びまん性胸膜肥厚とは?アスベストが原因で発症したときの救済制度

びまん性胸膜肥厚とは?アスベストが原因で発症したときの救済制度

3、アスベストでびまん性胸膜肥厚を発症した時に申請できる救済制度

アスベストが原因でびまん性胸膜肥厚を発症した人には、大きく分けて3種類の救済制度が用意されています。医療費や年金は労災保険(1)、被害者や遺族の負った精神的苦痛は慰謝料として賠償金(3)でカバーされます。

一般に救済制度と呼ばれるのは「石綿健康被害救済制度に基づく給付」(2)で、これは時効等のせいで労災保険では補償してもらえない人を対象としています。

▼アスベスト被害(びまん性胸膜肥厚)で療養中に使える救済制度

救済制度の名称

対象者

補償内容

(1)労災保険給付

業務でアスベストばく露の機会があった労働者または労災保険の特別加入者

療養給付、休業給付、傷病年金、障害者給付、介護給付、遺族給付、葬祭料・葬祭給付等

(2)石綿健康被害救済制度に基づく給付

労災保険等では補償されない人、または給付申請中の人

医療費、療養手当、葬祭料、特別遺族弔慰金、特別葬祭料、救済給付調整金

(3)アスベスト賠償金

アスベスト工場の労働者、または建設業務への従事によりアスベスト被害に遭った労働者

1,150万円+遅延損害金、弁護士費用等(死亡した場合は1,300万円)

(1)労災保険給付(労災補償)

建設・造船・製品加工等といった石綿ばく作業に直接従事した人(=職業ばく露による被害者)は、一定の医学的基準を満たすことで労災保険の給付申請が可能です。びまん性胸膜肥厚を発症したケースの場合であれば、石綿ばく露作業への従事期間と検査の所見が労災保険給付の認定基準となります。

(2)石綿救済健康被害救済法に基づく給付

労災保険による補償が受けられない、もしくは給付に時間がかかるため一時的に自己負担額が発生するような場合には、石綿健康被害救済法(2006年3月27日施行)に基づく救済制度があります。本制度の内容としては、療養中であれば医療費と月額約10万円の療養手当、申請前に疾患が原因で亡くなった場合は合計約300万円の遺族補償などがあります。

(3)アスベスト賠償金【工場労働者型・建設労働者型】

労災保険や石綿救済健康被害救済法に基づく給付は、医療費や休業補償といった実際に生じている損害を補てんするものです。これらとは別に、労災等では補償対象外となっている、被害者の精神的苦痛に対する「慰謝料」等も獲得できる賠償制度があります。

以下のように、国の賠償制度については「工場型」と「建設型」とに分けて運用されています。企業に対しては、個別に請求することが必要です。一部の企業では一定の救済制度を設けているところもありますが、損害賠償請求訴訟を起こさなければ適切な賠償金を受け取れない可能性が高いのが現状です。

国の賠償制度(工場型)

訴訟提起+和解で支払われる

給付額1,150万円(存命中の場合)または1,300万円(死亡した場合)

国の賠償制度(建設型)

厚労省の給付金担当部門に申請することで支払われる

給付額1,150万円(存命中の場合)または1,300万円(死亡した場合)

企業に対する損害賠償請求

元勤務先企業等に対する請求で支払われる

(企業独自の救済制度を設けている場合もある)

4、びまん性胸膜肥厚と労災保険給付

過去に石綿ばく露作業の従事経験がある人は、まず労災保険給付(労災補償)の申請を検討しましょう。一人親方のような働き方であっても、特別加入者であれば給付対象になります。

▼労災給付の基本

給付の内容:医療費や休業補償、遺族年金等
給付の条件:「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」であること

(1)給付を受ける条件

びまん性胸膜肥厚で労災給付を受けるには、会社の所在地を管轄する各都道府県の労働基準監督署に申請する必要があります。その認定基準は以下①~③のように定められ、全て満たす必要があります。

石綿ばく露作業に3年以上従事していること
著しい呼吸機能障害があること(パーセント肺活量が60%未満である場合等)
肺の画像検査で一定以上肥厚の広がりがあること※

※目安(胸部CT画像を撮影した場合):肥厚が肺の片側のみに確認される場合は側胸壁の2分の1以上、両側なら4分の1以上

参考:石綿による疾病の認定基準(厚労省)

(2)労災保険の給付内容

労災保険給付には治療費・休業補償・後遺障害……というように種類が分かれており、それぞれ労働基準法の平均賃金に相当する「給付基礎日額」をベースに計算します。

びまん性胸膜肥厚等、アスベスト健康被害で特に注意したいのは、短期2年・長期5年の請求時効(労働者災害補償保険法第42条)がある点です。

保険給付の種類

給付額

請求時効

療養(補償)給付

必要な療養分(=治療費)

2年

休業(補償)給付

休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%相当

2年

傷病(補償)年金

障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から245日分相当

請求時効なし

障害(補償)給付

年金:給付基礎日額の313日分から131日分

一時金:給付基礎日額の503日分から56日分

※障害の程度により変動

5年

介護(補償)給付

最大105,290円

※介護の状況と支出した額に応じて変動

2年

遺族(補償)給付

年金:給付基礎日額245日分から153日分

一時金:給付基礎日額の最大1000日分

5年

葬祭料、葬祭給付

315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額

※下限:給付基礎日額の60日分

2年

関連記事: