欺罔行為とは?詐欺罪が成立する行為と成立しない行為の違いを解説

欺罔行為とは?詐欺罪が成立する行為と成立しない行為の違いを解説

5、財物の処分権限を有する人に対する欺罔行為がなければ詐欺罪は不成立

詐欺罪が成立するには財物の処分権限を有する人に対する欺罔行為が必要であり、欺罔行為の有無を検討する際は誰に対する欺罔行為がなされたかを確認する必要があります。

以下のケースで詐欺罪が成立するかどうかを見ていきましょう。

(1)クレジットカードを不正使用した場合

他人名義のクレジットカードを店舗で不正使用した場合、クレジットカードの正当な使用権限があるかのように加盟店を欺く欺罔行為をし、クレジットカード会社の定める方法により正当に支払いを受けられると加盟店を錯誤に陥らせ、加盟店に財物の移転という処分行為をさせています。

したがって、このケースでは加盟店を被害者とする詐欺罪(刑法第246条1項)が成立します。

(2)登記官を欺罔して他人の不動産を自己名義にする登記をさせた場合

登記官を欺き、他人の不動産を自己名義にする登記をさせた場合、詐欺罪は成立するのでしょうか?

登記官という「人」を欺いているので欺罔行為があるとも思えます。

しかしながら、登記官は不動産を処分しうる権限・地位を有する者ではなく、登記官には財産を交付する処分権限がそもそもありません。

したがって、この場合、詐欺罪は成立しません。

6、欺罔行為・錯誤・処分行為が因果関係でつながっていなければ詐欺罪は不成立

詐欺罪が成立するには、欺罔行為・錯誤・処分行為が因果関係でつながっていることが必要です。

すなわち、欺罔行為によって相手が錯誤に陥ったことが因果の流れでつながっており、錯誤に陥ったことから財産の交付または財産上の利益移転という処分行為を行ったという因果の流れがつながっていることが必要なのです。

たとえば、金銭を騙し取ろうと考え欺罔行為をしたところ、相手は嘘を見破ったが哀れみの気持ちから金銭を差し出した場合は、相手は錯誤に基づいた処分行為を行っていないため因果関係がないとして、詐欺既遂罪は成立せず詐欺未遂罪が成立するにとどまります。

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