寿木けい×富士華名 大人の茶会。

最近、茶道を始めてお茶に目覚めたという寿木けいさんが、以前から交流のある茶人の富士華名(ふじばな)さんの茶寮を訪問。お茶をしながらゆるりとした時間を過ごしました。9月28日(水)発売Hanako1213号「新しいニッポンのお茶。」特集よりお届けします。

お茶を通して語る、いまのこと、これからのこと。


富士華名さんのお茶会は小さな茶杯で1人3〜4煎ずついただくスタイル。同じ茶葉でも飲むたびに味変する。使用している水は「高賀の森水 奥長良川名水」。

8月某日。富士華名さんの茶寮へ訪れたのは、茶道をきっかけにお茶に目覚めたという寿木けいさん。お茶を通じてゆるりとしたひとときを過ごす、大人の茶会が開かれました。

(右)寿木けい(エッセイスト・料理家)
すずき・けい/富山県出身。出版社勤務を経て執筆活動を開始。著書は『泣いてちゃごはんに遅れるよ』『土を編む日々』など多数。本誌にて「ひんぴんさんになりたくて」を連載中。今年山梨に移住し、古家をリノベーション中。

(左)富士華名(茶人)
ふじ・ばな/学生時代にお茶の魅力にハマり、中国茶、台湾茶、日本茶を20年以上にわたり研究分析している。主宰する〈富士華名茶寮研究所〉では定期的にレッスンを開催。初心者にもわかりやすく、お茶の楽しさを教えてくれる。

富士さんの茶道具はアイデア満載。


建水は茶碗を清めた湯を捨てる器。見た目にも楽しくなるような工夫を。もらいものの岩茶の岩は茶さじや茶則置きに。

寿木けい(以下、寿木):富士華名さんのところに来ると、お茶の概念が変わるし、お茶の知識も増えるのが楽しい。……この器ってなあに?
富士華名(以下、富士):これは建水(けんすい)。ガラス作家さんのコップがちょうどいい大きさだったので、川で拾ってきた石を入れて。石は、お湯をこぼすときに跳ねないように。
寿木:いいアイデア! 建水って茶道具の中でも地味な存在だけど、こうするとすっごくおしゃれ。
富士:お茶を始めるときって、みなさんお道具の心配をするんです。どうしてもお金がかかるものなので。だから、こんなふうに自分流にアレンジしていいんですよって。あと、茶さじも自分でよく作る。竹や梅の木、拾ってきた流木を削ったり。
寿木:手先が器用なんですね。
富士:ふふふ(笑)。お茶、どうぞ。
寿木:いただきます。
富士:これは白茶。茶葉が散茶なので、水出しして冷たくしました。
寿木:中国茶ですか?
富士:雲南省。大雪山の山奥で摘んだ野生のお茶。フルーティな味わいが特徴なんです。
寿木:ほんとだ、果物の味。ライチやスイカみたいな。おいしい!
富士:カクテルなどのアレンジティーにもよく使います。これは野生のお茶なので開封したてがおいしいけれど、中国茶って開封してしばらく置いておくと発酵し味わい深くなるものが多いんです。日本人は「劣化する」と言うけれど、中国では「熟成」。今日用意している凍頂茶も30年もの。おじいちゃんの代から受け継ぎ、何年かに1回焙煎したりしながら熟成させているもので。
寿木:すごい! ワインみたい!
富士:25年もののヴィンテージ普洱(プーアール)茶とかもあるの。それこそワインなんです。水色(すいしょく)もルビーを砕いてお茶にしたのかと思うほど美しくて。
寿木:飲む宝石ですね。

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