「肺がんの生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

「肺がんの生存率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

肺がんの治療方法

肺がんの治療はどのような方法があるのでしょうか。がん組織を手術で切り取る手術療法を始め、放射線治療・薬物療法などのよく知られた治療法の他、分子標的治療やCAR-T細胞療法についても解説しましょう。

手術療法

手術療法はがんがある部位を外科的に切り、取り除く方法です。手術は年齢や体力などのほかの要素も重要な指標となるため、総合的に判断して行われます。
手術法には通常の肺切除術と皮膚を小さく何箇所か切開し肺がおさまっている胸腔内にカメラを入れて画像を見ながら行うハイブリッド胸腔鏡手術の2つの方法があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、また個人によって対象となるかの判断が必要ですので、担当の医師と話し合うようにしましょう。小細胞肺がんの場合には右肺を3つ・左肺を2つに区切る、「肺葉」と呼ばれる大きな塊ごと手術で取り除かれることが多いです。手術療法の後には薬物療法も併用して行われます。

放射線療法

放射線療法は、がんのある部位に放射線を当ててがん細胞を攻撃する方法です。細胞障害性抗がん剤と呼ばれる細胞の増殖を障害するタイプの抗がん剤が使用可能な場合には、放射線療法と合わせて化学放射線療法を行います。

薬物療法

薬物療法は薬でがんを治したり、進行を遅らせたり、症状を抑えたりするものです。小細胞肺がんの場合には主に2種類の薬が使われています。

細胞障害性抗がん剤:細胞が増える仕組みの一部を邪魔してがん細胞を攻撃します。デメリットはがん細胞以外の正常な細胞も影響を受けます。

免疫チェックポイント阻害剤:免疫ががん細胞を攻撃する力をサポートする薬です。

がんが進行している場合には、双方の薬を同時に投与する場合もあります。

分子標的治療

がんの研究によるとがん細胞には正常の細胞と比較してある一定の遺伝子やタンパク質の異常が認められたり増量が見られたりすることがわかってきました。異常が見られる遺伝子をがん遺伝子と呼んでおり、これらによりがん細胞が増殖して臓器などの組織や身体の機能に異常をもたらすことがわかっています。
分子標的治療ではがん遺伝子から作られるタンパク質の働きを抑え、がん細胞が作られにくい環境を整えるように働く治療法です。
そのために、がん細胞の一部や胸水と呼ばれる肺に溜まった水を抜いて遺伝子検査を行い、ターゲットとなる遺伝子が特定できればそれに対する分子標的治療を行うことが可能です。
ただし日本ではまだ承認されていない薬もあり、全てのがん遺伝子に対する薬があるわけではありません。また、治療を行う施設も限られているため、担当の医師とよく相談しておくようにしましょう。

CAR-T細胞療法

CAR-T細胞療法は患者さん自身の白血球の1種である免疫を司るT細胞を取り出し、がん細胞を攻撃するようにCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子を作って患者さんに戻すという免疫療法です。

肺がんの生存率についてよくある質

ここまで肺がんの生存率・症状・治療法・早期発見などを紹介しました。ここでは「肺がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がんの罹患率について教えてください

甲斐沼 孟(医師)

肺がんの罹患率は日本のがん患者の第1位となっている大変症例数の多いがんです。人口10万人あたりの罹患率は約100人(男性約137人、女性約65人)となっています。男性女性ともにがんの上位5位以内には入っています。

肺がんを早期発見するためにはどうしたらよいですか

甲斐沼 孟(医師)

40歳を過ぎたら年に1度がん検診を受けるようにしましょう。大抵の自治体ではがん検診の費用を公費で負担するようになっているため、1部の自己負担で検診を受けることができます。がん検診は問診とレントゲン検査、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×年数)が600以上の場合には喀痰検査を行います。検査結果で精密検査が必要になった場合には、必ず受けるようにしてください。

70代の肺がんの生存率について教えてください

甲斐沼 孟(医師)

70歳の肺がんの生存率はステージ分類・肺がんの種類・治療法によって異なります。またそれだけではなく、その人個人の健康状態や体力などにも大きく左右されます。70歳以上の肺がん患者さんは約3割といわれており、最近の高齢化によりその割合は増加中です。70歳代の肺がん患者さんの場合、まずは肺切除が必要となっても手術に耐えられるのか、術後肺がんだけではなくほかの病気などにより生存率に影響が及ぶこともあります。70歳以上の肺がん外科手術後の5年生存率は42.9%で、69歳以下・80歳以上とほとんど差は見られませんでした。70歳以上の外科手術後のステージIの5年生存率54%、ステージIIの5年生存率40.2%、ステージIIIの5年生存率25.3%で、69歳以下の生存率と大差がなかったとの報告があります。肺内転移があるステージIVに関しては比較した症例群に差があるため、一概にはいえませんが26.7%と若干良好な結果です。

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