をお伝えすると、財産分与も譲渡所得税の課税対象となります。
なぜなら、不動産の所有権を財産分与した場合、その分に相当する金銭の分与を免れていると考えられるためです。

そのため、財産分与で不動産を渡した場合には、その不動産を時価で譲渡したものとみなして、譲渡所得税の課税対象となります。

譲渡所得税の対象となる「譲渡所得額」は、原則として次のように算定します。

譲渡所得額=譲渡対価(財産分与をした不動産の時価)-その土地建物の取得費(購入時の対価など)-譲渡費用(譲渡時に発生した測量費など)

これに、その不動産の取得から手放すまでの期間の長短に応じて、次の税率が課されます。

・所有期間が5年超の場合:15%(+住民税5%+復興特別所得税)
・所有期間が5年以下の場合:30%(+住民税9%+復興特別所得税)

なお、不動産の時価が取得費を下回っていれば、譲渡所得税は課されません。

財産分与にかかる税金の節税方法

財産分与にかかる税金を節税する方法は、それぞれ次のとおりです。

財産分与を受ける側の節税

先ほど解説したように、財産分与を受ける側にかかる税金は、原則として「登録免許税」と「固定資産税・都市計画税」のみです。
これらは画一的に計算されますので、節税には馴染みません。

また、財産分与を受けても、原則として贈与税は課税対象外です。
そのため、贈与税が課税される例外的な事項に当てはまってしまうことのないよう、通常の財産分与を大きく超える不相応な額の財産分与を受けないことが、最大の節税策であるといえるでしょう。

財産分与を行う側

財産分与を行う側には、「譲渡所得税」が課される可能性があります。

この譲渡所得税にはさまざまな軽減措置が設けられており、中でも財産分与で自宅を手放した場合には、「マイホームを売ったときの特例」が適用できる可能性が高いでしょう。

これは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です。
つまり、この特例の適用を受けることで、先ほど解説した譲渡所得の計算式が、次のようになるということです。

譲渡所得額=譲渡対価(財産分与をした不動産の時価)-その土地建物の取得費(購入時の対価など)-譲渡費用(譲渡時に発生した測量費など)-最高3,000万円

控除額が大きいため、この特例の適用を受けることで結果的に譲渡所得はゼロとなり、譲渡所得税はかからないケースが多いでしょう。

ただし、この特例を受けるための要件の一つに「売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと」が挙げられています。
そのため、財産分与での不動産移転でこの特例を使いたい場合には、正式に離婚が成立してから不動産の移転を行うべきでしょう。

また、この特例を受けるためには、確定申告を行う必要があります。
期限内の申告を忘れてしまうことのないように注意してください。

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