「大腸がん」発症に“口腔内細菌”が産生する物質が関係していた! 東大病院らが発表

「大腸がん」発症に“口腔内細菌”が産生する物質が関係していた! 東大病院らが発表

東京大学医学部附属病院らの研究グループは、大腸がん発生初期段階と口腔内細菌が産生する物質の一種が密接に関与することを明らかにしたと発表しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。

監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

発表した研究内容とは?

東京大学医学部附属病院らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。

甲斐沼先生

今回紹介する研究は、東京大学医学部附属病院らの研究グループによるもので、学術雑誌の「Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology」に掲載されています。

これまで、大腸がんは腸内細菌や口腔内細菌が大きく関与していることが知られてきています。特にフソバクテリウム・ヌクレアタムやアクチノマイセス・オドントリティカスという口腔内細菌も大腸がんの発がん初期段階の患者の便に特徴的に多く存在することが分かっています。

そこで研究グループは、「アクチノマイセス・オドントリティカスが大腸がんの発症に直接的に関与している」という仮説を立て、研究を実施しました。その結果、アクチノマイセス・オドントリティカスが大腸上皮細胞で炎症を引き起こすことを明らかにしました。このメカニズムは、アクチノマイセス・オドントリティカスが放出する膜小胞(Membrane vesicles:MVs)が大腸上皮細胞の炎症を招き、さらにはDNA損傷も引き起こしているとのことです。研究グループは「大腸がんにおける腸内細菌の役割に関する研究の発展や、新規治療法や診断法の開発の基盤になる可能性がある」とコメントしています。

大腸がんとは?

今回の研究テーマになった大腸がんについて教えてください。

甲斐沼先生

大腸がんは大腸に発生するがんで、良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものに分類されます。日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。大腸の粘膜に発生した大腸がんは大腸の壁に深く侵入し、大腸の壁の外まで広がり腹腔内に散らばります。さらに、リンパ節転移や血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に遠隔転移することもあります。早期では自覚症状はほとんどありませんが、代表的な症状として血便や下血が見られます。また、進行してくると腸閉塞となり、便が出ずに腹痛や嘔吐などの症状が起こります。⼤腸がんは男性では11⼈に1⼈、⼥性では13⼈に1⼈が⼀⽣に⼀度は罹患するといわれています。

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