信書開封罪とは?郵便物を開封しただけで処罰される理由と事例

信書開封罪とは?郵便物を開封しただけで処罰される理由と事例

5、信書開封罪は成立しないが他の罰則が適用されるケース

他人の秘密をのぞき見る行為でも、信書開封罪の成立要件を満たさなければ同罪は成立しません。

しかし、場合によっては他の犯罪が成立して罰則が適用されることもあります。

ここでは、ありがちな3つのケースをご紹介します。

(1)他人のメールやLINEを勝手に見た場合

スマホやパソコンのメールやLINEは物理的に封をしてある文書ではないため信書には該当せず、信書開封罪は成立しません。

しかし、他人のメールやLINEなどの電子データを勝手に見る行為は「不正アクセス」に該当する可能性があります。

不正アクセス禁止法違反が成立する場合は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。 

(2)他人宛の信書を隠匿した場合

他人宛の信書を開封して見るのではなく、隠したり破棄したりして発見できないようにした場合は「信書隠匿罪」が成立します。

刑罰は、6ヶ月以下の懲役もしくは禁錮、または10万円以下の罰金もしくは科料です(刑法第263条)。 

信書を受け取った人が既に開封して読み、その目的(意思伝達機能)を完全に果たしたものは信書開封罪にいう「信書」には当たりません。

このような文書を隠したり破棄したりした場合は「器物損壊罪」が成立します。

刑罰は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です(刑法第261条)。

なお、信書隠匿罪と器物損壊罪も親告罪とされています(刑法第264条)。

(3)遺言書を検認前に開封した場合

遺言書は特定の人に宛てて送られる文書ではないので信書には該当せず、信書開封罪は成立しません。

しかし、自筆証書遺言は開封前に家庭裁判所で検認を受けなければなりません(民法第1004条1項)。

検認前に開封すると遺言書を開封することは禁止されており、違反すると5万円以下の過料というペナルティーの対象となります。

過料とは刑罰ではなく行政罰ですが、遺言書を勝手に開封すると遺言書の偽造や変造を疑われ、相続トラブルを招くおそれもありますのでご注意ください。

6、信書開封罪で告訴されたら逮捕される?

信書開封罪は比較的軽微な犯罪なので、よほど悪質な事案でない限り、発覚しても逮捕されてしまう可能性は低いといえます。

また、親告罪なので、刑事事件となる前に当事者間で解決出来る可能性も十分にあります。

しかし、逮捕される可能性が皆無とはいえませんし、逮捕されなくても有罪となれば刑罰が科せられることもあります。

信書開封罪で告訴されるような場合には、早急に弁護士へ相談することをおすすめします。

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