モロー反射はどんな動きのこと?
話に聞いたことはあっても実際に見たことがないと、どの動きがモロー反射なのか判断できません。どのような動きのことなのか、まずは理解を深めていきましょう。
手を左右対称に広げ抱きつくような動き
赤ちゃんが驚いたときなどにびくっとしてから両手を左右に大きく広げ、指もすべて伸ばしてしがみつくような動きをすることをモロー反射と呼びます。
激しく動くので、びっくりするママやパパは多いことでしょう。何かに抱きつこうとするように見えるので、「抱きつき反射」とも呼ばれます。
この動きは、生まれたばかりの赤ちゃんにしか見られません。外部の刺激から身を守るすべがない赤ちゃんが身を守ろうとする動きだとされ、両親に合図を送って守ってもらえるようにこのような動きをするという説があります。
発達の過程で起こる正常な動き
モロー反射は運動機能をアップするために必要であり、正常な動きです。「原始反射」の一種で、赤ちゃんの意志とは無関係に起こります。原始反射とは、生まれながらに備わっている反射運動を指します。
モロー反射だけでなく、赤ちゃんの唇に何かが触れたときに触れたものを探すようにして顔を動かす動作や、舌を動かして乳首を吸う動作なども原始反射に含まれます。いずれも、成長とともに消滅する反応です。
モロー反射が起きないと、正常ではないということになります。検診などで医師が赤ちゃんの発達を確かめるために、わざと刺激となる動きを与えてモロー反射を誘発し、チェックする場面に出会うこともあるでしょう。
参考:子どもの保健 I -子どもの健康と安全を守るために-|学建書院|学術図書出版(歯学書、栄養学書)
いつからどんなタイミングで起こるのか
モロー反射がいつまで起こるのか知っていると、赤ちゃんの発達の度合いをチェックできます。どんなタイミングで起こるのかも知っておけば、対策しやすくなるでしょう。どんなタイミングで起こるのか紹介します。
出生後から4カ月ごろまで起こる
モロー反射が起こる頻度や時期は個人差が大きいですが、基本的には「0〜4カ月の間」に起こります。4カ月を過ぎると見られなくなり、成長とともにいつのまにか起きなくなっていたというパターンが一般的です。
生後半年を過ぎてもなくならない場合、何らかの問題が潜んでいる可能性があるので医師に相談しましょう。まれに、発達の問題が起きていることもあります。
体勢が変化したとき
赤ちゃんを寝かせたりあやしたりしようとして、「動かしたとき」にモロー反射が起こる場合があります。
急に抱き上げると体勢が大きく変化するため、刺激を感じるのです。沐浴の際に、モロー反射が起こる赤ちゃんもいるでしょう。
なかには、自分の動きに驚いてモロー反射が出る赤ちゃんもいます。赤ちゃんはまだうまく自分自身の動きをコントロールできないので、刺激を与えられたと感じて敏感に反応してしまうのです。
大きな音や光に驚いたとき
音や光などの刺激を受けたときに、モロー反射が出る赤ちゃんもいます。音や光に敏感な赤ちゃんは、「テレビの音」や「照明の光」などが刺激となってしまう場合があるのです。
カメラのフラッシュの光やシャッター音などに、激しく驚いてしまう子もいます。足音やドアが閉まる音などに反応する子も少なくありません。
刺激が多い環境だとモロー反射が起こりやすいですが、感じ方には個人差があるので、少しの音や光で敏感に反応する赤ちゃんもいれば、それほど気にしない赤ちゃんもいます。
反応の違いには個人差が大きいことも押さえておきましょう。
モロー反射が起きたら?
