【闘病】痩せるのになぜかお腹だけが膨れる…『ステージ3の卵巣がん』を乗り越えられた理由

【闘病】痩せるのになぜかお腹だけが膨れる…『ステージ3の卵巣がん』を乗り越えられた理由

なんだかいつもと違う不調を感じて病院を受診するも、腸炎と診断。しばらく経つと、体重は減っているのにお腹がどんどん膨れてくる……というところから、「ステージ3の卵巣がん」であることが発覚した谷井さん。抗がん剤治療や手術など辛い闘病生活を乗り越えられた理由はなんだったのでしょうか? 詳しくお話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年12月取材。

体験者プロフィール:
谷井 亜矢子(仮称)

夫と二人暮らしの50代女性。2020年2月頃から腹痛や下痢などお腹の不調を感じており、消化器内科を受診したが腸炎と診断された。その後の2カ月以上不調が継続したため、婦人科を受診したところ「卵巣がん」との告知を受けた。その後、抗がん剤治療と2度の手術を経て、2023年11月に治療が終了。

記事監修医師:
吉田 悠人
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

何カ月も続くお腹の不調 原因はまさかの「卵巣がん」

編集部

はじめに谷井さんの発症した卵巣がんとはどのような病気か教えてください。

谷井さん

卵巣がんは女性特有のがんで、40代から患者数が増加して50~60代がピークになるとされています。初期症状や自覚症状はほとんどなく、腫瘍が大きくなるとお腹の張りや腹痛、腰痛、吐き気、便秘などの症状が現れます。私の場合も、腹痛や下痢、お腹の張りを感じていて、それは卵巣がんの症状だったのだと後になってわかりました。

編集部

では、谷井さんの病気が判明した経緯を教えてください。

谷井さん

告知を受ける2カ月ほど前から、ずっと下痢と腹痛が続いていました。2020年3月頃には消化器内科を受診し、腸炎と言われて抗生物質を処方されました。その当時体重減少とお腹の不調を感じていたものの、消化に良いものばかり食べているせいと決めつけていました。しかし、痩せていくのにお腹だけがどんどん膨れ始め、腹痛で夜も眠れず。そこで別の病院の消化器内科を受診したところ、「原因は卵巣にある、すぐに婦人科を受診するように」と言われたのです。MRI・CT検査、腹水穿刺などを行い、その日のうちに「ステージ3以上の卵巣がん」と告知されました。

編集部

かなりの急展開だったと思いますが、告知の時の心境はどのようなものでしたか?

谷井さん

それが、意外と冷静でした。検査されている時からなんとなく予感はありましたし、あっという間に決まっていったのが逆に良かった気がします。何より、主治医の説明が前向きだったのもあり、家に帰ってから夫に「治せばいいんだよね」と笑顔で言ったことをよく憶えています。私よりも夫のほうが辛そうで、精神的には患者本人より家族のほうが大変なことが多いのだろうとその時感じました。

編集部

治療内容については、どのような説明がされましたか?

谷井さん

医師からは「腹水がかなり溜まっている。腹膜播種を起こしており、すぐに手術できない」との説明を受けました。そこで、まずは抗がん剤治療を行って手術できる状態までがんを小さくし、その後に手術することを目指すとのことでした。主治医から、「卵巣がんは抗がん剤が良く効くので心配しなくていいよ」と励ましてもらいました。

編集部

それから抗がん剤治療が始まったのですね。

谷井さん

はい。告知の2日後に入院して、その翌日から抗がん剤治療が決まりました。具体的な治療スケジュールとしては、術前のTC療法(パクリタキセル・カルボプラチン)を4クール行い、2020年7月に手術を実施しました。そして、8月から術後TC療法を6クール行った後、分子標的薬のリムパーザの内服開始というスケジュールでした。

編集部

抗がん剤治療による体調、生活での変化はありましたか?

谷井さん

TC療法は3週間毎に点滴するのですが、私の副作用の場合は点滴後の1週間が特にきつく、動けない日もありました。なので、その期間だけは病気と完全に向き合う生活になり、副作用が治まってからは次の抗がん剤治療日まで楽しく過ごすことを考えていました。治療中はとにかく「楽しむ」と「頑張る」という気持ちのスイッチを使い分けましたね。

内服治療中に卵巣がんの再発を経験

編集部

治療はどのように進みましたか?

谷井さん

術後の2021年2月頃にリムパーザの内服を開始しましたが、その1年後の2022年2月に卵巣がんの再発が発覚しました。

編集部

再発されたのですね。2回目はどのような治療が行われたのですか?

谷井さん

定期的に病院を受診していたこともあり、再発の発覚から1カ月後には手術を行いました。術後の経過が落ち着いた4月頃からは以前のTC療法に加え、血管新生阻害薬という分子標的薬の一種である「Bev(ベバシズマブ:製品名アバスチン)」も追加されました。

編集部

こちらも1回目と同じくらいの期間続いたのですか?

谷井さん

TC+Bev療法は6クール続き、その後はアバスチン単剤での治療が18クールでした。そして、2023年11月に無事アバスチン治療が終了となりました。

編集部

治療のない状態は非常に嬉しいですね。

谷井さん

初発、再発と続いていたので、約3年半ぶりに治療のない生活が戻ってきたことになります。嬉しい気持ちもある反面で、「本当に薬を飲まなくていいの? 治療しなくていいの?」と少しだけ不安な気持ちもあり、複雑です。

編集部

治療の副作用や現在の体調面はいかがでしょうか?

谷井さん

今でも治療の影響で、副作用の関節炎や足のしびれが残っていますが、それ以外は元気に過ごせていて嬉しい限りです。再発の心配があるので、今後も1年間は月1の診察と半年に1度のCT検査が続きますが、趣味のカメラやキャンプ、愛犬とのお出かけを思い切り楽しもうと思っています。

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