いつ起こるかわからない大地震。「冬の深夜・強風」の最悪の被害想定から備えを考えよう

いつ起こるかわからない大地震。「冬の深夜・強風」の最悪の被害想定から備えを考えよう

地震火災を防ぐために

大地震によって多くの人が亡くなると想定されている原因に、地震火災があげられます。出火は、食事の用意をしている時だけとは限りません。住宅そのものが大きく破損したり、倒壊した時にも火災が発生します。
また、地震にともなって停電が発生し、停電から復旧し再び通電した時に出火する「通電火災」が大地震発生時の大規模火災に繋がります。通電火災が発生した時の多くは、出火した住宅の住民はすでに避難していて、初期消火が行えない可能性があります。深夜の就寝時であれば、停電したことにも気付かないまま再通電して出火し、避難できないまま火災の犠牲になることも考えられます。暖房器具を使っている冬の風の強い日であれば、空気も乾燥しているため、さらに大規模な火災になることも。木造住宅が密集している地域では特に注意が必要だということも、想像できるはずです。

通電火災の引き金は、主に3つだと考えられています。

転倒した家具の下敷きになって破損した配線などに、再通電して発熱発火する
落下したカーテンや洗濯物などの可燃物がヒーターに接触した状態で再通電し、着火する
転倒したヒーターや照明器具が可燃物に接触した状態で再通電し、着火する

冬の火災防止として、ストーブやファンヒーターの周りに可燃物を置かないということをよく言われます。部屋干しの洗濯物をストーブやファンヒーターの近くで乾かしたくなるのは、多くの人に働く気持ちだとは思いますが、「もしも大地震が発生したら」と想像すると、そのリスクの高さをご理解いただけるはずです。ヒーターや電気ストーブなどは、スイッチを入れていなくてもコンセントがつながっているだけで、火災の可能性があるのです。暖房器具の周辺には、可燃物を置かないようにしましょう。

他に、日頃からできる対策としては、なによりも住宅の耐震性を高めておくこと、家具などの転倒防止対策を行っておくことが大切です。内閣府の南海トラフ巨大地震の被害想定では、火災にまでならなくても住宅の倒壊や家具などの転倒によって多くの人が亡くなるとも想定されています。

住宅用火災警報器を設置し、火災が発生した時には必ず作動するように点検とメンテナンスをしておくことも大切です。住宅用火災警報器の設置についてはこちらの記事でもご紹介しましたが、

住宅用火災警報器、正しく設置&メンテナンスできていますか?

冬の深夜の地震火災を想像してみると、その重要さがよりご理解いただけるのではないでしょうか。住宅用消火器も、キッチンだけでなく寝室やリビングなどにも備え、使い方を確認しておきましょう。

大地震が発生したら、避難するときにブレーカーを落とすのはもちろん、在宅していても停電中は電化製品のスイッチを切り、電源プラグをコンセントから抜くようにしましょう。石油ストーブやファンヒーターは、揺れを感知して自動で消火されるものがほとんどですが、転倒することなどで油漏れを起こすことがあります。火災が発生した時は、そうした漏れ出た油に引火して被害を大きくすることがあります。

電気やガスが復旧し、避難先などから戻ったら、電化製品やガス機器などの使用を再開する前には、近くに燃えやすいものがないか、機器に破損などがないか確認するようにしましょう。しばらくは電化製品から煙やにおいなどの異常がないか注意を払い、異常があった場合には使用を中止しましょう。

大地震が発生した時には、在宅避難を続けるとしても、暖房器具が使えなかった場合にどう寒さをしのぐのかということを考え、備えておくことも必要です。

冷えないように、濡れないように

冬の寒さや津波などの水に濡れることは、低体温症などを引き起こす外的要因にもなり、重症化すれば命を落とすことに繋がります。低体温症とは、内臓などの身体の深い部分の体温が35度を下回る状態のことです。指先などが冷える、冷え性とは違います。
低体温症になると、様々な臓器が正常に働かなくなり、「気を失う」「もうろうとする」「不整脈を起こす」などして、死に至ります。高齢者やダイエット中の人など、基礎代謝が低下することや、ストレス、甲状腺などの内分泌腺の機能低下も原因になりますが、冬の深夜に大地震が発生すれば、寒さにさらされることや津波に巻き込まれて漂流することなどで、誰でも低体温症になる可能性はあります。

津波のリスクのある地域では、たとえ空振りになったとしても、大地震が発生した時にはいち早く津波ビルなどへ避難するようにしましょう。もしも雨が降る中で避難する場合には雨合羽が必需品であるのは言うまでもありませんが、着替えなどを濡らさないように、ビニール袋などに着替えを入れた上で非常用持ち出し袋に入れて、持ち出すようにしましょう。

避難所にたどり着けたとしても、避難所にもすぐには暖房が入れられないことも考えられます。発災から数日間を乗り切れる寒さ対策が必要です。近年は、段ボールベッドを導入する避難所も増えてきましたが、床に雑魚寝しなければならない場合には、床から熱が奪われます。避難所に毛布が届かない、毛布が足りないこともあります。寝袋と銀マット(寝袋の下に敷くマット)や、ダウンコートと毛布、厚手のヨガマットなど、寒さ対策の装備を非常用持ち出し品として備えておくとよいでしょう。
逆に、夏は、うちわや冷却タオル、保冷剤などの暑さ対策グッズも必要です。非常用持ち出し袋も、衣替えが必要です。

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