ジェンダーと防災 ~避難所運営を考える~

ジェンダーと防災 ~避難所運営を考える~

地域リーダーのジェンダー意識

避難所運営を期待される地域のリーダーは、自治会や自主防災組織の役員をそのまま横滑りさせると、ほぼ間違いなく、年配の男性になるでしょう。彼らは学校でジェンダー平等教育を受けたわけでもなく、どちらかと言えば男尊女卑の雰囲気が残っている社会で育てられた人たちが多いと思います。一人ひとりがジェンダー平等を強く意識しているとは思いにくく、社会情勢に敏感な方がその意識を持っているとしても少数派でしょう。トイレは男女別のスペースを確保とか、洗濯物を干す場所で女性への配慮とか、乳児の授乳場所とか、そういったところまで気が回らない男性も多いでしょう。
私は一度こんな経験をしました。ある地域の防災訓練で物資の搬送と炊き出しを行いました。地域の年配の方々を中心に男女がほぼ同じ人数集まっておられました。私は高校生の男女と一緒に参加しました。到着後最初に受けた指示が、女子は炊き出し、男子は荷物運び、でした。男は力仕事、女は台所の発想ですね。そこで一計を案じて、高校生を男女同数の2グループに分け、男女で荷物運び、男女で炊き出しに参加してもらったのです。そうすると、荷物運び担当の年配の男性が俄然張り切りだして、女子高校生に荷物運びのコツをレクチャーし始めました。一方、炊き出しの男子生徒は女性陣に囲まれて、料理を手取り足取り教えてもらっていました。こんな雰囲気が実際の避難所にあれば、少しは気持ちが和んでいいだろうなと感じました。

ジェンダー平等とLGBTQ+

さて、防災教育で我慢を押し付けるのは止めましょう。それよりも、ジェンダー視点で避難所はどうあるべきかを子どもたちに話し合わせましょう。もちろん、あわせてジェンダー平等とは何かを一緒に考えさせる授業も必要ですね。もし学校でジェンダー平等を、例えば総合的な学習の時間のテーマに取り上げているのなら、そのうち1~2時間を避難所との関連で話し合う機会にするとよいでしょう。もちろん、単発の授業でも大丈夫です。
着替え場所、就寝スペース、衣料(特に若い女性の下着)の配布場所、衛生用品の配布場所、掃除や料理の役割分担、乳幼児とお母さんのためのスペース、等々、いろんな課題で面白い発想が生まれてくるはずです。
最後にもう一つだけ指摘しておきます。たとえジェンダー意識を強く持って男女に平等な避難所運営を心掛けても、LGBTQ+(※2)の人々への支援の在り方が残ります。一人ひとりに配慮した避難所運営なら、自己責任ではなく、行政として、運営側としてどう配慮するか、ここもしっかりと考えたいですね。今、学校では、例えば制服は女子がスカートだけではなくパンツも選択でき、男子がズボンだけではなくスカートを選択できる学校も増えてきました。そんな時代に、避難所だけがあらゆる我慢を押し付ける場所のままでいいはずがありません。

※1 平成28年熊本地震等に係る被害状況
警察が検視により確認している死者数 50人
市町村において災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき災害が原因で死亡したものと認められたもの 215人
6月19日から6月25日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震との関連が認められた 死者数 5人
合計死者数 270人
資料:熊本県「平成28年熊本地震等に係る被害状況について【第288報】」平成31年3月13日16時30分発表

※2 明石市のホームページより

L
Lesbian レズビアン
女性が好きな女性。女性同性愛者。

G
Gay ゲイ
男性が好きな男性。男性同性愛者。

B
Bisexual
バイセクシュアル
男性も女性も好きになる人、または好きになるのに性別を問わない人。

T
Transgender
トランスジェンダー
生まれたときに割り当てられた性別と性自認が異なっている人。性自認が男性、女性に二分できないXジェンダーも含む。

Q
Questioning/Queer
クエスチョニング/クィア
・クエスチョニング:自分の性のあり方について「わからない」「迷っている」「決めたくない」など。
・クィア:性的マイノリティを包括する言葉。元々は「変わった、奇妙な」という意味で同性愛者を侮蔑する言葉だったものが、当事者が前向きな意味で使いだした経緯がある。

+
プラス
最後に「+」がついているのは、性はとても多様であり、上記以外にもたくさんの性のあり方があることから、包括的な意味を持たせるため。

関連記事:

配信元

moshimo ストック
moshimo ストック
私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?
私たち moshimo ストックは「もしも」のための防災情報メディア。 最近、地震や台風がよく起きるようになって心配。 防災をしようと調べてみたものの、何から始めればいいの…? 私たちも始めは知ることがたくさんあって、防災ってちょっと難しいな…と思いました。 でも、ちょっと待って下さい! もし何の準備もなく災害にあってしまったら大変です。 防災は少しずつでも大丈夫、「もしも」のための準備を始めませんか?