「肝臓がんを疑う顔色」はどんな色かご存知ですか?症状や治療法も解説!

「肝臓がんを疑う顔色」はどんな色かご存知ですか?症状や治療法も解説!

肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれ、病気になっても症状が現れにくい臓器といわれています。その肝臓ががんになると「顔色が悪くなる」といわれるのは本当なのでしょうか。

今回の記事では、肝臓がんの概要・顔色が悪くなる理由・治療法などについて解説します。

記事の最後では「肝臓がんと顔色」についてよくある質問についても答えていくので、こちらも併せて参考にしてください。

≫「肝臓がんの前兆となる4つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!

監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

肝臓がんとは

肝臓は右上腹部にある臓器で、取り込んだ栄養素を身体に必要な成分に変える・身体に不要な物質を解毒する・胆汁を作るなどの役割があります。
この肝臓に発生するがんの総称が「肝臓がん」です。

肝臓がんの種類

肝臓がんは、最初にがんが発生した臓器(原発巣)により原発性肝がん・転移性肝がんに分かれます。
原発性肝がんは肝臓から発生したがんで、転移性肝がんは別の臓器に発生したがんが肝臓に転移したものです。原発性肝がんのうち90%は「肝細胞がん」という種類のがんで、そのほかに胆汁を輸送する管から発生する「肝内胆管がん」などがあります。

発生原因

肝臓がんの原因は、多くが肝炎だといわれています。
これまではウイルス性肝炎であるB型肝炎・C型肝炎が原因の中心でした。しかし、近年では治療技術が進みウイルス性肝炎による肝臓がんは減少傾向にあります。
一方、メタボリックシンドロームに起因する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が増加傾向です。このほかの原因としては、アルコールの大量摂取によるアルコール性肝障害や、自己免疫性肝炎などがあります。
いずれの場合も、肝臓が繰り返し炎症を起こし続けるうちに組織が変異し、肝硬変を経て肝臓がんに至ることが多いです。

罹患率と死亡率

1年間に肝臓がんと診断された方の数は、2019年のデータでは3万7,296人で、令和2年の推計患者数は8万9,000人とされています。
また、2020年のデータでは肝臓がんにより亡くなる方は1年間に2万4,839人なので、死亡率は28%ほどです。患者さんの男女比は2:1で、男性のほうが2倍ほど多いことがわかっています。
好発年齢は50歳以降で、50歳を超えた頃から加齢とともに肝臓がんと診断される方の数は増加します。

肝臓がんで顔色が悪くなる状態とは

肝臓がんが進行すると、身近な方・患者さん自身からみて「顔色が悪くなった」といわれることがあります。これは肝臓がんの患者さんによくみられる黄疸という症状です。
では、なぜこのような症状が現れるのでしょうか。

肝機能の低下

肝臓には、ビリルビンという色素を排出する役割があります。ビリルビンは赤血球が定期的に分解される際に生じ、健康な方の体内にも存在する物質です。
通常であれば血中のビリルビンは肝臓を通って胆汁に流入し、十二指腸に分泌された胆汁とともに便・尿の一部となって排出されます。しかし、肝機能が低下するとビリルビンの排出が滞り、血中のビリルビン濃度が上がるのです。
ビリルビンは濃い黄色をしており、血中に蓄積することで白目・皮膚などの組織に沈着します。そのため、肝機能が低下すると白目・皮膚が黄色くなる「黄疸」が起こります。

黄疸が出るときの肝臓がんの進行状況

黄疸は「肝機能がやや低下した」という程度で現れることは少なく、上記のメカニズムにより黄疸がみられた場合は肝臓がん・肝機能障害がかなり進行していると推測されます。
ただし、肝臓がんのなかでも肝内胆管がんの場合は、肝機能低下とは異なるメカニズムで黄疸が現れる場合があります。
これは「閉塞性黄疸」とよばれる種類の黄疸です。閉塞性黄疸の場合は、腫瘍などにより胆管が狭くなり、通過できなかった胆汁が血中に流れ込むことで血中のビリルビン濃度が上がります。
この場合は、胆管を広げるための治療をすると黄疸が改善する可能性があります。

黄疸以外に現れる肝臓がんの症状

肝臓は、病気になっても痛みなどの自覚症状が現れにくい臓器といわれています。
そのため、肝臓がんによる症状は主に肝機能低下による食欲不振・浮腫・倦怠感などです。しかし、肝機能がさらに低下すると黄疸のほか腹水・肝性脳症なども現れます。
また、肝臓がん自体が増大すれば痛みを感じたり、右上腹部に腫瘍を触知できるようになるでしょう。

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