物損事故の違反点数は、どれくらいなのだろう……。
物損事故を起こしたら、免許に影響はあるのだろうか……。
交通事故を起こした場合、行政処分・刑事処分・民事賠償という3種類の責任を問われます。
上記のうち、運転免許に影響するのが「行政処分」ですが、物損事故の場合、原則として違反点数が加算されることはありません。
ただし、事故状況や事故原因によっては、例外的に違反点数が加算されたり、刑事罰を科せられたりする可能性があります。
今回は、
物損事故を起こした場合の違反点数
物損事故で違反点数が加算された場合の運転免許への影響
物損事故から人身事故に切り替わった場合の違反点数
などについて、解説します。
この記事が、物損事故の違反点数について知りたいと考えている方々の参考になれば幸いです。
交通事故の点数制度について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1、交通事故における違反点数の加算-物損事故の場合は?
交通事故を起こしたら、「違反点数」が加算される場合があります。
違反点数の種類は、以下の2つです。
基礎点数
付加点数
「基礎点数」は、交通事故の原因となった違反行為の内容によって、点数が決まります。
「付加点数」は、被害の程度や事故の態様などによって、点数が決められます。
物損事故を起こした場合、どのくらいの違反点数が加算されるのでしょうか。本章で詳しく解説します。
(1) 物損事故とは?
交通事故を起こしたら、被害の大小にかかわらず、必ず警察への届け出をしなければなりません。
そして、警察に届け出た交通事故は、「物損事故」と「人身事故」の、いずれかに分類されます。
物損事故とは、被害が「物」の損害にとどまり、人的損害が発生していない交通事故形態です。
「人身事故」は、人をケガさせたり死亡させてしまったり、というように、人的損害が発生している交通事故形態のことをいいます。
【物損事故と人身事故】
・ 被害者にケガなし … 物損事故
・ 被害者にケガあり … 人身事故
物損事故と人身事故の分類は、上記のルールが原則ですが、被害者にケガがあれば必ず人身事故として扱われるのかというと、そうとも限りません。
交通事故を人身事故として扱うには、被害者がその旨の届け出をする必要があります。
被害者が人身事故の届け出をしなければ、被害者にケガがあったとしても、物損事故として扱われるのです。
一方、賠償について話ができているなど、被害者との関係が良好である場合、人的損害があったとしても、物損事故として処理してもらえる可能性があります。
(2) 物損事故は原則として違反点数の加算なし
では、物損事故を起こした場合、どのくらいの違反点数が加算されるのでしょうか。
実は、物損事故は、「違反点数の加算なし」が原則です。
運転免許の停止処分や取消処分は、累積違反点数に応じて科せられるものですので、違反点数の加算がない以上、これらの処分を受けることもありません。
ただし、事故の態様や原因、被害の程度によっては、違反点数が加算されるケースがあります。
(3) 物損事故で違反点数が加算される場合
物損事故で違反点数が加算されるのは、下記3つのケースです。
当て逃げをした
建造物を損壊した
事故原因が交通違反だった
違反点数は、「基礎点数 + 付加点数」により算出されます。
① 当て逃げをした
物損事故を起こしたにもかかわらず、警察への通報などをすることなくその場から逃げた場合には、以下のとおり合計7点の違反点数が加算されます。
「安全運転義務違反」による基礎点数:2点
「物損事故の場合の危険防止等措置義務違反」による付加点数:5点
② 建造物を損壊した
交通事故によって家を壊すなど、建造物を損壊してしまった場合も、違反点数が加算されます。
加算される点数は、以下のとおりです。
「安全運転義務違反」による基礎点数:2点
「建造物損壊事故」による付加点数:3点もしくは2点
建造物損壊事故による付加点数は、不注意の程度によって異なります。
不注意の程度が重いときは3点、不注意の程度が軽いときは2点です。
③ 事故原因が交通違反だった
物損事故の原因が交通違反であった場合、その行為に対して違反点数が加算される場合があります。
例えば、酒酔い運転が原因で建物に衝突し、外壁を大きく損壊してしまったとしましょう。
