【対談】今すぐ読みたい、炊飯器のおいしい解説書。

お米を水につけ置きするのは、昔の常識?

樋口:お米を洗ってから水につけておく時間は、夏場なら30分、冬場なら2時間と言われてきました。でも、家事が忙しい中で浸水時間をとれないという方も多いと思います。

塚原:お米を洗ってからすぐに炊いても、おいしいごはんを食べたい。そんな声から生まれたのが「旨み熟成浸水」という機能です。お米の旨み成分であるアミノ酸がつくられる45~55℃の温度帯で浸水させながら前炊きしてあげることで、長時間浸水しておかなくても旨みを十分に引き出すことができる技術を開発しました。

樋口:炊飯器というと、火力の強さや保温性能が注目されることが多いですが、「旨み熟成浸水」によって浸水の必要がないというのは新しい発見です。

塚原:浸水の温度帯は、炊き上がったごはんの甘み(糖分)の量にも関係します。45~55℃まで水温を上げると、お米の酵素がよく働き、でんぷんを分解して、甘みを増やすのです。

樋口:水につけるひと手間をなくすだけでなく、おいしさの工夫にもなっているわけですね。

冷めたごはんに、炊飯器の実力が出る。

樋口:これまでの炊飯器は、炊きたてのごはんがもっともおいしく、その後、味が落ちていくというのが常識だったように思います。私が注目するのは、時間が経って冷めたときのおいしさ、お米の芯まで十分に糊化できているかどうかです。炊きたてでは気づきにくいですが、時間が経過して冷めたときによくわかります。

塚原:さすがですね。「Wおどり炊き」は、圧力をかけ、お米を対流させながら高温で炊き上げます。そのため、でんぷんの中までしっかりと水と熱が入り込み、時間が経って冷めた後も、でんぷんが老化しにくいという特徴があります。

樋口:昔のかまどは、わらや新聞紙をくべてから釜を下ろすまでの時間で、お米を強火で“焼きしめて”いました。この炊飯器では、高温スチームを利用していますね。

塚原:かまどは、おこげができるまで強火で加熱することで、ハリのある食感とおいしさを作り出すのですが、炊飯器でおこげができると食べるところが減ってしまいます。そこで開発されたのが220℃IHスチームです。

樋口:220℃ですか。お米を焼く感覚ですね。スチームというと蒸すイメージがあり、「お米が水っぽくなるのでは」と心配する方もいるかと思いますが、過熱水蒸気で焼く手法は業務用のオーブンなどでは一般的に使われていますね。冷めてもおいしいごはんが炊けるのは、この高温のスチームも貢献しているということでしょうか。

塚原:はい。旨みをコーティングしてハリを出していきます。

対談会場では「おどる」炊飯器と「おどらない」炊飯器による食べ比べを実施

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