防災訓練で何を学ばせる?

防災訓練で何を学ばせる?

イレギュラーを許さない総合防災訓練

市町村や都道府県の総合防災訓練に参加したり、見学したりしたことはありますか?
このレベルの総合防災訓練は、参加する組織の訓練成果を披露する場と言ってよいでしょう。閉じ込められた人の救助やヘリコプターでの搬送、放水、避難誘導など、想定されている課題を見事に解決していきます。すべてがうまくいくのは詳細なシナリオと日ごろの訓練のおかげです。
 学校でのルーティーンの火災避難訓練と総合防災訓練には、規模での違いがあっても質的には単発で継続がない、繰り返しがないという共通点があると指摘しました。市町村、都道府県レベルの総合防災訓練は、日ごろの訓練の成果が表れる場であり、これは継続、繰り返しの成果です。そこは違います。
ただ、この大規模な訓練にも学校の総合防災訓練にも火災避難訓練にも共通している点が一つあります。それはイレギュラーを許さない、つまり、想定通りにしか事が運ばないということです。もう少し踏み込んで言うと、「突発的な課題に挑戦する機会」がない、ということです。

参加者が考える余地を残した防災訓練

ここまでは、「継続」「繰り返し」をキーワードにして解説してきました。
実は、もう一つ大切なキーワードがあります。「思考の余地」です。つまり、先に述べた「突発的な課題に挑戦する機会」をどう提供するか、です。答えは簡単です。火災避難訓練や総合防災訓練を、課題解決型の訓練、「理解力・判断力・表現力」と直結する訓練と位置付けるのです。
具体的に考えてみましょう。火災避難訓練では、避難路をふさぐ、煙を焚いて避難路を通れなくする、数人の子どもを意図的に隠して行方不明者にする、などといった工夫が増えてきました。そこでは、子どもたちや教職員の考える力が試されます。総合防災訓練も同様です。あちこちに課題や難題を用意しておき、それに出くわした子どもたちと教職員が相談して解決策を練り(思考力)、解決策を決め(判断力)、実際に活動する(表現力)のです。地域住民にも協力してもらい、避難所で無理難題を主張する人、障害者、妊婦などの要支援者として参加してもらう、などの工夫、協力を取り入れるのもいいですね。
設定される課題、難題も、一つの技能で簡単に解決できるものよりも、いくつかの知識、技能を組み合わせなければならない内容にして下さい。
こういった「思考の余地」を持つ防災訓練で、子どもたちは「思考力・判断力・表現力」を磨き、あるいは、そこまではいかなくても、その大切さに気付き、さらに、ある程度の「知識・技能」があったほうが課題解決はうまくいくことを知り、その意識が「学びに向かう力」につながっていくのです。
最後に、学校での訓練では教職員は見守る側になりがちです。それでも良いでしょう。ただ、教職員だけで行う防災研修を必ず実施して、教職員の思考力、判断力、表現力を磨く場も作ってください。案外何もできないかもしれません(失礼)。

*「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力・人間性等」などの表現は現行の学習指導要領を参考にしました。

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moshimo ストック
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私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?
私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?