大谷翔平の通訳・水原一平氏が告白「ギャンブル依存症」とは? やってはいけない支援は「お金を貸すこと」

ほかの依存症との違いは「犯罪率」「嘘」

――依存症はギャンブル以外にも、アルコールや薬物などもあります。ギャンブル依存ならではの特徴はなんでしょうか?

田中 もちろん、どの依存も根っこでつながっているところはあります。ただ、他者を巻き込む「被害者ありき」という意味では、ギャンブル依存はピカイチだと思います。

 例えばアルコール依存症の場合は体を壊すので、そこで治療につなげるチャンスがあります。でもギャンブル依存は健康を損なうわけではないので、体はピンピンしている。ギャンブル依存症の人間が行き詰まるのは、体ではなく「お金」です。

――そして消費者金融やカードローンに手を出していくんですね。

田中 そうなると家族に嘘をつき続けないといけないわけです。私もそうでしたが、ギャンブル依存症の夫を持つ妻は、みんな「夫に嘘をつかれたことが一番つらかった」と言いますね。私も、嘘をつく夫が二重人格に見えてしまいました。

 でもその嘘はギャンブル依存症という「病気」が言わせているんだとわかってからは、ちょっと楽になりました。愛とは関係ないんです。妻や子どもを愛しているギャンブラーもいます。結核になったら咳が出るのと一緒で、ギャンブル依存症になったら嘘をつくんです。そこを理解することで、何より当事者の家族の人たちが楽になれると思います。

――ギャンブル依存と嘘って、そんなにワンセットなんですね。

田中 ワンセットですよ! 自身の限界を超えた金を集めるためには、嘘をつくしかないですから。また嘘に加えて、先程お話しましたが、他人のモノを盗んだり、会社のモノを横領したり――となったら、これはもう「犯罪」ですよね。ギャンブル依存は他人に被害を及ぼす犯罪に非常に結びつきやすいです。また、1999年に二人の方が犠牲となった池袋通り魔殺人事件がありましたが、犯人の両親は重度のギャンブル依存で、家庭が崩壊していたとも報じられています。パチンコの駐車場で乳幼児が亡くなる事件も後を絶ちませんが、そうした子どもへの虐待や事件の背景に、ギャンブル依存が関係していることもあります。

ギャンブル依存症によくある誤解とは?

――はた目には「普通」に見える人たちがそうだとすると、周囲は気付かないですよね。

田中 銀行マンのお父さんの退職金を、ギャンブル依存になった子どもが全部使い切ってしまい、結局、ご両親は生活保護を受けているケースがありました。昔の時代の銀行マンですから退職金も高額だったはずです。でも、生活保護を受ける状況になって、ようやく「ギャンブル依存症問題を考える会」へご相談にいらっしゃいました。

――なぜ、そこまで状況を放置してしまうのでしょうか?

田中 自分や身内の問題を誰にも言えないんです。日本に強い「自己責任論」が大きいでしょうね。それに、ギャンブル依存の啓発教育も進んでいません。うちに来る相談でも、自分の子どもや夫がギャンブル依存症だと思っていない人が結構いるんですが、根拠は「だって、うちの夫や子どもは仕事してるんですよ?」なんです。「うちの子どもは仕事をしていますから、依存症というほどではないと思うんですけれどもね。まあ、ギャンブルの借金は1000万ありますけど」、みたいな相談があったりしますよ。

――田中さんに相談される方は、ギャンブル依存の当事者の親が一番多いんですか?

田中 親と奥さんが半々ぐらいですね。「100万から500万の借金の尻拭いをして気づいた」という方が多いです。以前は、相談に来るまで時間がもっとかかっていたんです。その頃は、親が金持ちでしたから、食い尽くすまで時間があった。でも今の50代は、子どもの借金を尻拭いできるほど、お金を持ってないですからね。

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