離婚届を勝手に出すことは犯罪?その後の問題点を弁護士が解説

離婚届を勝手に出すことは犯罪?その後の問題点を弁護士が解説

3、離婚届を勝手に出した場合、どんな罪になる?

では、配偶者に内緒で離婚届を勝手に提出した場合、どのような罪に問われるのでしょうか。

不貞行為をしている相手と早く再婚したい等の理由で離婚届を偽造する人がいますが、以下の犯罪に該当する可能性があります。

離婚届を勝手に作成し提出するのは、絶対に控えるようにしましょう。

(1)電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)

戸籍などの公的な書類を作成するときに虚偽の内容を伝え、コンピューターなどに記録された場合には「電磁的公正証書原本不実記録罪」に該当する可能性があります。

離婚届を配偶者に無断で提出することは、戸籍に関して虚偽の内容を伝えることに該当し、電磁的公正証書原本不実記録罪の罪に問われる可能性があります。

(2)有印私文書偽造罪(刑法159条1項)・偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)

離婚届は夫婦のどちらか一方のみで作成できるものではなく、夫婦双方の意思の元に作成されなければなりません。

夫婦の一方がパートナーに無断で離婚届を作成し提出したとなれば、パートナーの名義を勝手に用いて離婚届を偽造したことになります。

行使目的で離婚届を作成すればこの時点で有印私文書偽造罪が成立し、離婚届を実際に提出すれば偽造有印私文書行使罪が成立します。

4、離婚届を勝手に出した後に考えられる流れ

離婚届を勝手に提出した後、どのような流れが起こりうるか確認しておきましょう。

(1)配偶者が離婚に納得している場合は、そのまま離婚成立

離婚届を配偶者に内緒で勝手に提出しても、配偶者も離婚意思があり離婚に納得している場合はそのまま離婚成立となる場合もあります。

離婚届自体は、夫婦揃って提出する必要はありませんので、双方に離婚意思があるのであれば離婚届の形式・実体共に問題がないでしょう。

(2)離婚無効調停・離婚無効訴訟

一方、配偶者には離婚意思がなく、離婚届を勝手に提出したことに配偶者が憤った場合、離婚に関する問題が長期化・複雑化する可能性があります。

離婚届を勝手に提出された配偶者は、離婚無効調停や離婚無効訴訟を提起する可能性があります。

離婚が成立するには、形式的に不備のない離婚届が提出されるだけでなく、夫婦双方の離婚意思が必要です。

離婚意思がないにもかかわらず、離婚届を勝手に提出され離婚が成立したとなれば、離婚届を勝手に提出された配偶者が離婚の無効を主張する可能性は十分考えられます。

相手が調停や訴訟を提起した場合、勝手に離婚届を提出した側も調停や裁判手続に応じなければならず、裁判に対応する手間や経済的負担が発生します。

(3)慰謝料請求

離婚意思がないのに、離婚届を勝手に提出され離婚を成立させられた側としては、精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求をしてくる可能性があります。

(4)再婚している場合は新たな婚姻(再婚)が取り消される可能性

日本では一夫一妻制が採用されていますので、複数の相手と婚姻関係を持つことは重婚として禁止されています。

婚姻届を提出する際も、重婚禁止に反していないかの確認がなされます(民法740条)。

通常のケースであれば、重婚状態が生じることはありません。

ですが、離婚届を勝手に提出した人が再婚をした後、離婚が無効となり元の婚姻関係が復活すれば重婚状態が生じることとなります。

後の再婚が、重婚禁止に違反していることになるのです。

重婚禁止に違反した婚姻については、当事者、配偶者、前の配偶者、親族、検察官がその取消しを請求することができます(民法744条)。

離婚届を勝手に提出し不倫相手と再婚したとしても、後からその再婚が取り消されてしまう可能性がありますので、この点は注意が必要です。

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