「盲腸癌の予後」はご存知ですか?症状や虫垂炎との見分け方も解説!【医師監修】

「盲腸癌の予後」はご存知ですか?症状や虫垂炎との見分け方も解説!【医師監修】

大腸がんのうち、盲腸にできるがんを「盲腸癌」といいます。もし盲腸癌と診断されたら、どのような予後が予測されるのでしょうか。

この記事では、盲腸癌のステージと予後・治療方法のほか、大腸がんでは部位ごとにどのような症状がみられるかについても解説していきます。

記事の後半では盲腸癌と虫垂癌の見分け方・早期発見の方法などについても触れるので、気になる症状がある方もぜひ参考にしてください。

≫ 「大腸がんのステージ別」の症状・余命・生存率はご存知ですか?医師が解説!

監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

盲腸癌の予後

大腸がんの進行度はステージ0~4までの5段階に分類されます。ステージを決定する際に指標となるのは下記の3因子です。

T因子:がんが表層粘膜からどれくらい深く広がっているか

N因子:リンパ節に転移しているか

M因子:がんがほかの臓器に遠隔転移しているか

まずは、それぞれのステージがどのような状態なのか、予後の指標となる「5年生存率」は何%になるのか解説します。盲腸癌に限定した統計は少ないので、今回お伝えするのは盲腸癌を含む「結腸がん」の5年生存率です。

ステージI

ステージ0とは、がんが大腸の内側を覆う粘膜だけにとどまり、リンパ節・他臓器に転移がみられない状態です。この段階での5年生存率は93.0%となっています。大腸の粘膜下には「粘膜下層」があり、さらに下には「固有筋層」と呼ばれる臓器を蠕動させる筋肉の層があります。
がんが粘膜より下に進行しているものの、粘膜下層~固有筋層にとどまり転移はみられない状態がステージ1です。ステージ1では5年生存率が92.3%となります。

ステージII

前述のとおり、固有筋層の内側には粘膜があります。それに対して、固有筋層の外側を覆っているのが漿膜(しょうまく)という薄い膜です。大腸の漿膜は「腹膜」とも呼ばれ、こちらの呼称のほうが患者さんにとってはなじみがあるかもしれません。
がんが固有筋層を超えて漿膜まで広がっているものの、転移がみられない段階をステージ2とします。ステージ2の5年生存率は85.4%です。

ステージIII

ステージ3は、がんが粘膜下層から下まで広がっており、なおかつリンパ節転移がみられる状態です。がんの深さ・リンパ節転移の数により、ステージ3はさらに3a~3cの3段階に分かれます。
同じステージの中でも3aの5年生存率は80.4%なのに対し、3bは63.8%と急激に5年生存率が下がるといわれています。

ステージIV

ステージ4は、がんの深度に関わらず遠隔転移がみられる状態です。
がんは臓器の外側にある漿膜まで広がり隣接する臓器に転移することもありますが、遠隔転移とはがん細胞がリンパ・血液の流れに乗って離れた臓器に転移することをいいます。ステージ4の5年生存率は19.9%です。

盲腸癌の治療方法

大腸がんの治療方法は、大きく手術・化学療法に分かれます。がんの進行度・手術前後の状態などを踏まえて、より効果的と考えられる方法を選択していきます。

手術

盲腸癌と聞くと、大腸の端に小さく飛び出した「虫垂」を想像して「盲腸癌でも、ほかの大腸がんと同じような治療ができるのだろうか」と疑問を抱く方もいるかもしれません。
虫垂炎のことを「盲腸」と呼ぶことがあるので混同されやすいですが、盲腸と虫垂は別の部位です。小腸からみて大腸の始まりの部分を盲腸と呼び、この盲腸から虫垂が出ています。
そのため、盲腸癌もほかの大腸がんと同じく粘膜下層の浅い部分にとどまっていれば内視鏡治療が適応となる可能性が高いでしょう。また、がんが粘膜下層の深い部分に及んでいる場合は内視鏡ではがんを取りきれないため、手術による治療が第一選択となります。
手術の主な方法は腹腔鏡手術・開腹手術です。手術では盲腸にできた腫瘍を取り除くだけでなく、転移の予防・検査のため周囲のリンパ節を郭清することもあります。

化学療法

化学療法は、抗がん剤などを使用してがん細胞を攻撃し、増殖を抑えたりがんの範囲を縮小させたりする治療です。化学療法の目的は下記の2つに分かれます。

手術ができない場合の症状緩和・延命

手術を終えたあとの再発予防

がんが広い範囲に広がり手術では取りきれない場合は、手術による負担が大きく、得られる効果に見合わないため「手術ができない」と判断されることがあります。このようなときに行うのが、症状緩和・延命をねらった化学療法です。
一方、手術で盲腸癌を切除した後であっても再発・転移のリスクが高いと判断された場合、再発・転移を防ぐ目的で「補助化学療法」を行います。化学療法は入院して行う場合もありますが、外来での化学療法も可能です。
また、点滴のイメージが強いかもしれませんが抗がん剤には内服するタイプもあります。

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