本ケースでは、以下の違反点数の合計38点が加算されます。
酒酔い運転による基礎点数:35点
建造物損壊事故による付加点数:3点
加算される基礎点数が大きい交通違反には、下記のようなものがあります。
交通違反の種類
基礎点数
酒酔い運転
35点
酒気帯び運転
(呼気1L中のアルコール量0.25mg以上)
25点
酒気帯び運転
(呼気1L中のアルコール量0.15mg以上0.25mg未満)
13点
無免許運転
25点
速度超過50km以上
12点
2、物損事故で違反点数が加算された場合の運転免許への影響
日本では、運転免許について「点数制度」が採用されています。
交通違反をしたり、交通事故を起こしたりしたドライバーに対して、違反点数を加算し、違反点数の累積が一定の点数に達した場合に、運転免許の停止処分や取消処分が科されます。
では、物損事故で違反点数が加算された場合、運転免許にはどのような影響があるのでしょうか。本章で詳しく解説します。
(1)前歴なしならば累積6点で免許停止処分
運転免許に関する行政処分(停止処分・取消処分)は、前歴の有無と累積違反点数に応じて決まります。
「前歴」とは、過去3年以内における免許停止・免許取消の処分を受けた回数のことです。
「累積違反点数」とは、過去3年以内に加算された違反点数を合算したもののことを意味します。
①免許停止処分
累積違反点数に応じた免許停止処分の基準とその期間は、下記の通りです。
【免許の停止の基準と期間】
前歴
累積点数
免停期間
なし
6点~8点
30日
9点~11点
60日
12~14点
90日
1回
4点~5点
60日
6点~7点
90日
8点~9点
120日
2回
2点
90日
3点
120日
4点
150日
3回
2点
120日
3点
150日
4回以上
2点
150日
3点
180日
例えば、当て逃げをした場合、以下の違反点数の合計7点が加算されます。
安全運転義務違反による基礎点数:2点
危険防止措置等義務違反:5点
上記ケースの場合、前歴のない人でも、30日の免許停止処分を受けることになります。
②免許取消処分
累積点数や前歴の有無によっては、免許停止処分よりもさらに重い、「免許取消処分」を受ける場合があります。
免許取消になった場合、欠格期間中は運転免許の再取得ができません。
免許取消の基準と欠格期間は、下記の通りです。
【免許取消の基準と期間】
前歴
欠格期間
5年
4年
3年
2年
1年
なし
45点以上
40点~44点
35点~39点
25点~34点
15点~24点
1回
40点以上
35点~39点
30点~34点
20点~29点
10点~19点
2回
35点以上
30点~34点
25点~29点
15点~24点
5点~14点
3回以上
30点以上
25点~29点
20点~25点
10点~19点
4点~9点
物損事故の原因が酒酔い運転であった場合、「特定違反行為」として、より厳しい処分が科せられます。
前歴にもよりますが、運転免許の欠格期間は最長10年となります。
(2)違反点数・免停の通知はいつ届く?免許停止はいつから?
物損事故により違反点数が加算される場合、1週間~1か月ほどで、「運転免許停止処分出頭要請通知書」または「意見の聴取通知書」が自宅に郵送されます。
この通知書に記載されているのは、下記の内容です。
出頭日時
出頭場所
処分内容、処分理由
持ってくるもの
講習日程
注意事項
指定された日時に出頭場所へ行き、運転免許証を提出したときから「免許停止」となります。
(3)講習を受けることで免停期間を短縮可能
最長で180日間にも及ぶ免許停止処分ですが、「停止処分者講習」を受けることで、免停期間を短縮することが可能です。
受講すべき講習の種類は免停期間によって異なり、短縮できる日数は、講習後に実施されるテストの成績によって決まります。
講習の種類
免許停止日数
成績別の短縮日数
講習時間(日数)
受講費用
優
良
可
短期講習
30日
29日
25日
20日
6時間
(1日)
11,700円
中期講習
60日
30日
27日
24日
10時間
(2日)
19,500円
長期講習
90日
45日
40日
35日
12時間(2日)
23,400円
120日
60日
50日
40日
150日
70日
60日
50日
180日
80日
70日
60日
配信: LEGAL MALL