「直腸がんの手術方法」はご存知ですか?術後の合併症についても解説!

「直腸がんの手術方法」はご存知ですか?術後の合併症についても解説!

直腸がんの外科治療の種類

直腸は大腸の一部で、肛門の直前にあるほぼ真っすぐな器官です。
構造上、直腸S上部・上部直腸・下部直腸の3つからなります。解剖学的にも複雑なので、それぞれの部位に最適な方法で治療を行う必要があるでしょう。
直腸がんの手術には、以下のような種類があります。

直腸局所切除術

前方切除術

直腸切断術

括約筋間直腸切除術(ISR)

腹腔鏡下手術

それぞれ、詳しくみていきましょう。

直腸局所切除術

肛門近くの直腸がんは、肛門の方から腫瘍だけを切除する局所切除術で治療が可能です。
開腹しない手術なので、痛みが軽減できる・傷跡も目立ちにくいというメリットが大きいでしょう。
肛門括約筋を切る方法と切らない方法がありますが、肛門側から切除できない場合は開腹手術になってしまうので注意してください。

前方切除術

前方切除術は、がん腫瘍に冒された直腸と転移の可能性があるリンパ節を切除し、肛門側の直腸とS状結腸を縫い合わせる手術です。
直腸の一部を切除した場合は、便を溜めたり押し出したりする力が損なわれるため、排便回数の増加など排便障害が起こりやすくなります。また、直腸切除の場合は、腸の長さが短くなるために後遺症が生じます。

直腸切断術

直腸切断術では、直腸・リンパ節・肛門を切除します。肛門がなくなるため、おへそ付近の左下腹部に人工肛門を作成します。

括約筋間直腸切除術(ISR)

肛門近くのがんでも肛門を極力温存する方法です。
肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋の2つの筋肉がありますが、外肛門括約筋を温存することによって肛門機能を保ちつつ、腫瘍との距離を確保したうえで切除します。

腹腔鏡下手術

ダヴィンチ手術を含む腹腔鏡下手術では、炭酸ガスで膨らました腹腔内のスペースを利用して手術を行います。
腹部にトロッカーと呼ばれるアクセスツールを挿入し、腹腔鏡と呼ばれる細長いカメラでがん細胞をモニター画面で確認しながら手術を進めます。
切除した腸管や腸間膜を取り除くため、おへそ部分に3〜5センチ程度の皮膚切開が必要ですが、従来の開腹手術より創が小さいため痛みも軽減されるでしょう。

ロボット支援下手術

ロボット支援による直腸切除術は、アメリカで開発されたダヴィンチと呼ばれる手術支援ロボットを使用して手術を行います。
ロボットアームを介して複雑に曲がるロボット鉗子の支援を受けながら腹腔鏡下直腸切除術が行えます。
実際の術者の手の動きが細かく再現されるうえ、手振れも補正されるため、人間の目や手だけによる手術より正確な操作が可能でしょう。

直腸がんの手術の合併症は?

直腸がん手術後の後遺症には、直腸がなくなってしまうことによる症状と自律神経の障害による症状の2つがあります。
直腸の拡張が骨盤神経から脳へ伝わることで私たちは便意を感じ、内肛門括約筋が締まることで排便が止められています。
この排便機能に関係する直腸がなくなるということは、一体どのような影響があるのでしょうか。以下に、詳しく解説します。

排尿困難

排尿困難は、骨盤の自律神経が傷つくために起こる合併症です。尿意を感じにくいため、自力で排尿しにくい状態を排尿困難といい、以下のような症状があります。

尿が出きらず膀胱に溜まる

残尿感がある

尿失禁・尿漏れが起こる

直腸がんの手術においては、直腸の前方に位置する膀胱にも影響が出てしまいます。
尿漏れを起こしてしまうからと、尿パッドが手放せない方もいるでしょう。これを避けるためには、できるだけ骨盤内の自律神経を傷つけないように手術を行わなくてはなりません。

排便困難

直腸がんの手術では、すべての人に排便障害が起こるわけではありません。排便困難には、以下のような症状があります。

排便回数が増加する

1回の排便の量が減る

残便感が残る

突然に便意を催す

便漏れ・便失禁が起こる

これらの症状は、直腸がなくなること・肛門括約筋が傷つくこと・自律神経の損傷の3つに起因しています。予測もつかない便意のため、外出できない方もいるので注意しましょう。

腸閉塞

直腸がんに限らず大腸がん全般にいえることですが、成長したがん組織が腸を完全に防いでしまうと腸閉塞を起こすことがあります。
腸閉塞になると、嘔吐・膨満感・腹痛などの症状が強く出るので注意してください。また、血流が阻害されると手術が必要になります。

縫合不全

腸管をつなぎ合わせる縫合がうまくいかず、縫い目から便やおならなど腸の内容物がお腹の中に漏れ出てしまう合併症です。
肛門に近い直腸がんの手術では、術後に縫合不全が起こりやすくなります。縫合不全によって腹膜炎を発症する可能性もあり、発熱・腹痛などの症状が出るので注意してください。

性機能障害

直腸周辺には排泄機能の神経が集中しているため、手術で骨盤内臓器の切除・性機能の神経の損傷があると性機能障害を生じることがあります。
直腸が骨盤内にあるため、男性では前立腺・精のう・膀胱、女性では腟・子宮・卵巣・膀胱の機能に深く関係していることが原因といえるでしょう。

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