コーヒーや緑茶に「コレステロール値を下げる」効果は期待できるの?医師が解説!

コーヒーや緑茶に「コレステロール値を下げる」効果は期待できるの?医師が解説!

コレステロールを下げるには?Medical DOC監修位がLDL(悪玉)コレステロールの改善方法や数値が高い人の病気リスク等を詳しく解説します。

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監修医師:
関口 雅則(医師)

浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。

コレステロールとは?(悪玉LDL/善玉HDL)

近年、健康志向の高まりとともに食品や飲み物のCMなどでもよく耳にするようになった「コレステロールの値」。
しかしこの数値、肥満や病気のリスクが高まるイメージがあるものの、具体的にどんな症状がでるのか、数値の基準がいくつなのかを知っている方は少ないかもしれません。
今回は、コレステロールについて詳しくご紹介していきます。

コレステロールとは何?

コレステロールとは、血液の中に含まれる脂肪分のひとつです。
脂肪分(脂質)は、人の体を作るために必要な炭水化物・タンパク質とならび、三大栄養素のひとつに数えられます。
健康診断などで血液検査を行った場合、コレステロールの値は「脂質系検査」などと表記がされており、これらの項目の中で数値が高いものがないかを確認しています。
では実際の検査内容を見ていきましょう。

脂質系の異常を調べるためには、血液検査が行われます。
厚生労働省が定める健康診断の中にも、脂質系の検査項目が含まれています。
これらは、生活習慣病の早期発見と対策を目的に行われており、メタボリックシンドロームを発見するため「メタボ健診」といわれることもあり、耳にした経験をお持ちの方もいるかもしれません。
以下、特定健診を例に見ていきましょう。

特定健診の基本的な項目(脂質系検査)
・トリグリセライド
・HDLコレステロール
・LDLコレステロール
・Non HDLコレステロール
上記からも、コレステロールの中にはいくつか種類があることが分かります。

これらのコレステロールには、一体どんなはたらきがあるのでしょうか。
・HDLコレステロール:善玉コレステロールといわれています。動脈の壁についたコレステロールを洗い出す働きがあります。
・LDLコレステロール:いわゆる悪玉コレステロールです。高値の場合では心筋梗塞や脳梗塞の危険因子となります。
・Non HDLコレステロール:総コレステロールから、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を引いた値です。動脈硬化のリスクについて、総合的な指標として用いられます。

コレステロール値の基準値は?(悪玉LDL/善玉HDL)

コレステロールの値が高い場合、動脈硬化のリスクが上がることが分かっています。
動脈硬化とは、血液の中にある脂質が増加して、血液がドロドロになり、血管の壁に付着して血管の中が狭くなる現象のことを指します。

それでは、脂質系の血液検査について基準値や危険な数値を見ていきましょう。

検査項目
基準値
危険な数値(異常値)

トリグリセライド
(中性脂肪)
30~149
500以上

HDLコレステロール
(善玉コレステロール)
40~119
29以下

LDLコレステロール
(悪玉コレステロール)
60~119
180以上

Non HDLコレステロール
40~149
210以上

単位は㎎/dL

コレステロール値が高くなる原因は?

血液検査の結果でコレステロールの異常が指摘されると、脂質異常症(高脂血症)と診断をされ、治療が必要になる方もいます。
しかしコレステロールの値が上昇していても、無症状で経過し、気がつかずに数値が上がり続けてしまうといった恐れがあります。
それでは一体コレステロールが高くなる原因とは何なのでしょうか。

LDL(悪玉)コレステロールや、トリグリセライド(中性脂肪)が高くなる原因としてあげられるのは、以下となります。

高値となる原因
(危険因子)
補足

加齢
男性45歳・女性55歳以上から動脈硬化が増えやすいため。

高血圧
高血圧の場合、動脈硬化が進むため。

糖尿病
血管障害が起こりやすいため。

遺伝
家族性高コレステロール血症(FH)と呼ばれる、遺伝によって高LDLコレステロール血症となることがある。

閉経
体内のエストロゲンが急激に減少することで、LDL(悪玉)コレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が増えるため。

