災害時に不足しがちなビタミンや食物繊維などの栄養素、どう補う?食品備蓄は栄養のバランスも考えて

災害時に不足しがちなビタミンや食物繊維などの栄養素、どう補う?食品備蓄は栄養のバランスも考えて

ビタミン

多くの場合、避難所での食事提供は、おにぎりやパンなどの炭水化物に偏ります。脳や体を動かすエネルギー源として炭水化物が欠かせないこともありますが、大規模災害が発生した時には肉や魚、野菜や果物などの生鮮食品が手に入りにくくなるということも、理由の一つです。

しかし、炭水化物を効率よく体の中でエネルギーに変えたり、健康を維持するためには、ビタミンも摂取することが欠かせません。

ビタミンは、水溶性と脂溶性に大きく分けられます。
普段の暮らしの中で、野菜や果物などから摂取しているビタミンCや、豚肉や大豆製品から摂取しているビタミンB1、卵や納豆などから摂取しているビタミンB2、葉物野菜などから摂取している葉酸などが水溶性のビタミンで、体の中にためておくことができないため、積極的に摂っていくことが必要な栄養素です。

ビタミンCは、ストレスに対抗するアドレナリンの生成に不可欠な栄養素ですが、不安や疲労などのストレスにさらされることで急速に消費されます。ビタミンCは肌の健康に必要な栄養素のイメージが強いですが、免疫力を高めたり心疾患予防などのためにも、必要な栄養素なのです。また、不足すると歯茎や粘膜からの出血をまねくことがあります。

ビタミンB1とビタミンB2は、ともに代謝をうながす栄養素です。ビタミンB1は糖質(炭水化物)の代謝を、ビタミンB2は糖質・脂質・たんぱく質の代謝を助けます。皮膚や粘膜、髪や爪などの細胞の再生に役立つビタミンB2は、不足すると口内炎や口角炎を引き起こしたり、傷が治るまでに時間がかかるようになります。子どもの成長促進にも必要な栄養素です。

ビタミンは、サプリメントもたくさん市販されています。日常的にサプリメントを飲む方は、ローリングストックしておくと、災害時にも役立ちます。サプリメントを飲む習慣のない方や、サプリメントを飲むことに抵抗がある方など、出来る限り食品から摂りたいと考える方も多いはずです。もちろん、サプリメントを飲む習慣のある方も、サプリメントに頼るばかりでなく、食品からも摂取できるのが理想的です。

備蓄食としては、缶詰で備えておくのが良いでしょう。果物の缶詰は、シロップまで飲むことができるため、災害時には水分補給も兼ねられます。果物の缶詰のシロップの甘さは、非常時に溜まる疲労感を、気持ちの上でもやわらげてくれるかも知れません。
果物の缶詰だけでなく、ツナ缶やおつまみになるように調理された缶詰にもビタミンが含まれています。

缶詰に比べると賞味期限は短くなりますが、ドライフルーツやアーモンドなどでも、ビタミンCやビタミンB1、ビタミンB2が摂取できます。乾燥させたスナックの納豆も市販されています。携帯しやすく、手軽にビタミンが摂れる食品です。

野菜ジュースも、防災備蓄用に賞味期限が長めのものがあります。ローリングストックしておくと良いでしょう。

ジャガイモにも、ビタミンCが豊富です。レトルトの野菜スープでももちろんビタミンが取れますが、レトルトのビシソワーズスープ(ジャガイモの冷製スープ)なら、もともと冷やしてのむ料理なので、災害時の温めることが難しい環境の中でも美味しくいただけます。また、じゃがいもベースのスナック菓子は、砕いてパスタやアルファ米にトッピングしたり、お湯などで溶かしてポテトサラダやマッシュポテトなどのようにして食べることもできます。

他に、ビタミンC 入りの飴なども、ローリングストックしておくと良いでしょう。

食物繊維

カップ麺やおにぎりなどに食事が偏ると、食物繊維も不足する栄養素の一つです。食物繊維は、普段の暮らしでも、日本人にとって不足しがちな栄養素とも言われています。
食物繊維は、水に溶ける水溶性食物繊維と、溶けにくい不溶性食物繊維に分けられます。水溶性食物繊維は、糖質の吸収を穏やかにし、血糖値の急激な上昇を抑えてくれるほか、コレステロールなどを吸着して体の外へ排泄します。お腹の調子を整える効果もあります。
不溶性食物繊維も、お腹の調子を整え、便通を促します。また、よく噛んで食べることで、満腹感が得られたり、唾液の分泌も増えて口腔内の細菌の繁殖を抑えてくれて、虫歯や歯周病の予防にも効果があると言われています。口の中を清潔に保つことは、肺炎の防止にもつながります。
食物繊維は、便通だけでなく、健康をたもつために、必要な栄養素なのです。

食物繊維は、ごぼうやセロリ、切り干し大根などの野菜や、玄米、わかめやひじきなど海藻類、椎茸やキクラゲなどのキノコ類に多く含まれています。
野菜やきのこ類などは、不溶性食物繊維。海藻類には、水溶性食物繊維が含まれています。

食物繊維を摂取するための備蓄食として、おすすめなのが、豆の水煮缶詰と切り干し大根、そしてオートミールです。そのまま食べられる海苔もローリーングストックしておくと良いでしょう。

大豆は乾物の状態でも長期保存でき、備蓄食として適していますが、浸水時間や調理時間がかかってしまうことが、不便なところです。乾物の大豆を備蓄しておくなら、潰した大豆を乾燥させた「打ち豆」なら、煮る時間は10分程度ですみます。大豆はビタミンB1とビタミンB2も豊富です。ゆで汁に栄養素が出てしまうので、煮汁ごとお味噌汁やカレーなどにするのが良いでしょう。

豆の水煮缶詰も、大豆やひよこ豆、レッドキドニーなど、いろいろな種類のものが市販されています。ひよこ豆と青えんどう、レッドキドニーがミックスされた、ミックスビーンズの缶詰もあります。
水煮缶詰なら、調理しなくても、そのまま食べられます。ツナ缶などと和えてマヨネーズで味付けしたサラダにすれば、満腹感が得られるおかずになります。他の野菜が手に入れば、サラダのトッピングにもなります。ベーコンなどと炒めたり、洋風のスープの具としても使えます。

切り干し大根は、煮物にするイメージが強いと思いますが、火を通さなくても15分〜20分程度水に戻してマヨネーズなどで味付けをすれば、サラダとして食べられます。また、戻した水にもビタミンなどの栄養素が出ているので、お味噌汁などの汁物として活用できます。

オートミールは、オーツ麦を脱穀して、加工したもの。オートミールに砂糖や蜂蜜などで甘味をつけ、植物油を混ぜてオーブンで焼いたものが、グラノーラです。食物繊維は白米の約20倍多く含まれていて、たんぱく質やビタミン、カルシウムや鉄分、炭水化物も摂取することができます。
グラノーラであれば、調理せずにそのまま食べることができます。
オートミールは、そのまま食べることはできませんが、水を入れて3分〜5分ほど煮ると、お米と同じように使えます。水を入れて煮たオートミールは、コンソメと野菜スープなどと一緒に煮てリゾット風にしたり、鰹節と醤油を混ぜておにぎりのようにしたり、ツナ缶やおつまみ缶詰などと合わせて炒めてチャーハン風にすることもできます。

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