現行の児童手当には所得制限があるため、年収1500万円のような高所得世帯には支給されません。
一方、2024年10月分からの児童手当は制度が拡充され、所得制限が撤廃される見込みです。これまで児童手当を受け取れずに不公平さを感じていた世帯の人にとっては朗報ではないでしょうか。
本記事では現行の児童手当の内容と、拡充される新制度の概要や変更点などについて解説します。
児童手当とは
児童手当とは、中学校卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日)までの児童を養育している世帯を対象に、一定の手当が支給される助成制度です。家庭の生活の安定や、次世代を担う児童の健全な育成に資することを目的にしています。
児童手当の支給額
児童手当の金額は、子どもの年齢や人数によって異なります。具体的な支給額は図表1のとおりです。
図表1
こども家庭庁 児童手当制度のご案内を基に筆者作成
児童手当は一定以上の所得を超えると支給されなくなる
児童手当は一定の所得を超える世帯に対しては満額が支給されなかったり、あるいは全額が支給停止になったりするケースがあります。
地方自治体では認定請求日および毎年6月に、受給者や配偶者の前年または前々年の所得を確認し、手当額の審査・決定を行います。審査対象になる所得は以下のとおりです。
●1月~5月分の手当:前々年の1月1日~12月31日の所得額
●6月~12月分の手当:前年の1月1日~12月31日の所得額
●手当をすでに受給している:6月の現況届審査時に、前年の1月1日~12月31日の所得額を確認
児童手当が制限される所得額は扶養する人数によっても異なります。所得制限限度額は図表2のとおりです。
図表2
扶養人数等の数 | (1)所得制限限度額 | (2)所得上限限度額 | ||
---|---|---|---|---|
所得制限限度額 | 収入額の目安 | 所得制限限度額 | 収入額の目安 | |
0人 | 622万円 | 833万3000円 | 858万円 | 1071万円 |
1人 | 660万円 | 875万6000円 | 896万円 | 1124万円 |
2人 | 698万円 | 917万8000円 | 934万円 | 1162万円 |
3人 | 736万円 | 960万円 | 972万円 | 1200万円 |
4人 | 774万円 | 1002万円 | 1010万円 | 1238万円 |
こども家庭庁 児童手当制度のご案内を基に筆者作成
所得が(1)の所得制限未満なら全額が支給されます。一方、(1)以上(2)未満では満額の児童手当は受け取れず、児童1人当たり月額一律5000円の特別手当が代わりに支給されます。児童を養育している人の所得が(2)以上になると、児童手当等は支給されなくなります。
2024年10月分から児童手当が拡充して制限や年齢制限も緩和される
2024年10月分の児童手当から、児童手当の拡充や制限の緩和といった措置が取られることが予定されています。従来の児童手当制度からの変更点は以下のとおりです。
●第3子以降には月3万円が支給される
●支給回数が年3回から6回に変更される
●所得制限の撤廃
●支給期間の延長
第1子と第2子の支給額は現行制度と変わりませんが、第3子以降は一律で月3万円に引き上げられます。また、前章で解説した所得制限が撤廃され、支給対象を全ての子どもに拡大される予定です。
支給期間も現行の「中学生まで」から「高校生(18歳の誕生日後の最初の3月31日)」まで引き上げられることが予定されています。
一方で、高校生(16歳以上)などを扶養する親の所得税の控除額を、現在の年間38万円から25万円、住民税の控除額を年間33万円から12万円に引き下げるという案も検討されています。
すべての所得層で控除の縮小による税負担増よりも、子ども1人当たり年間12万円の児童手当の増額分が上回りますが、所得が多い家庭ほど実質的な手取り額の増加が少なくなる設計です。
配信: ファイナンシャルフィールド