扶養内で働いて税金や社会保険料の負担を抑えたい場合、意識しなければならないのは「103万円の壁」「130万円の壁」などと呼ばれる、扶養を外れる収入額のボーダーラインです。壁を超えないように働き方を調整する際に、通勤にかかる交通費は含めるのか、除いてもよいのか迷った人もいるでしょう。
そこで本記事では、扶養内で働くときの収入の壁に交通費は含めるのかどうかを、ケース別に解説します。
【103万円の壁】通勤手当には1ヶ月当たりの非課税枠が設けられている
交通費が時給とは別に「通勤手当」「交通費」などの名目で支給されている場合、国が定めた非課税限度額を超えない範囲であれば103万円の判定に影響せず、所得税は課税されません。交通費の非課税限度額は、図表1のように定められています。
【図表1】
(1)交通機関、有料道路を利用している | 合理的な経路・方法による運賃の額(最高限度15万円) |
(2)自動車や自転車で通勤している | 距離に応じて最高限度3万1600円 |
(3)通勤定期券を支給されている | 合理的な経路・方法による運賃の額(最高限度15万円) |
(4)1と2または3の併用 | 合理的な経路・方法による運賃の額と(2)の合計額(最高限度15万円) |
国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」より筆者作成
交通機関を利用して片道800円の交通費がかかる場合、1ヶ月に20日出勤したとしても合計で3万2000円です。わざと遠回りをして出勤しているなど不合理と判断される事情がなければ、交通費を全額受け取っても非課税です。
ただし、交通費が別途支給されておらず時給に含まれている場合は、交通費も所得に含まれます。交通費として消費している金額も含めて103万円を超えれば所得税が課税される(扶養を外れる)ため注意しましょう。
【社会保険の扶養】130万円の壁の判定時は交通費を含む
社会保険の被扶養者資格の基準である、130万円の壁の判定時はどうでしょうか。
社会保険の被扶養者になるための収入の要件は、「年間収入が130万円未満かつ扶養者の2分の1未満である」ことです。判断の対象は所得ではなく年間収入であるため、通勤手当などの非課税の収入や手当もすべて含めて考える必要があります。
自分自身で社会保険料を負担しないでよい範囲で働きたい場合は、収入の調整をするときに、交通費を失念しないように注意しましょう。
配信: ファイナンシャルフィールド