日本動脈硬化学会のガイドラインによると、LDL(悪玉)コレステロールや、トリグリセライド(中性脂肪)の上昇以外に、HDL(善玉)コレステロールの低値にも注意が必要と記載があります。
HDL(善玉)コレステロールが40㎎/dL未満の場合では、将来の冠動脈疾患や脳梗塞の発症・死亡を予測するものとなっており、LDLコレステロールだけではなく、HDLにも目を向ける必要があるのです。

生活習慣や食事などでも、LDL(悪玉)コレステロールや、トリグリセライド(中性脂肪)が上昇する可能性があります。

LDLコレステロール・トリグリセライドを上昇させる生活習慣

生活習慣
補足

喫煙
HDLを減少させたり、血圧が上昇する。

多量の飲酒
肝臓で中性脂肪の合成がすすむ。

夜型の食生活
活動量の少ない夜に食事をすることでエネルギー消費が追いつかないために、中性脂肪値が上昇する。

血液中のコレステロール値を下げる方法(悪玉LDL)

ここではMedical DOC監修医がコレステロール値を下げる様々な方法ついて解説します。

食事でコレステロール値を下げる

食事でLDL(悪玉)コレステロール値を下げるためには、以下の3つの成分を制限する必要があります。
①飽和脂肪酸
②コレステロール
③トランス脂肪酸

これらの成分に代表される食材がこちらです。

飽和脂肪酸
肉類の脂身や鶏皮・脂肪乳・ラード・バターなど

コレステロール
卵類・もつ・レバーなど

トランス脂肪酸
揚げ物類・スナック菓子・クッキー菓子など

LDL(悪玉)コレステロールを上昇させないためには、それぞれの成分ごとに、摂取の方法を変えることが重要です。

飽和脂肪酸
・脂身の多い肉類は控える
・肉の脂身を取りのぞく
・赤身の肉を食べる
・牛乳を低脂肪乳にする

コレステロール
・鶏の卵や魚卵を控える
・レバーやモツなどの内臓類を控える

トランス脂肪酸
・市販の洋菓子類を控える
・マーガリンやショートニング含有の食品を控える

コレステロール値を下げるには、3つの成分(飽和脂肪酸・コレステロール・トランス脂肪酸)の摂取を控えることが大切ですが、実際にどんなものを食べたらよいのかという疑問が出てきます。
ここからは、おすすめの食材などをご紹介します。

不飽和脂肪酸でコレステロール値を下げる

アジやサバといった青魚には、EPA・DHAといった「不飽和脂肪酸」の一種が含まれており、LDL(悪玉)コレステロール値を下げることが期待されています。
一日の摂取目安は、魚一切れ程度ですが、料理に手間がかかり、摂取しにくいという印象をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
そのような場合は、サバの缶詰や、アジを使ったレトルト食品を使うことがおすすめです。
おいしく、そして継続するためにも、こういった食材をうまく活用しましょう。
日本動脈硬化学会からは、一般の方向けのパンフレットが公開されています。こちらには、青魚を使ったレシピなどが紹介されていますので、コレステロールの値が気になる方は、ぜひ参考にして下さい。

食物繊維をとる

食物繊維がとれる食材には、野菜・海藻・きのこ・こんにゃくがあり、豆類およびまた納豆といった大豆の加工食品にも、食物繊維が多く含まれています。
さらに野菜だけではなく、玄米・全粒粉のパン・胚芽米や麦飯・蕎麦など、主食となる食材にも食物繊維が含まれており、たくさんの野菜を食べることが難しいと感じる方にもおすすめです。

油の取り方を変える

コレステロールの値が気になる方におすすめの油の種類は、多価不飽和脂肪酸です。
多価不飽和脂肪酸とは、コレステロールを低下させるはたらきを持つ油の種類を指します。
具体的には、ゴマ油・紅花油・コーン油や大豆油などが代表的です。

