だが、家庭での「お手伝い」を侮ってはならない。実は子どもたちが成長して大人になったとき、お手伝いをしていたかどうかで人間力に大きな差がつくというのだ。三姉妹の父であり、K.I.T(金沢工業大学)虎ノ門大学院主任教授の三谷宏治さんに話を聞いた。
●お手伝いで段取り、自主性、感謝の心が身につく
「家業でも家事でも、お手伝いはいわば、親たちの仕事を助けること。お手伝いよりも勉強を優先させる家庭のほうが多いようですが、お手伝いをどれだけしっかりやれるかによって、子どもたちが社会人になったときの“人間力”や“生活力”が大きく変わってきます」(三谷教授 以下同)
大人が受け持っている家事や仕事を子どもにも分担させることが、一体なぜ人間力・生活力の向上につながるのだろう? 三谷さんの新著『お手伝い至上主義!』(プレジデント社)では、子どもにお手伝い経験をさせることの重要性が詳しく語られている。
「お手伝いをすることで子どもたちは段取りよく動くことを覚え、さまざまなことに気を配り、自ら考えて体を動かすようになります。文科省の調査でも、お手伝いをする小中学生は道徳心や正義感が極めて強い、というデータ(※1)が示されています」
●塾や習いごとより、まずは「お手伝い」!
また、最近盛んにその重要性が取りざたされている“コミュニケーションスキル”“課題解決スキル”もお手伝いをよくする子ほど高いというデータがある。(※2)
つまり、皿洗いや部屋の片付け、お風呂やトイレの掃除などを普段から行うことは、「気働き」「段取り力」「意思決定力」、さらには「正義感」や「道徳心」「コミュニケーションスキル」など、さまざまな能力を鍛える絶好の機会なのだ。
もちろんそれらは学校生活でも役立つスキルには違いないが、本当にその真価が発揮されるのは社会人になってからだろう。「勉強ができる」だけで渡っていけるほど、社会は甘くない。これからの時代はなおさらだ。ただ大切なのは、お手伝いといえどもちゃんと責任と権限を与えて任せること。
「お手伝いは子どもたちを社会へと導く、最も大切な日々の鍛錬の場。“係”として任されたお手伝いをこなすことで、子どもたちには“段取り力”や“創意工夫”が生まれます。わが子の将来を心配するのなら、与えるべきことは塾でも習いごとでもなく、“お手伝い”なのです」
親は家事の負担が減って、子どもの人間力はアップするとなれば、まさに一石二鳥。夏休みのうちに、わが子にぜひともお手伝いの習慣を身につけさせよう!
(阿部花恵+ノオト)
※1「青少年の体験活動と自立に関する実態調査」文部科学省/2012年度
※2「子どもの生活力に関する実態調査」国立青少年教育振興機構/2015年度