「恩人の死」きっかけに塾講師から転身…"令和初の保険会社"つくった弁護士の実感「資格がビジネスで武器になる」

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●「私は受験のプロ、そこまで受験勉強は苦ではなかった」

20代後半というタイミングで、小学生のときになりたいと思っていた職業をあらためて目指すことになった多田弁護士は、社会人として東京にいたこともあり、都内のロースクールへ進学することにした。

ロースクール入学まで社会人として働きながら勉強する方法も考えられた。そうすれば経済的負担の懸念はなくなるが、一方で勉強する時間はかなり限られる。

多田弁護士は、当時勤めていた会社を退職してロースクール入試の勉強に励む道を選び、みごと一橋大ロースクールに合格した。

「学習塾で教えていた私は、言ってしまえば『受験のプロ』。試験こそ違えど、合格するための勉強法は熟知しており、そこまで受験勉強は苦ではなかったです」

一橋大ローを選んだ理由として「(新)司法試験の合格率が高かったこと」「ビジネスロー・コースがあり、第一線で活躍する実務家教員からの指導を受けられること」をあげる。

「東京大学や京都大学のロースクールは内部進学者が多かったのですが、一橋大学は外部進学者の割合が高く、『社会人から進学する私を受け入れてくれるかも』という思いもありました」

●緊張感のある授業「教授の手元で点数がわかった」

ロースクール時代は「第二の青春ではありませんが、とても楽しい時間を過ごしました」と振り返る。もちろん、法律を学ぶことの厳しさもあったという。

「一橋大ローの初代院長をつとめた後藤昭先生の授業は本当に緊張しました。双方向の質疑応答(ソクラテスメソッド)でおこなわれるのですが、学生全員が毎授業1回は必ず当てられ、その答えを聞いて点数をつけられます。

頓珍漢な回答をすれば『マイナス何点』と書かれるのですが、先生の手の動きを見ればプラスかマイナスかがわかります(笑)。授業中は緊張の連続でした」

山本和彦教授(民事訴訟法)の授業も思い出深いと振り返る。

「取り上げた事例に司法試験的な回答を1つ出して『この回答に対して他にどういう考え方があるのか』ということを議論していく形式の授業がありました。

司法試験で良い点を取るためには最高裁の判例を覚えることが定石です。しかし、弁護士は時に最高裁の判例を塗り替える、いわば既成概念を打ち破ることも仕事となります。

1つのケースから多角的な考え方を導き出すトレーニングを積めた経験は、今でも大きく生きています」

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