防災教育の実践を支援するいくつかの事業

防災教育の実践を支援するいくつかの事業

単発の防災教育教材

防災教育を始めようとする教職員、防災関係者は、まず何をどう教えるかという課題に直面します。学校教育の世界であれば、教科書があり、指導書があり、同僚のアドバイスや過去の実践記録があって、それらから多くを学び取ることができます。しかし、防災教育の歴史はそう長くはなく、上記の3つの支援事業が始まってまだ20年です。教科や総合的な学習の時間で取り上げられる他のテーマと比べると、実践は単発が多く体系化されているとはいい難い状況です。

防災教育に関するテキストやe-learning、ゲームなどの教材も同様に、大雨や非常持ち出し袋、避難所生活、災害時の困りごと、マップ、等々、ある項目を限定的に取り扱う一点突破型が多く、小学校から高校までを視野に入れた体系的な防災教育のテキストは、例えば、筆者たちが開発した一連の教材くらいしかありません(※4)。

「千と千尋の神隠し」(※5)に出てくる湯屋のかまじいは、何本もある長い手を伸ばして薬ダンスの引き出しから薬を取り出して調合します。防災教育もこんな感じです。引き出しはいっぱいあります。面白い(単発の)授業はたくさん出そろいました。ただ、数多くの引き出しが体系的に整理されていないのです。防災教育の世界では、かまじいのようにすべてを知って調合できる人はまだまだごく少数です。多くの人は、特定の引き出しを開けて、そこにあるプログラムを単発で実施している段階にいます。

※4 明石スクールユニフォームカンパニー 防災関連事業
「まもろう!じぶんのいのち」(小学校低学年)「守ろう!自分・家ぞく・地いき」(小学校中学年)「守ろう!私たちの今と未来」(小学校高学年)「災害と向き合う」(中学校)「災害と生きる」(高等学校)
※5 スタジオジブリ

セレクションとグラデーション、プチ・カリキュラムマネジメント

紹介した3つのプログラムは、見ようによってはその調合方法を教えてくれているのです。ぼうさい探検隊はマップに特化していますが、マップという分野の中での調合方法を教えてくれます。防災教育チャレンジプランとぼうさい甲子園で優れた賞を受賞している団体の実践はほとんどが総合的で体系的です。うまく調合されているのです。

セレクション(selection)とは選択のことです。たくさんある引き出しのどの引き出しを開けるかということです。グラデーション(gradation)とは徐々に変化していく様をさします。引き出しを開けて教材を引っ張り出し(セレクション)、それをうまく配列する(グラデーション)、これがいわゆる「カリキュラム・マネジメント」にあたります。と言っても、年間指導計画などと大きなことを考えずに、まずは数コマの防災教育教材を作りましょう。私はこれをプチ・カリキュラムマネジメントと呼んでいます。

この3つの支援プログラムが蓄積してきた実践事例を参考にすれば、防災教育のステップをもう一段上げることができるはずです。

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moshimo ストック
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私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?
私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?