任意整理に応じない業者がいる理由と対処法を弁護士が解説

任意整理に応じない業者がいる理由と対処法を弁護士が解説

3、任意整理に応じるものの和解条件が厳しい業者もいる

先ほどもお伝えしたように、任意整理には応じるものの、和解条件が厳しい業者もいます。ここでは、そんな業者の特徴を解説していきます。

(1)将来利息の全部カットに応じない

任意整理をすると、通常は和解後に発生する利息(将来利息)はカットされ、元金のみを分割で返済していくことになります。

消費者金融の金利は高いので、将来利息がカットされるだけでも返済額をある程度は減らすことができます。

しかし、なかには将来利息のカットに応じない業者もでてきています。

もっとも、そんな業者も将来利息のカットにまったく応じないわけではなく、当初の契約では18%だった金利を和解後は5%程度とするケースが多くなっています。

(2)遅延損害金(経過利息)のカットに応じない

任意整理前に滞納していた分の遅延損害金と、任意整理を開始してから和解が成立するまでの利息(経過利息)についても、以前は多くの業者がカットに応じてくれていました。

しかし、最近では遅延損害金と経過利息のカットに応じない業者が増えてきています。

ちなみに、経過利息も通常は遅延損害金の利率で計算されます。

遅延損害金の上限利率は29.2%と高いので、滞納が長期間続いていたり、和解までに時間がかかったりすると、和解が難しくなってしまうでしょう。

(3)長期間の分割払いに応じない

任意整理では、3年~5年の分割返済で和解するのが一般的です。

比較的多くの業者は基本的に最大5年までの分割返済に応じてくれますが、なかには3年を超える分割返済には頑なに応じない業者もいます。

また、以前は交渉次第で6年~7年の分割返済に応じてくれる業者も少なくありませんでしたが、現在では返済期間が5年を超える和解は基本的に難しくなっています。

(4)早期に和解できないと訴訟を起こしてくる

任意整理をしても、早期に和解できないと訴訟を起こしてくる業者がいます。

弁護士や司法書士を通じて任意整理をする場合、業者が受任通知書を受け取った後は、債務者に直接返済を請求することが貸金業法で禁止されています。

しかし、訴訟で請求することは禁止されていないため、早期の債権回収を求め、業者は訴訟を起こすのです。

この点、多くの業者は、概ね半年程度は訴訟の提起を待ってくれます。

しかし、中には「3か月以内に和解できなければ訴訟をします」といって、実際に訴訟を起こしてくる業者もいます。

訴訟を起こされた後も裁判上の和解をすることは可能ですが、和解条件が厳しくなることが多いため、場合によっては和解できずに判決が下されることもあります。

4、どんな業者も場合によっては任意整理に応じないこともある

事情によっては、どんな業者も任意整理に応じないというケースもあります。

以下のような事情がある場合には、たとえ任意整理に積極的な業者であっても、交渉に応じない可能性が高いといえます。

(1)取引期間が短い場合

借り入れをしてからまったく返済していない場合や、1回しか返済していないような場合は、任意整理に応じてもらうのは難しくなります。

業者から見ると、このような債務者は「返済する意思がない」と考えられます。

「最初から利息を踏み倒すつもりで借りたのではないか」と疑われることもあるでしょう。

いずれにしても、誠意が見られない債務者と任意整理をして長期間の債権管理をするよりは、早期に自己破産や個人再生をしてもらって、社内では損金処理をしたいと考えることが多いようです。

また、数回は返済している場合でも、借り入れから半年も経たずに任意整理を開始したようなケースでは、和解できたとしても条件が厳しくなるのが一般的です。なぜなら、業者としてはまだ当初の契約による利益がほとんど得られていないからです。

このような場合は、遅延損害金のカットに応じてもらえない上に、将来利息も要求されたり、返済期間も最長3年までとされるケースが多くなります。

(2)業者が担保を持っている場合

業者が担保を持っている借金については、任意整理を開始するとその担保物件を取り上げられてしまいます。

そして担保物件が売却され、代金を返済に充当されて、それでも残高がある場合に分割返済の交渉が可能となるのみです。

たとえば、住宅ローンを組んで購入したマイホーム、自動車ローンを組んで購入した車、クレジットカードの分割払いで購入した商品の残代金などがこのケースにあたります。

そもそも担保というのは、当初の契約どおりに返済ができなくなった場合に備えて差し出すものですので、以上の処理は避けられません。

(3)すでに任意整理で最大限の譲歩をしている場合

相手の貸金業者とすでに過去に任意整理をしている場合は、さらに任意整理に応じてもらうことが難しくなることがあります。

任意整理に回数制限はないので、理論上は2回目でも3回目でも可能です。

しかし、前回の任意整理においてすでに業者が最大限の譲歩をして和解している場合、2回目の任意整理でさらに譲歩を求めることは基本的にできません。

ただ、前回の任意整理後に滞納して期限の利益を喪失し、一括返済を求められている場合に、2回目の任意整理でもう一度、分割返済を認めてもらうことは可能なことが多いです。

とはいえ、この場合には滞納した分も前回の任意整理で取り決めた返済期間内に返済しなければならないのが通常ですので、和解条件は前回よりも厳しくなるといえます。

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