モロー反射が赤ちゃんとの生活にどのような影響を与えるのか、不安を感じる人もいるはずです。モロー反射が起きると、どうなるのか見ていきましょう。
赤ちゃんが起きる・寝てくれない
モロー反射は正常な反応とはいえ、赤ちゃんが寝てくれなかったり寝たと思ったのにすぐ起きたりする原因になることがあります。
どの程度の外部の刺激に反応するかは赤ちゃんによって異なり、少しの刺激でもモロー反射が出て目覚めて泣いてしまう子もいるのです。
「赤ちゃんが上手に眠れない原因」になっている場合、本人がつらいだけでなくお世話をするママやパパの負担も大きくなってしまいます。よく寝てくれない場合は、動きを和らげる対策が必要です。
異変を感じたらはやめの受診を
モロー反射は早産の子の場合をのぞき、すべての赤ちゃんに起こる反応です。激しく頻発する場合でも、成長の過程で起こる正常な反応なので心配はいりませんが、注意したい点もあります。
「モロー反射がまったくない」「左右均等な動きではない」「生後半年以上が経過しているのになくならない」などの異変があるときは、何らかの問題が潜んでいる可能性があるのです。
てんかん発作と区別が付きにくい場合もあるので、何かがおかしいと感じたら速やかに小児科を受診しましょう。
モロー反射が激しいときの対策
モロー反射があまりにも激しいと、なかなか寝てくれなかったり寝てもすぐに起きたりと大変です。発達の過程で起こる自然な現象なので心配しすぎる必要はありませんが、赤ちゃんが起きてしまって大変な場合は対策しましょう。
抱き方を工夫する
赤ちゃんを抱っこするときは頭の位置を下げたり、急激に向きを変えたりしないようにしましょう。寝かせるときは頭が下がらないように注意しながら、ゆっくりと寝かせます。
温かいママやパパの腕のなかから、急に冷たい寝具に移動させられるとびっくりする赤ちゃんもいるので、温度に敏感な場合は寝具を人肌程度に温めておくとよいでしょう。
また、「赤ちゃんが安心するような抱き方」をすることも大事です。体に密着させた状態で、優しく背中をトントンと叩くなどのスキンシップをすると、安心してくれるでしょう。
赤ちゃんがいる環境を見直し整える
照明が原因でモロー反射が起き、目を覚ましてしまうことがあります。光に敏感な赤ちゃんは、光が入ってきやすい扉や窓のそばに寝かせないようにしましょう。
スペースの関係でどうしても窓の近くで寝かせたいときは、直射日光が当たらないようにレースのカーテンを引くなどの工夫をします。
エアコンや扇風機の風が強すぎてモロー反射が起こる赤ちゃんもいるので、直接風を当てない工夫が必要です。
環境の変化に敏感な赤ちゃんがいる場合、温度や湿度が急激に変わらないように注意しましょう。エアコンの「自動運転モード」を使うと、室内が一定の温度になるように保てて、節電にもなります。
おくるみで包む
おくるみで包むと体温や湿度の調節がしやすく、モロー反射を和らげる効果が期待できます。おくるみに使用する布は肌触りや通気性がよく、適度に伸縮性があるものがよいでしょう。
様々な包み方がありますが、基本の巻き方を紹介します。
(1)ひし形に広げて中心に向けて折った布の中央に赤ちゃんを寝かせ、布と肩のラインを合わせる
(2)片腕を胸の前に置いた状態で、布の端を持ってきて腕を固定するようなイメージで包み、布の端を背中側に折り込む
(3)足元の布をふんわりと巻いて、胸元に入れる
(4)もう片方の腕も胸の上に置いて残っている布端で包み、肩から体の下に巻き込む
足元の布を胸元に入れるときはきつく巻きすぎず、「足を自由に動かせる余裕」を持たせて包みましょう。
まとめ
モロー反射は生まれたばかりの赤ちゃんに備わっている原始反射のひとつで、正常な動作です。頻度や激しさには個人差があるものの、基本的には生後4カ月を過ぎるころには見られなくなります。
少々の光や音でモロー反射が起きて寝付けない赤ちゃんもいるので、赤ちゃんを寝かせる環境には気を配りましょう。抱き上げ方や寝かせ方を意識するだけでも、動きが和らぐことがあります。
おくるみなどを利用して、寝付きやすくする方法もおすすめです。
ただし、モロー反射が左右対称でなかったり成長してもなくならなかったりなどの問題があるときは、小児科を受診することも重要です。