びまん性胸膜肥厚とは?アスベストが原因で発症したときの救済制度

びまん性胸膜肥厚とは?アスベストが原因で発症したときの救済制度

7、びまん性胸膜肥厚と国の給付金制度(建設型)

アスベストばく露の被害者に対する国の賠償制度には、建設現場の元労働者等を対象とする「建設アスベスト給付金制度」もあります。令和4年1月19日に新設されたばかりで、給付内容は工場型の賠償金制度とほぼ同じです。

(1)建設型アスベスト給付金とは

建設型アスベスト給付金は、やはり被害者の提起した損害賠償請求訴訟の最高裁判決(令和3年5月17日)に基づいて新設された制度です。こちらは工場型の賠償金制度と違い、訴訟を提起しなくても申請書類を出せば給付手続きが始まります。

(2)申請できる条件

建設アスベスト給付金制度を申請できるのは、下記3つの条件を全て満たす場合です。これらを証明するための書類(=申請時の提出書類)は、先に労災補償を受けていれば「労災支給決定等情報提供サービス」の利用で簡略化できます。

下の表の期間中、石綿にさらされる対象の建設業務に従事したこと※
その結果「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」等の石綿関連疾病にかかったこと
じん肺管理区分の決定日(死亡した場合は死亡日)から20年以内に請求すること

※労働者の他、一人親方・中小事業主(家族従事者等)も含まれます。

▼給付対象となるアスベストばく露作業の従事期間

石綿の吹付け作業に係る建設業務の場合

昭和47年10月1日~昭和 50 年 9月 30 日

一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務の場合

昭和50年10月1日~平成16年9月30日

(3)受け取れる給付金の額

びまん性胸膜肥厚患者に対する建設アスベスト給付金制度の支給額は、存命なら1,150万円、死亡した場合は1,300万円です。診断直後に給付金を受け取ってその後死亡した場合は、その差額の給付(追加給付金)があります。

なお、建設業務の従事期間が短かったり、喫煙習慣があったりした場合は、1割減額となる可能性があります。

▼他のアスベスト関連疾患が疑われる人や発症リスクのある人は、こちらの記事で補償制度利用を視野に入れた対応方法が確認できます。

8、アスベスト関連疾病の給付金は早期申請が重要!弁護士に相談を

びまん性胸膜肥厚等のアスベスト健康被害は、一日でも早く救済申請に向けて行動する必要があります。理由のひとつはそれぞれの制度に請求期限があること、もうひとつは手続き自体の煩雑さです。

被害者本人とその家族に向けた公式の案内はいくつもありますが、それらを統合して給付金を満額受け取るためには、弁護士の力を借りることが得策です。弁護士に相談・依頼することで以下のメリットが得られます。

▼弁護士に依頼するメリット

必要な診断書・専門医療機関・健康診断等の初期対応が分かる
制度ごとに申請窓口を確認したり、書類を揃えたりする手間が省ける
アスベスト訴訟に強い(過去の勝訴判決等に基づいて証拠資料を完備できる)

びまん性胸膜肥厚に関するQ&A

Q1.びまん性胸膜肥厚とは?

びまん性胸膜肥厚とは、胸膜(肺を覆う膜)が炎症を起こして繊維化し、肺の表面が厚く硬くなっている状態をいいます。診断は主に画像検査(胸部X線画像やCT画像)で行い、肺の片側なら2分の1以上の肥厚、両側なら4分の1以上に肥厚が広がり病変が及んでいる状態が、びまん性胸膜肥厚の基準とされています。

Q2.発症する原因とは?

びまん性胸膜肥厚の原因はさまざまで、結核性胸膜炎等の感染症の他、放射線治療や開胸手術後にも起こるとされています。その他に挙げられているのが、石綿(アスベスト)です。

Q3.主な症状とは?

肺の表面が硬くなって膨らみにくくなると、呼吸困難といった症状が現れます。他にも、反復性の胸痛を覚えたり、肺炎などの呼吸器感染を繰り返したりします。こうした症状は徐々に進行していき、重症化して慢性呼吸不全となった場合には、酸素供給装置を用いて酸素を補給する治療が必要となります。

まとめ

びまん性胸膜肥厚は有効な治療法のない進行性の病気で、慢性的な呼吸困難や感染症といった苦しい状態が続きます。アスベストばく露との関連が疑われる状態なら、なるべく早く保健所や弁護士に相談しましょう。様々な救済・賠償制度をしっかり活用していくことで、健康被害に遭った人の生活品質を高めることにも繋がります。

▼アスベスト関連疾患の補償・救済制度

労災保険給付
石綿健康被害救済法に基づく給付(労災補償が受けられない時に)
国や企業から支払われる賠償金(上記①・②とは別にもらえる)

監修者:宮本健太弁護士

【経歴】
立教大学法学部卒業
東京大学法科大学院修了
司法修習(東京)修了

【専門分野】
交通事故のほか、労働災害事件、夫婦間の問題、労働問題などの一般民事事件を主に担当しています。
ご依頼者様の利益を最大化させることを念頭に、職務に取り組んでおります。

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