嗜好品の選び方

コレステロール値の上昇をおさえるために食生活を改善しようとしたものの、食事制限がきつすぎては、いくら健康的といっても続きません。
そこで嗜好品(お酒やお菓子など)を選ぶときの注意点をご紹介します。

◆お酒(アルコール)を選ぶ場合
低糖質や糖質ゼロと記載のあるビールなどを選ぶようにしましょう。ただし、高カイロミクロン血症の場合は禁酒のため、お酒はやめましょう。
※高カイロミクロン血症:血液中にあるカイロミクロンが蓄積して、高中性脂肪血症となり、血液が牛乳のように白濁する状態となる病気です。通常、食べ物に含まれる脂質が小腸でカイロミクロンという粒子になって血液の中に入りますが、このカイロミクロンの産生が増えたり、カイロミクロンの酵素の分解がさまたげられたりすることで、高カイロミクロン血症となります。

◆お菓子
市販のお菓子には、マーガリンやショートニング、クリームやバターが多く使用されており、コレステロール値が上昇してしまう恐れがあります。
おすすめは、小豆(あんこ)やきなこなどを使った和菓子です。これらの中には、食物繊維が多く含まれており、動脈硬化の予防となります。
ただし、いくら食物繊維が豊富といっても、お菓子であることには変わりませんので、食べ過ぎには注意が必要です。
このほか、乳製品を含まないゼリーであれば、脂質はほとんどなく、カロリーゼロの記載のものは、糖質もありません。

◆飲み物
コレステロール値が気になる場合におすすめしたい飲み物をいくつかご紹介します。
食事とは異なり調理の手間もなく、簡単に取り入れることができます。

飲料
効果・効能

緑茶
緑茶に含まれる茶葉粗カテキン(タンニン)は血中コレステロールを低下させる作用がある。

豆乳
大豆タンパク質による、血清コレステロール低下作用が報告されている。

コーヒー
動脈硬化の予防が期待できるポリフェノールが多く含有されている。

ウーロン茶
動物実験で、脂質代謝関係が高値のものにウーロン茶を与えたところ、数値の減少がみられた。

青汁
青汁に含有されている大麦若葉は、動物実験においてLDL(悪玉)コレステロールの上昇を抑える作用を有すると記載されている。

適正体重の維持でコレステロール値を下げる

コレステロール値を下げるためには、食事の改善が重要ですが、体重を適正にすることも大切な要素です。

・適正な体重(kg)の目安とBMI
適正体重(kg)の目安は、[身長(m)×身長(m)×BMI]で、す。BMI(18~49歳:18.5~24.9、50~64歳:20.0~24.9、65歳以上:21.5~24.9)とします。
BMIは、[体重(kg)]÷[身長(m)×身長(m)]で算出された数値を指します。

日本肥満学会の判定基準

BMI値
判定基準

18.5未満
低体重(やせ型)

18.5~25未満
普通体重

25~30未満
肥満(1度)

30~35未満
肥満(2度)

35~40未満
肥満(3度)

40以上
肥満(4度)

運動でコレステロール値を下げる

体重を適正なものにするためにも、運動は欠かすことのできない存在です。
しかし、急激な運動減量は、体への負担が大きく、継続できないといったことにもつながりかねません。
ご自身の年齢や減量期間を考慮しながら、医師と相談して減量に挑みましょう。

日本動脈硬化学会の2022年のガイドラインによると、以下の運動療法が推奨されています。

種類
有酸素運動を中心に実施する
(ウォーキング、速歩、水泳、エアロビクスダンス、スロージョギング、サイクリング、ベンチステップ運動など)

強度
中強度以上を目標にする*

頻度・時間
毎日合計30分以上を目標に実施する
(少なくとも週に3日は実施する)

その他
運動療法以外の時間もこまめに歩くなど、できるだけ座ったままの生活を避ける

*中強度
・通常速度のウォーキング(=歩行)に相当する運動強度
・メッツ(METs)(安静時代謝の何倍に相当するかを示す活動強度の単位)では一般的に、3メッツ(歩行)であるが個々人の体力により異なる。
・運動中の主観的強度としてボルグ・スケール11~13(楽である~ややきつい)

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