かつてあった尊属殺人罪とは?規定がなくなった理由と親殺しの刑罰

かつてあった尊属殺人罪とは?規定がなくなった理由と親殺しの刑罰

5、殺人罪の量刑はケースバイケース!罪に問われたときは弁護士に相談を

親殺し事件にせよ、第三者を殺害した事件にせよ、量刑はケースバイケースです。

事案の内容次第で、死刑となる可能性もあれば、執行猶予が認められる可能性もあります。

もしも、ご自身や身近な方が殺人罪に問われてしまったときは、弁護士へのご相談をおすすめします。

相談するだけでも、量刑の見通しや、刑事裁判を見据えた対処法についてアドバイスが得られます。

弁護士に依頼すれば、接見で取り調べへの対応方法をアドバイスしてもらえますし、被害者側遺族との示談交渉も代行してくれます。

刑事裁判でも、有利な情状をはじめとする減刑要素を主張・立証してもらえます。

妥当な量刑判断を得るためには、早めに刑事弁護の経験が豊富な弁護士に私選で依頼し、サポートを受けた方がよいでしょう。

尊属殺人罪に関するQ&A

Q1.尊属殺人罪とは

尊属殺人罪とは、自己または配偶者の直系尊属を殺害した犯人を、通常の殺人罪よりも重く処罰する犯罪のことです。

かつては刑法に規定されていましたが、長年にわたって死文化し、現在では削除されています。したがって、現在の日本の法律に尊属殺人罪という規定はありません。

Q2.尊属殺人罪の規定がなくなった理由

尊属殺人罪の規定がなくなったのは、単に時代の背景が変化したといった理由だけでなく、さらに切実な理由によるものです。

①平成7年に刑法から削除

尊属殺人罪の規定は、昭和48年に最高裁判所で「憲法第14条1項に違反するため無効である」という判決が下されました。

その後も刑法上に規定は残り続けましたが、最高検察庁からの通達により適用されなくなり、事実上、この規定は死文化したのです。そして、平成7年から施行された改正刑法において、正式に第200条の規定が削除されました。

②理由は通常の殺人罪と比べて刑罰が重すぎるから

なぜ尊属殺人罪の規定が削除されたのかというと、通常の殺人罪と比べて刑罰が重すぎたからです。

通常の殺人罪なら法定刑の下限が「5年以上の懲役」(平成16年刑法改正以前は法定刑の下限は3年以上の懲役)なので、減刑を考慮すると有罪となっても執行猶予がつくケースもあります。

一方、尊属殺人罪では法定刑の下限が「無期懲役」なので、最大限に減刑しても執行猶予を付けることはできません。

しかし、尊属殺人の事案でも、執行猶予をつけなければ被告人にとって酷となるケースはあり得ます。

むしろ、親子間のしがらみを背景として、通常の殺人の事案よりも被告人に情状酌量すべきケースも少なくありません。

それにもかかわらず、殺害した相手が尊属だということだけで、執行猶予が認められないのは不合理だと言われていたのです。

Q3.現在における親殺し事件の刑罰の傾向

それでは、尊属殺人罪の規定がなくなった現在において、親殺し事件にはどのような刑罰が科せられているのでしょうか。

・一般的な殺人事件よりも刑が軽いことも少なくない

当然ながら、尊属を殺害したという理由で刑罰が加重されることはなくなっています。

被害者が尊属なのか第三者なのかということよりも、どのような動機や経緯で殺害に至ったのか、どのような方法で殺害したのか、といった事案の内容が重視されて、刑罰が決められています。

その点、情愛で結ばれているはずの親子間で殺人が起こる場合、やむにやまれぬ葛藤があり、第三者を殺害した事案とは比較にならないほど特別な情状が、背景にあることが多いものです。

そのため、親殺し事件では一般的な殺人事件よりも刑が軽いことも少なくありません。

ただし、そもそも殺人事件の法定刑は非常に幅が広く、量刑は事案の内容によって大きく異なります。

親殺し事件だからといって一般的に量刑が軽くなるわけではなく、重い刑罰が科せられた事例も数多くあります。

とはいえ、尊属殺人罪の規定が適用された場合に比べると妥当な量刑が可能になったことは間違いありません。

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