「神経膠腫(悪性脳腫瘍の一種)の余命」はご存知ですか?原因や治療法も解説!

「神経膠腫(悪性脳腫瘍の一種)の余命」はご存知ですか?原因や治療法も解説!

神経膠腫の診断・検査

神経膠腫の診断には、詳細な神経学的検査と画像診断が不可欠です。以下で解説していきます。

神経学的検査

神経膠腫の神経学的検査では、患者さんの運動機能、感覚機能の評価に加えて、認知機能や言語機能などの高次脳機能のチェックが行われます。神経学的検査は医師が直接行うだけでなく、必要に応じて言語聴覚士や臨床心理士が関与することもあります。患者さんの日常生活における機能的な変化や障害の程度を正確に把握し、適切な診断と治療計画の策定に役立てられます。

画像診断(CT・MRI)

神経膠腫の診断において、MRIやCTなどの画像診断が重要な役割を果たします。CT検査は、特に出血や石灰化を確認するのに適しています。一方、MRIは神経膠腫の特徴的な所見を捉えるのに適してます。MRIのT1強調画像で、神経膠腫は低信号(黒く見える)、T2強調画像やFLAIR画像では高信号(白く見える)で描出されます。特に、グレード3や4の悪性神経膠腫では、造影剤を用いることで腫瘍の境界が鮮明になり、周囲の広範な浮腫も確認できます。

しかし、患者さんが造影剤にアレルギーを持つ場合や喘息を持っている場合は、これを事前に医師に伝える必要があります。特にCT検査では、ヨードアレルギーがある場合、副作用のリスクが高まります。神経膠腫の疑いがある場合、画像診断は診断の精度を高め、適切な治療方針の決定に不可欠です。

病理検査

摘出手術や生検術で得られた腫瘍細胞を顕微鏡で観察する病理検査では、がんの種類や性質を特定し、治療方針の決定に不可欠な情報を提供します。診察、神経学的検査、CT、MRI、PET検査などで得られたデータに基づき、神経膠腫の可能性を推測しますが、確定診断には病理検査が必要です。

病理検査結果は、腫瘍の種類、悪性度、および適切な治療法を決定する上で決定的な役割を果たします。近年の分子生物学の進歩により、神経膠腫のより精密な遺伝子的特徴が明らかになっており、個別化医療への道を開いています。

神経膠腫の治療

神経膠腫の治療には、手術、放射線、化学療法が主に用いられます。以下で解説していきます。

外科治療(手術)

神経膠腫の外科治療(手術)は、神経症状の悪化を防ぎながら腫瘍を可能な限り摘出することを目指します。脳腫瘍は細かく分類され、手術前の画像診断だけでは神経膠腫かどうかの判断が困難な場合もあります。手術中に異なるタイプの脳腫瘍であることが判明することもあるため、術中迅速病理診断が可能な施設での手術が望ましいとされています。

また、脳の機能は部位によって異なるため、腫瘍の位置により手術方法が変わります。例えば、右前頭葉のような重要でない部位に発生した腫瘍は、神経症状の悪化なく、摘出可能な場合もあります。しかし、運動野や言語野など重要な機能を担う部位に腫瘍がある場合、摘出によって症状が悪化するリスクがあります。このような場合は、腫瘍の一部を摘出し、分子診断や病理診断を行った後、放射線治療や薬物療法を主体とする治療が行われます。

放射線治療

放射線療法の目的は、腫瘍細胞を放射線によって破壊し、同時に正常細胞へのダメージをできるだけ抑えることです。腫瘍細胞と正常細胞の放射線感受性の違いを利用して、腫瘍細胞を標的とします。放射線治療は手術後の創部が癒合した後に開始されます。放射線治療で期待できる効果は照射線量の増加に比例します。そのため、治療計画に沿った照射を完遂することが非常に重要です。放射線治療は、患者さんの状態や腫瘍の種類、位置に応じて細かく調整され、適切な治療効果を目指します。

薬物療法

神経膠腫の治療における薬物療法は、特にグレード3と4の神経膠腫に対して重要な役割を果たします。グレード3と4段階の神経膠腫では、手術後に放射線治療と並行して薬物療法が行われます。グレード2の場合、全摘出が可能であれば経過観察を行いますが、状況に応じて薬物療法を追加することもあります。乏突起膠腫は星細胞腫よりも薬物療法に反応しやすい特性を持っています。薬物療法は、患者の状態に応じて慎重に調整され、適切な治療成果を目指して行われます。

緩和ケア・支持療法

がん診断は、体の苦痛だけでなく、仕事や経済的な問題、将来への不安など多くの心理的負担を伴います。

緩和ケアは、がんによる身体的な苦痛や治療に伴う社会的孤立感などの心理的な苦痛を軽減するためのケアです。一方、支持療法はがんや治療に伴う副作用、合併症、後遺症を軽減するための予防、治療、ケアを指します。
緩和ケア・支持療法は、がん診断時から開始され、終末期だけでなく治療全体を通じて実施されます。患者さんはいつでもこれらのケアを受けられ、身体的または精神的な苦痛について医師と話すことが推奨されます。
欧米では、早期からの緩和医療の導入が推奨されており、日本でもその重要性が高まっています。療養中も脳神経外科医との連携が重要であり、家族の不安や治療に関する疑問に対応するためにも、緩和ケアチームとの緊密な協力が求められます。

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