73歳の父が「年金だけ」では暮らせないので、年間120万円援助しています。これも「贈与税」の対象ですか?

高齢者の貧困が社会問題となっている昨今、子が親の生活費を援助するケースもあるようです。しかし、親に対してお金を渡す行為は贈与に当たります。もし、自分の親に生活費の資金援助をした場合、それは贈与税の課税対象になるのでしょうか。年金だけで暮らせない、73歳の父親を援助する例を基に、考えていきます。

原則として生活費としての援助は贈与税がかからない

原則として、贈与税は親子間であっても生じ得ます。具体的には、1年間で贈与を受けた財産の合計額が110万円を超えた場合には、贈与税が発生します。

 

しかし、贈与税には一定の例外事由が定められています。その一つに、生活費に充てるために扶養義務者から受け取った財産があります。扶養義務者とは、ある人が自力で生活できないときに、その人を経済的に支援する義務を負う人です。

 

扶養義務は親子や兄弟姉妹間など近しい親族の間で発生するものです。多くの方は扶養義務について、親から子へ発生するものと思っているかもしれませんが「子から親へ」という場合でも扶養義務は生じます。

 

扶養義務に基づく生活の援助は「何円までであれば贈与税が非課税となる」という金額は具体的に決まっていません。

 

そのため、年間で200万円でも300万円でも、それが生活援助に通常必要と認められる金額であれば、贈与税の対象とはなりません。当然、離れて住む父親に年間で120万円を支援しても、贈与税は発生しません。

 

なお、扶養を受ける側に年金収入があっても、それだけでは生活できない場合は、贈与税の対象となることなく、生活費の援助を受けることができます。

 

生活費として使われていない場合は、贈与税が生じる

仮に生活費として贈与をしていた場合であっても、贈与税が発生する場合もあります。それは、生活費として贈与されたお金が、実際には生活費として使われていなかった場合です。生活費であることを理由に贈与税を免除されるには、それが都度「生活費」として消費されることが必要であるからです。

 

例えば、子から親に対して120万円を生活費として贈与した場合であっても、親がそれを貯蓄していたとしたら、贈与税の課税対象となりうるということです。

 

また、数年分といったように生活費をまとめて贈与した場合は要注意です。その場合、使われていない部分は「都度生活費に充てられていない」として、贈与税が発生してしまいます。

 

そのため、多少手間がかかったとしても、毎月の生活費となる金額分を都度贈与するべきです。

 

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