「県民共済は安くて安心」は本当!? 老後の意外な落とし穴とは

県民共済は掛け金が一律で、プランも比較的シンプルな設計であることから「安くて安心」というイメージを持つ人も多くいるでしょう。しかし、85歳以降は1円の保障もないことをご存じですか? 本記事では、老後に慌てないためにも、知っておきたい県民共済の「意外な落とし穴」について解説します。

県民共済の魅力

一般的な民間保険の場合、年齢が上がれば上がるほど保険料も高くなります。一方、県民共済は掛け金が一律なので、家計の負担を軽減するメリットを感じやすいといえます。特に年配の方にとって県民共済は、「安くて安心」というイメージが強いかもしれません。また、県民共済は掛け捨てですが、決算の際に返ってくる「割戻金」があります。

 

「熟年型共済」の落とし穴

次に、県民共済の保障内容はどうなっているのか、都道府県民共済グループの発祥の地でもある、埼玉県の県民共済を例に取って見てみましょう。

 

埼玉の県民共済は加入する年齢によって3つのコースが用意されており、0~14歳の「こども共済」、15~64歳の「新型・県民共済」「医療・生命共済」、65~69歳の「熟年型共済」があります。

 

保障額がだんだん減少

このうち、シニア向けの「熟年型共済」には注意点があります。

 

「熟年型共済」は病気やけが(交通事故も含む)による入院・後遺障害・死亡の保障がついています。65~69歳までの健康な人であれば加入可能です。満85歳になるまで保障が自動継続し、更新手続きの必要がないことをメリットとしてうたっています一方、保障額は年齢が上がるごとに徐々に減少します(図表1)。

 

図表1

 

 

埼玉県民共済 熟年型共済を基に筆者作成

 

さらに、病気で入院した場合、本来1日目から124日目まで出る保障が、70~85歳は1回の入院につき44日分が限度となります。

 

85歳以降の保障はない

そして、「熟年型共済」の保障は85歳までです。言い換えれば、85歳を過ぎると1円も保障がおりなくなるということです。

 

厚生労働省の患者調査の概況(2020年)によると、入院患者数は65歳を過ぎると増加ペースが上昇し、85歳で10万人あたり4634人、90歳以上では同6682人となっています。年齢を重ねるごとに入院のリスクが上昇することを考えれば、85歳以降に保障が打ち切られることは、加入の際に十分留意する必要があると言えます。

 

85歳から民間の保険会社を探しても、持病のために加入ができない可能性があります。また、加入できたとしても高齢のため保険料がかさみがちです。資金面で余裕があるのであれば、払い込みを60歳や65歳など短期間ですませられる民間終身医療保険への加入を、できるだけ早い段階で検討するのも選択肢の1つです。

 

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