膀胱がんの手術の特徴
前述のとおり、膀胱がんには複数の治療方法があります。
ここからは、こうした治療方法について検討する際に、知っておきたい手術の特徴・現状について紹介します。
体力回復が早い
膀胱がんに対する手術のなかでも、膀胱全摘術・尿路変更術は侵襲の大きな治療です。
従来、上記の手術は開腹術であり、傷の大きさは臍よりも上~恥骨周辺にまでおよびました。しかし、現在では腹腔鏡手術など身体的負担の少ない手術方法が徐々に広まりつつあります。腹腔鏡手術には下記のようなメリットがあります。
手術創が小さい
手術中の出血が少ない
入院期間が短い
こうした治療が可能な医療機関を選ぶことで、術後の体力回復・社会復帰が早まる可能性があります。
なお、腹腔鏡手術は腹部に複数の穴をあけて器具を差し込み、器具を操作して腹腔内での作業を行う方法です。そのため、開腹手術よりも手術自体には長い時間を要することが多いとされます。
ロボット支援手術の保険適用
ロボット支援手術とは、腹腔鏡での作業を補助するロボットを使用した手術です。2018年からはロボット支援膀胱全摘除術が医療保険の適用対象となり、新しい技術を使った手術を以前よりも安価に受けられるようになりました。
温存療法も選択できる
膀胱がんに対する標準治療は、前述のようにがんの病期ごとに決まっています。しかし、標準治療はあくまでも治療効果が高いと考えられる治療法です。膀胱全摘術が標準治療として推奨される場合でも、患者さんの体力・希望・全身状態なども考慮しながら治療方針を決めていきます。
そのため、リスクを知ったうえで膀胱などの器官を温存するために、TURBT・抗がん剤・放射線治療での治療を選択することも可能です。
膀胱がんの手術前に知っておきたいこと
膀胱がんの治療では手術が第一選択となる場合も多いでしょう。
手術は効果の大きな治療ですが、手術を考える際には手術による影響・デメリットも把握しておくことが大切です。
性機能の異常
膀胱がんの手術では、膀胱とともに生殖器官も摘出する可能性があります。
この場合、下記のような性生活・性機能の問題が起こるため注意が必要です。
射精が起こらない
勃起不全
膣が短くなる
妊娠ができなくなる
がんの再発のおそれ
筋層に及んでいない膀胱がんをTURBTによって切除した場合も、がんが再発することがあります。
また、筋層に浸潤した膀胱がんは、膀胱全摘除術をした後も腎臓・尿管などの上部尿路やもともと膀胱があった場所にがんが再発する可能性があるのです。手術後の再発・遠隔転移がある場合は、抗がん剤などによる治療を検討します。
副作用や合併症の可能性
膀胱がんの手術のうち、TURBTでは施行後に血尿・頻尿・膀胱穿孔(膀胱に穴が開く)などが起こることがあります。
また、膀胱全摘術・尿路変更術においては下記のような合併症がみられます。
縫合不全
腹膜炎
術後感染
腸閉塞
尿閉
縫合不全とは手術で縫い合わせた部分がうまく癒着せずに開いたり、つなぎ目から尿が漏れたりすることです。これにより腹腔内に細菌が繁殖すると腹膜炎につながることもあります。
また、手術でできた傷が感染を起こしたり、腸管を切除したりすることによる癒着・狭窄で腸閉塞を起こすこともあるでしょう。
そのほか、新膀胱を作った場合は尿意を感じないため、尿が溜まりすぎて出なくなる「尿閉」や尿漏れに注意が必要です。
人工膀胱を使用する可能性
前述のとおり膀胱を全摘した場合には尿路変更術を行います。
このうち、回腸導管造設術・尿管皮膚ろう造設術では腹部に尿路ストーマ(人工膀胱)を造設することになります。「人工膀胱」と呼ばれるものの、尿路ストーマは実際の膀胱のように尿を溜めることはできません。そのため、尿路ストーマの開口部には常にストーマ袋(採尿袋)を付ける必要があります。
配信: Medical DOC