●ボーナスカットでいつの間にか貧困に転落
貧困状態に陥った夫婦の相談にも多く乗ってきた、ファイナンシャルプランナーの武藤貴子さんに話を聞きました。
「以前相談を受けたケースですが、その方は夫のボーナスがカットされたことを機に、住宅ローンの支払いが難しくなり、貯金を切り崩して生活していました。さらに同時期に妻が妊娠して体調を崩し、正社員として勤めていた会社を退職することに。その結果、貯金はどんどん減っていき、夫の収入でギリギリの生活を余儀なくされてしまいます。これから子どもが生まれてくるのに不安しかないという状態で、精神的にも追いつめられていました」(武藤さん、以下同)
返済が難しくなりそうな段階であれば金融機関に相談できるものの、滞ってからでは手だてがなくなってしまうそう。
●貧困から脱出するカギは夫婦の意識変革
家計が危うくなったら、すぐに支出を見直すことが急務ですが、夫婦の意識次第では貧困を加速させてしまうことにもなりかねないと武藤さんは危惧します。
「家計が苦しくなってきたと思っても、すぐに軌道修正できないのは、『環境を変えることに抵抗がある』という人に多くみられる傾向です。自分がそうかもしれないと思ったら、すぐにお金の専門家を頼るということも大事だと思います」
もちろん、相談にはお金も発生しますが、そのコストを惜しいと思って躊躇するか、それよりもずるずると貧困状態に陥るリスクを恐れるか、そこでも夫婦の意識によって、復活できるかどうか差が開くそうです。
「さらに、相談にお越しいただいても、マネーカウンセリングの場でアドバイスを素直に実践しようとする人と、無理だと諦めてしまう人がいます。前向きに状況を変えていこうとする人は、自分でも積極的に情報を取ろうとしますし、カウンセリングの場でも具体的な話ができます。そうした夫婦は家計を立て直すスピードも速いと思います」
貧困から脱出するもしないも、本人たちの思考と意識次第。まずは自分たちが置かれている状況を客観的に見る目を養うことも大事かもしれません。
(構成・文:末吉陽子/やじろべえ)