「ASTとALTを下げるには」どうしたらいい?3つの改善方法を医師が解説!

「ASTとALTを下げるには」どうしたらいい?3つの改善方法を医師が解説!

健康診断のAST(GOT)・ALT(GPT)の見方と精密検査が必要なAST(GOT)・ALT(GPT)に関する数値・結果

健康診断・血液検査のAST・ALTの基準値と結果の見方

それでは、AST・ALTの基準値と結果の見方について説明します。
日本人間ドック学会では、AST・ALTの検査結果を以下の表のように定めています。

基準範囲
要注意
異常

AST
30以下
31-50
51以上

ALT
30以下
31-50
51以上

(単位U/L ユニットパーリットル)
こうした基準によって、健康診断での血液検査結果は「正常」「要注意」あるいは「異常」と判定されるのです。

健康診断・血液検査のAST・ALTの異常値・精密検査基準と内容

AST、ALTはいずれも51U/L以上の場合には、肝機能が一時的に悪くなっているのか、あるいは病気があってASTやALTが上昇しているのかを詳しく調べる必要があります。
精密検査では、肝機能検査の追加検査を血液検査で行います。例えば、ASTやALT以外の肝機能指標(ALP、γ-GTP、ビリルビンなど)を測定します。また、ウイルス性肝炎の検査として、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の感染を調べます。
さらに、超音波検査(エコー検査)で肝臓の形態や脂肪肝の有無などを確認します。必要であれば、CTやMRIで肝臓の詳細な画像診断を行い、肝臓の病変の有無などについて詳しく確認します。
こうした検査費用は施設や検査内容によって異なります。保険診療が適用される場合もありますが、自己負担が必要な場合もあります。具体的な費用については、受診する医療機関に事前に確認してください。
再検査や精密検査は、かかりつけ医や専門の肝臓病センター、大学病院などの専門医療機関で行うことが一般的です。異常値が確認されたら早めに(数週間以内に)精密検査を受けることが勧められます。

肝機能のAST・ALTが高い人がかかりやすい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、AST・ALTが高いと指摘された人にとって注意するべき病気・疾患を紹介します。

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞は、心臓の血管(冠動脈)が血栓などによって詰まり、心筋が酸素不足に陥ることで起こる病気です。主な原因は、動脈硬化による冠動脈の狭窄(狭くなる)や閉塞(詰まる)です。狭心症と似ていますが、心筋梗塞はより重篤で、心筋が壊死します。
AST、ALTはともに増えますが、AST>ALTのパターンをとることが多いです。
心筋梗塞の疑いがある場合、速やかに救急車を呼び、病院で治療を受ける必要があります。初期治療では、血栓溶解療法や冠動脈造影による冠動脈内ステント留置術(PCI)が行われることが多いです。
胸痛、胸の圧迫感、息苦しさ、冷や汗などの症状が5分以上続く場合には、すぐに医療機関を受診することが必要です。
心臓内科や循環器内科で診察を受けることになります。

ウイルス性肝炎

ウイルス性肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)などのウイルスによって引き起こされる肝臓の炎症です。感染経路はウイルスによって異なり、血液や性行為、食品や水などが原因となることがあります。
AST、ALTはウイルス性肝炎の急性期では高値を示すことがあります。慢性化した場合には、肝細胞が壊れ、減っていきます。すると、炎症を起こす細胞自体がなくなるので、ASTやALTは徐々に減少していきます。
ウイルス性肝炎は、原因となるウイルスによって治療法が異なりますが、B型肝炎ウイルスによる急性肝炎では一般的に抗ウイルス薬は使いません。B型慢性肝炎の場合には、インターフェロン(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)を行います。C型慢性肝炎の場合には、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の内服治療が行われます。
黄疸、倦怠感、食欲不振、腹痛、発熱などの症状が現れた場合には、肝臓内科や消化器内科で診察を受けましょう。

脂肪肝

脂肪肝は肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。原因には、肥満、高脂血症、糖尿病、過度のアルコール摂取などが挙げられます。
脂肪肝の改善には、適切な食事、定期的な運動、体重管理などの生活習慣の改善が重要です。また、アルコールを控えることも肝臓への負担を軽減します。お酒を飲まない人の脂肪肝のなかにも肝炎になるケースがあり、「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」と呼ばれます。これは、肝硬変や肝がんの前段階となってしまうこともあります。
脂肪肝は特に自覚症状がないため、定期健康診断で脂肪肝の所見があった場合には再検査や精密検査を受けるようにしましょう。肝臓内科や消化器内科で診察を受けることが一般的です。

アルコール性肝障害

アルコール性肝障害は、長期間の過度なアルコール摂取によって肝臓が損傷する病気です。アルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変などが含まれます。
治療法では、アルコールの摂取を完全に中止することが最も重要です。また、栄養療法としてビタミンB群や亜鉛などの栄養補給が行われることがあります。
過度なアルコール摂取の習慣があり、肝機能の異常が気になる場合には肝臓内科や消化器内科で診察を受けることが必要です。

薬剤性肝障害

薬剤性肝障害は、特定の薬物によって肝臓が損傷する病気です。抗生物質、抗てんかん薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが原因となることがあります。また、サプリメントなどによっても肝障害が現れる可能性があります。
AST、ALTは増加しますが、肝障害のタイプによってその上がり方のパターンは変わってきます。
対処法は、はじめに肝障害の原因と考えられるような薬物の使用を中止することです。そして、肝機能の回復を確認するために、定期的な検査が行われます。
特定の薬物を服用後に黄疸、倦怠感、食欲不振などの症状が現れた場合には、内科や肝臓内科で診察を受けることが一般的です。また、原因薬を処方した科に相談することも重要です。

溶血性貧血

溶血性貧血は、赤血球が正常よりも早く破壊され、血中の赤血球数が減少することによって引き起こされる貧血の一種です。原因としては、遺伝的要因、自己免疫疾患、感染症、薬剤反応、物理的損傷などがあります。
血液検査ではヘモグロビンの低下や、肝機能では血清間接ビリルビンという項目が上昇する所見などが見られます。また、赤血球が壊れることを溶血(ようけつ)といいますが、そのためにAST、ALTが増加することがあります。
溶血性貧血では原因に応じた治療が行われます。たとえば、自己免疫性溶血性貧血の場合はステロイドや免疫抑制剤や脾臓摘出術(ひぞうてきしゅつじゅつ)が行われることがあります。
強い疲労感、息切れ、動悸、黄疸、尿の色が濃いなどの症状が現れた場合や、もともと溶血性貧血と診断されており、症状が悪化した場合は受診が必要です。この際には、血液内科や内科で診察を受けることが一般的です。溶血性貧血の症状や原因に応じて、専門の医師による診断と治療が行われます。

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