下請けいじめとは?中小企業の担当者が知っておくべき6つのこと

下請けいじめとは?中小企業の担当者が知っておくべき6つのこと

3、下請けいじめに該当する親事業者の違法行為とは?

それでは、上記「2」に基づき「親事業者」に該当する場合、どのような行為が違法行為として禁止されているのでしょうか?下請法により禁止されている親事業者の行為は以下の11種類に分類されています。

「親事業者」と「下請事業者」の関係に該当しているのであれば、親事業者が以下の行為が法律で禁止されていることを知らなかったとしても違法行為に該当します (下請法4条)。

受領拒否(第1項第1号)

親事業者が下請事業者に物品等の発注をしたにもかかわらず、親事業者が注文した物品等の受領を拒否することが本号に該当します。

下請事業者としては、親事業者が物品を受け取ってくれないことには物品等の代金を受領できないため、受領拒否は違法行為となります。

下請代金の支払遅延(第1項第2号)

下請事業者は親事業者から代金を期日通りに支払ってもらえなければ、経営自体に打撃が生じる可能性があります。

そのため、物品等の受領または役務の提供がなされた日から60日以内に定められた支払期日までに下請代金を支払わないことは、違法行為とされています 。

下請代金の減額(第1項第3号)

親事業者と下請事業者との間の取引は、通常、あらかじめ契約に基づき下請代金が定められています。

下請事業者に責任がないにもかかわらず発注後になって下請代金の減額をすることは違法行為となります。

返品(第1項第4号)

親事業者が下請事業者に発注した物を受領したにもかかわらず「不要になった」「当初の想定とは違う」などと、下請事業者の責任とは関係のない理由をつけて受領した物を返品することは違法行為となります。

買いたたき(第1項第5号)

下請事業者は親事業者よりも弱い立場にあることがほとんどですので、親事業者から無理な代金で発注されそうになっても、泣く泣く親事業者の条件を飲まないと経営が立ちいかないケースもあります。

このような下請事業者の立場の弱さに親事業者がつけ込むことがないよう、市場価格と比較して著しく低い金額を定めて買いたたき行為をすることは禁止されています。

購入・利用強制(第1項第6号)

親事業者が下請事業者に対し、親事業者の製品・サービスや親事業者が指定した製品・サービスの購入や利用を強制することは違法行為となります。

報復措置(第1項第7号)

下請事業者は、下請いじめにあっていたとしても、それを公正取引委員会や中小企業庁に報告したことで親事業者から報復を受けることを恐れています。

そのため、下請けいじめにあっていても違法行為の報告をできないでいる下請事業者が少なくありません。

報告をしたことで取引を停止されたり取引の条件を不利に変更されたりしたら下請事業者の事業の存続に悪影響となります。

そのため、違法行為の報告を理由に報復措置をとることは違法行為となります。

有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号)

下請事業者の中には、受注した物を完成させるために親事業者から原材料等を有償で受給している場合があります。

この場合、親事業者の下請代金の支払期日よりも早期に原材料等の決済をすることは違法行為となります。

割引困難な手形の交付(第2項第2号)

親事業者の中には、下請代金の支払いを現金で行わずに手形で行う場合があるでしょう。

手形を交付する場合、一般の金融機関で支払い期日までに割引困難な手形を交付することは違法行為となります。

不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号)

親事業者が下請事業者に対し、不当な経済上の利益の提供をさせることは違法行為となります。

不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4号)

下請事業者に責任がないにもかかわらず、下請事業者の給付内容に関し不当な変更ややり直しを求めることは違法行為となります。

4、下請けいじめは多発している!実際にあった事例3つ

上記のケースが下請法で禁止されている違法行為の類型となります。

ここからは、違法行為のより具体的なイメージを持っていただくために、下請いじめで実際にあった事例をご紹介します。

(1)1年で約5100万円を手数料名目で支払わせた事例(マツダ)

1つ目のケースは、下請法違反でマツダが公正取引委員会から勧告を受けた事例です。

2018年11月から2019年10月までの1年間で手数料などとして約5100万円もの金額を下請事業者である資材メーカーに支払わせていたことが明るみになりました。

このケースは、不当な経済上の利益の提供要請として、下請法4条2項3号に該当する違法行為です。

(2)下請代金の減額をさせた事例(サンエス)

2つ目のケースは、株式会社サンエスが公正取引委員会から勧告を受けた事例です。

株式会社サンエスは、本来下請事業者が負担する必要のない金額を下請事業者に負担することを要請し、下請代金の中からその金額を差し引き、実質上の下請代金の減額をしていたことが明らかになりました。

その代金は総額で4億円を超えます。このような減額の要請は4条1項3号に該当し違法となります。

また、上記とは別に、下請事業者が菓子を製造する際、菓子の製造に必要な原材料をサンエスから購入させ、その原材料の代金につき、下請代金の支払いよりも前に原材料費を支払わせていました。

この行為は、4条2項1号の有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止に該当し違法となります。

(3)下請事業者の給付の受領を拒否した事例(フェリシモ)

3つ目のケースは、株式会社フェリシモが公正取引委員会から勧告を受けた事例です。

株式会社フェリシモは、発注書面に下請事業者からの給付を受領する期日を記載せず、納品期間を口頭で伝えるのみとし、納品期間が経過しても下請事業者からの給付の受領を拒否しました。

給付を受領していないことから下請代金の支払いをしておらず、未払いの下請代金の総額は8608万2291円となっています。

この行為は受領拒否として4条1項1号に該当し違法となります。

関連記事: