「大腸がん手術後の生活」で食べてはいけないものはご存知ですか?【医師監修】

「大腸がん手術後の生活」で食べてはいけないものはご存知ですか?【医師監修】

大腸がん手術後の食事

前述のとおり、大腸がんの手術を終えたら数ヵ月は消化管に優しい食事を心がける必要があります。食事による負担を減らすためにも、食事内容のほかに食事量や食べ方にも注意しましょう。

手術後すぐは消化のよいものから始める

手術後の食事は、負担をかけないように水分やお粥といった消化によいものから始めます。術後5日程度経過してから徐々に普段の食事に戻していきます。
退院後のメニューを考える際には、入院中の食事・栄養士からの指導なども参考になるでしょう。消化管への負担が大きいため、食物繊維が多いもの・油分が多いものは避けてください。
食物繊維を多く含む食品の例では、ゴボウ・山菜・キノコなど繊維質で歯ごたえがあるものが挙げられます。

食物繊維の多いもの・消化の悪いものは避ける

大腸の手術後は、腸閉塞のリスクが高まります。特に術後3ヵ月間は、蠕動運動の低下や傷の癒着などにより、腸閉塞になりやすいです。
そのため、胃・小腸での消化を経ても形が残りやすい食物繊維には特に注意が必要です。前述のような野菜類のほか、煮るとやわらかく噛みやすい海藻・大豆なども、意外に食物繊維が多いため避けることが推奨されます。

ゆっくりとよく噛んで食べる

大腸の負担を減らすためには、食材の選び方と併せて「食べ方」も重要です。食品がなるべく細かい状態で胃腸に入っていくように、ゆっくりとよく噛んで食べましょう。
具体的には、1回の食事は30分以上、一口で20回程の咀嚼が目安です。食べる機能を低下させないために噛むことは重要ですが、もし「たくさん噛むことが負担になる」場合には、調理する段階で細かく刻むと負担を減らすことができます。

食べ過ぎに注意する

食事の内容だけでなく、量によっても消化管への負担は変わります。健康な方の場合は、適切な食事の量は「腹8分目」と表現されることがありますが、大腸がんの手術後は「6分目」を目安に食事量を調整しましょう。

バランスのよい食事を心がける

消化のよさばかり気にかけていると、お粥や素うどんなどが中心になってしまう患者さんがいます。しかし、手術後は徐々に体力を回復させ、1~3ヵ月程をかけて手術前の生活に戻っていくことが目標です。
退院後まもない時期のタンパク質摂取に、卵・はんぺんなどやわらかい食材・食品が役立ちます。またビタミンや食物繊維では、やわらかく煮た野菜や、バナナ・リンゴといった繊維の強すぎない果物を摂るなど、工夫しながらバランスのよい食生活を心がけましょう。

過度の飲酒を避ける

大腸の手術をした場合でも、肝臓の疾患などほかの病気がない患者さんは基本的にお酒を飲むことができます。しかし、アルコールは腸への刺激が強いため、適量を守りましょう。飲酒を始める時期・量は、担当の医師への確認をおすすめします。

大腸がん手術後に注意するべきことは?

ここまで、食事の注意点を解説してきました。では、食事以外の日常生活で注意すべき点はあるのでしょうか。もとの生活への復帰と、術後の受診のポイントを紹介します。

自分の体力に合わせて徐々に手術前の生活に戻していく

大腸の手術を終えた後は「入院で休んでいた分、家事・仕事などに早く戻らなくては」と、焦りを感じる方もいるかもしれません。しかし、患者さん自身への調査では「体力・生活がほぼ手術前の状態に戻ったと感じたのは手術から2~3ヵ月後だった」という結果が得られたそうです。
過度に安静にする必要はありませんが、初めのうちは身体的負担の多い活動を避けるなど、周囲の協力を得ながらもとの生活への復帰を目指しましょう。

合併症など体調に異変があったらすぐに受診する

大腸がんの手術後に起こりやすい合併症は、腸閉塞・縫合不全・創部感染などです。腹部の違和感・痛み・創部の腫れなど、体調に異変を感じたら、我慢はせずに手術を受けた医療機関へ相談・受診をしましょう。

定期検診をしっかり受ける

手術が終わった後も、術後の状態・合併症・再発の有無などを確認するために定期的な受診が必要です。受診では、診察のほかに採血検査・画像検査・大腸カメラなどを行います。
症状がなく日常生活を送れている場合でも、こうした定期検診はしっかり受けましょう。

転移の兆候がないか注意する

がん細胞が血液・リンパの流れに乗って移動し、離れた場所で原発巣由来のがんが発生することを「転移」といいます。定期検診でも転移には気を配っていますが、患者さん自身でも気になる症状があれば「大腸には関係なさそうな不調だから」と考えず医師に伝えてみましょう。

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