離婚前の別居では住民票は移すべき?住民票の異動先を知られたくない場合の対処法

離婚前の別居では住民票は移すべき?住民票の異動先を知られたくない場合の対処法

離婚前の別居で住民票を移すデメリットと注意点

正式に離婚が成立する前に住民票を移すことには、デメリットや注意点も存在します。
特に注意すべき点は、次のとおりです。

子の転園や転校が必要になる

校区や市区町村をまたいで住民票を移した場合には、子の転園や転校が必要となります。
そのため、子にとっての環境が大きく変わってしまうことになるでしょう。

子の年齢にもよりますが、あらかじめ子の意見もよく聞いて、転校の時期などについては可能な限り子の意見も尊重することをおすすめします。

住宅ローンの契約違反となる可能性がある

転居をする人が住宅ローンの契約者や連帯保証人となっている場合には、無断で引越しをしてしまうと金融機関との契約違反となる可能性があります。
特に、契約者が無断で引越しをすると、ローン残額をまとめて請求できる旨の規約(「期限の利益の喪失」といいます)が定められている場合があるため、注意が必要です。

そのため、住宅ローン返済中の家から転居する場合には、あらかじめ金融機関に相談をしておく必要があるでしょう。

無断で子を連れだせば親権で不利となる可能性がある

相手方の同意を得ることなく無断で子を転居先に連れ出してしまうと、親権において不利となる可能性があります。

そのため、特に親権について争いがある場合には、相手の同意なく子を連れ出すことは避けるべきでしょう。
また、相手の同意を得たうえで子を連れて引っ越す場合においても、その旨を書面で残しておくことをおすすめします。

悪意の遺棄と判断される可能性がある

相手を残して家を出ることが「悪意の遺棄」に該当すると判断されれば、慰謝料請求の原因となるなど離婚において不利となる可能性が高くなります。

たとえば、相手にほとんど収入がないにもかかわらず主に収入を得ている側が勝手に家を出て婚姻費用を家に入れなくなった場合や、相手が病気などで1人での生活が難しいにも関わらず放置をして家を出た場合などには、悪意の遺棄と判断される可能性が高いでしょう。

悪意の遺棄と判断されてしまわないよう、家を出る際には相手の同意を得ておくとよいでしょう。
また、悪意の遺棄に該当するかどうかの判断に迷う場合には、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。

国民健康保険の負担が生じる場合がある

健康保険には、サラリーマンなどの給与所得者が主に加入する健康保険と、自営業者などが主に加入する国民健康保険とが存在します。

このうち、国民健康保険には「扶養」という概念はありませんが、世帯主にまとめて請求がされるため、世帯主が世帯全員分を支払っていることが一般的です。

一方、引越しをして住民票を移すと世帯が分かれるため、国民健康保険の請求先も別々となります。
結果的に、これまで配偶者が負担していた国民健康保険の保険料を、自分で負担する必要が生じる可能性があるでしょう。

国民健康保険の負担についてよりくわしく知りたい場合には、市区町村の国民健康保険窓口へあらかじめ相談しておくことをおすすめします。

別居後の住民票異動先を相手に知られたくない場合

離婚前に別居した場合、転居先を相手に知られたくないという場合もあるかと思います。
その場合に検討すべき対策は、次のとおりです。

住民票を異動しないで引越しだけをする

次で解説するDVなどの事情が特に存在しない場合において、転居先を知られたくない場合には、住民票を移さずに引越しだけをすることが一つの選択肢となるでしょう。

他人の住民票の写しは原則として取得することはできない一方で、夫婦の相手方の住民票の写しや子の住民票の写しであれば、特に理由がなくても取得できてしまうためです。

住民票を移していなければ、相手が住民票の写しを取得したところで、元々住んでいた家の住所が表示されるのみとなりますので、住民票の表記から転居先が知られることはありません。

DVなどの場合には住民票の閲覧制限をかける

相手からDVやストーカー行為を受けている場合や、児童虐待がある場合などにおいては、住民票の閲覧制限をかける制度の利用を検討しましょう。

住民票の閲覧制限をかけることで、仮に加害者である相手が住民票の写しなどの交付請求をした場合であっても交付が拒絶されるため、住所を知られることを防ぐことが可能となります。

制度を利用するためには、住所地の市区町村役場に事前に相談をしたうえで、手続きを踏むことが必要です。

手続き方法の詳細や事前相談の受付方法は市区町村によって異なる場合があります。
まずは、住所地の市区町村役場へ電話などで問い合わせてから、手続きの流れを確認するとよいでしょう。

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