「膵臓がんの手術方法」はご存知ですか?術後の注意点や入院期間も解説!

「膵臓がんの手術方法」はご存知ですか?術後の注意点や入院期間も解説!

日本での膵臓がんは近年増加傾向にあり、毎年3万人以上の方が亡くなっているとの報告もあります。

こんなに死亡率が高い病気にも関わらず、実際には膵臓が体のどこにあるのかさえ知らない方も少なくないのではないでしょうか。

膵臓がんはサイレントキラーとも呼ばれ、症状が出たときにはかなり進行して手術できないこともある怖い病気です。そこで今回は、膵臓がんの手術と術後の対策・注意点について詳しく解説します。

これから膵臓がんの手術を受ける方はもちろん、膵臓がんの症状がある・膵臓がんの家族歴がある方もぜひこの記事を最後までお読みください。

≫「膵臓がんの末期症状」はご存知ですか?原因や治療法も解説!医師が監修!

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

膵臓がんとは?

膵臓がんは、膵臓から発生した悪性の腫瘍です。そのうち約80~90%の大半を占めるのは、膵管に発生する膵管がんです。
膵がんは60歳以上の方で、やや男性に多く発症する傾向があるでしょう。膵臓は胃の裏側にある臓器で、その機能には以下の2つがあります。

膵液を分泌して消化吸収を促進する

インスリンを分泌して血糖を低下させる

このような膵臓の機能が低下すると、消化不良・下痢・食欲不振などの症状が出ることがあります。
膵臓がんが発生しても小さいうちは症状が現れません。進行すると、腹部膨満感・体重減少・腹痛・背部痛・高血糖・黄疸などの症状が起こることがあります。

膵臓がんの手術

膵臓がんの治療には、化学療法・放射線療法のほかに外科的療法として手術の3つがあります。
治療方法は、以下のような3つのがんの状態によって異なります。

切除可能:安全性に配慮し残りなくがんを切除できる状態

切除可能境界:剥離面にがんが残る可能性の高い状態

切除不能:がんを残りなく切除することができない状態

併せて、ステージI~IVでの病期の推移に伴う治療方法については以下を参照ください。

ステージI~IIまでの切除可能な膵臓がん:術前補助化学療法をして切除・補助化学療法を行う

ステージIIIの局所進行膵臓がん:化学療法・化学放射線療法の治療を行う

ステージIVの遠隔転移を有する膵臓がん:手術は行わず化学療法が適用される

膵臓の周りには重要な血管があるため、膵臓がんの手術は難易度が高く、術後合併症も多く発生しています。手術の前には、採血でお腹の状態を調べたうえで、超音波・CT・MRI・超音波内視鏡などを用いてがんの広がりを調べます。
また、生検といって病変の一部を採取してがんか否かを確認することもあるでしょう。
検査のうえで、手術が可能かどうかを基準に治療方針が決められます。

膵頭十二指腸切除術

膵臓の十二指腸近くにできたがんの場合は、膵頭十二指腸切除術と呼ばれる難易度の高い手術が必要になります。この手術では、門脈を中心に右側を切除し、膵頭部を切除する時は十二指腸・胆のう・胆管の一部も摘出します。
膵・胆管・胃に小腸を持ち上げてつなぎ合わせる(吻合)場合は、胃と腸を結ぶ再建をしなければなりません。術後に重症の合併症が起こりやすく、再手術が必要になるケースもあります。
術後に出血がある場合は、膵臓を切った部分から膵液が漏れて重症化する膵液ろうの可能性があるため、しばらくは厳重に経過をみる必要があるでしょう。

膵体尾部切除術

膵体部・尾部がんに対する手術には、膵体尾部切除術が行われます。
膵尾部には脾臓という臓器があり、門脈を中心に左側にがんがある時は、膵切尾部と一緒に脾臓も切除する場合が多いでしょう。
膵臓の対尾部と脾臓を摘出しますが、再建術は不要です。従来の開腹手術では大きな創部が残りましたが、最近の腹腹腔鏡手術では創部があまり目立ちません。
これによって患者側への体や心の負担が軽減されています。

膵全摘術

膵全摘術は、膵臓をすべて摘出する手術です。がんが膵臓全域に達している場合・膵切除の後に残った膵臓に腫瘍ができた場合には、膵臓の全摘出になります。
膵頭十二指腸切除と膵体尾部切除が組み合わさった膵臓を全摘出する手術で、体に与える影響が大きい手術といえるでしょう。
患者さん側への侵襲・ストレスをなるべく小さくするため、最終手段として選ばれます。

バイパス手術

バイパス手術は、がんで詰まった部分に迂回路を作る手術です。バイパス手術は多くの場合、進行した切除不能ながんに対して行われ、部位や病態に応じてさまざまな方法があります。
食べ物や胆汁の流れるルートを確保することが目的なので、がん自体は切除しません。
例えば、膵臓がんが小腸や大腸にまで達して消化管を塞いでいるような場合に、塞がった腸の前後をつなぐバイパス手術を行います。

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