発達障害の子のための「すごい道具」 どんなものがある?

第3回 発達障害の子のためのすごい道具
発達障害の子の多くは、健常な発達をする子にくらべて、得手・不得手がはっきりしていると言われています。一般的に使いやすい文房具などの道具も、発達障害の子にとって使いこなすことが難しいこともしばしば。

そうした“困り感”(学校などの集団生活、家庭での日常生活でつまずきや戸惑いを覚えること)を解消し、「できる」を増やすための道具を数々自作してきたのが、特別支援教育の第一人者でもある安部博志(あんべひろし)先生。そこで、一般向けに販売されている商品のなかから、不得意なことを持つ子の手助けになってくれる道具を紹介してもらいました。

●衝動的な子、力の加減ができない子の訓練になる「ボトルチップス/平和工業」(1500円)

「『そっと何かを置く』ときの指先の力加減が苦手な子は、調整力がありません。たとえば、給食を配るときにトレーにお皿を乗せて運ぶという行為に難しさを感じてしまいます。そこで、ゲーム感覚で調整力を鍛えられるのが、『ボトルチップス』です。これは牛乳瓶のような木のボトルのうえに、チップを重ねていくというゲームアイテム。崩さないようにするには、チップをそっと置く必要があるので、指先の感覚を意識することができるんです。遊び感覚で楽しめるので、子どもにとって魅力的な道具だといえるでしょう」(安部先生、以下同)

【発売元・問い合わせ】 
平和工業株式会社 052-761-6287
http://www.mocco.jp/

発達障害の子のための「すごい道具」 どんなものがある?

●何分進んだか“見える”時計「タイムタイマーパーソナル/アクセス インターナショナル」(5800円)

「発達障害の子は、時計の針やデジタルの表示が分からないケースがよく見受けられます。『時間の概念』と『数字が意味すること』のイメージが結びつきません。そのため、時間の長さをとらえることが難しく、授業や遊びの時間が突然終わったという感覚になってしまうのです。そこで、おすすめなのが『タイムタイマーパーソナル』。残り時間を“赤い面積”で表示するため、時間を量で捉えることができるんです。赤い部分が常に動いていて、減っていくので、時間の概念も分かりやすいんです。こうした時計に限らず、1日、1週間という期間も“見える化”してくれる道具は、子どもたちの混乱や不安を避けるうえでとても有効です」

【発売元・問い合わせ】
株式会社アクセスインターナショナル 03-5856-9611
http://www.accessint.co.jp/

発達障害の子のための「すごい道具」 どんなものがある?

●カッとなる感情をコントロールする「ストレスリリーサー/アイシン精機」(480円)

「感情のコントロールが上手くできない子のなかには、すぐにカッとなって友だちを叩いたり蹴ったりしてしまう子どももいます。つまり自己調整力が働いていない状態です。この『ストレスリリーサー』は感情が爆発しそうなときにぎゅっと握るなど、使い方次第で気持ちを落ち着かせることができるようになります。たとえば“怒りレベル”が1になったら水を飲みに行く、レベル2になったらストレスリリーサーを握ってみる、といったかたちでカッとなる段階に応じたクールダウンの方法を教えてあげましょう。これで上手く気持ちを冷ますことができたら、必ず『素晴らしいね!』『よくできたね!』と褒めてあげることも忘れないでくださいね」

【発売元】
アイシン精機株式会社
http://www.aisin-asleep.com/

発達障害の子のための「すごい道具」 どんなものがある?

●失敗が多くて落ち込んでいる子の心を元気にする「見る目をかえる 自分をはげます かえるカード/tobiraco」(3900円)

「障害を持っている子を一面的に見たら、『できないことが多い』『ちょっと外れたことをする』など、ネガティブに捉えてしまいがちかもしれません。しかし、ネガティブなことでも柔軟な発想でひっくり返せば、ポジティブな言葉で表現できることもあります。そんな“技”を世の中のお母さんが身につけてくれたら、どんなに子どもが救われるだろうと思い、私が考案したのが『見る目をかえる 自分をはげます かえるカード』です。いわゆる異なる見方でとらえ直す『リフレーミング』を感情や状況ごとに整理したもので、たとえば、片面に『気が散りやすいね』とネガティブな表現が書いてあるカードのもう片面には『いろんなことに興味がもてるんだね!』と書いているなど、物事を肯定的に考えられるようになる言葉を記しています」

【発売元・問い合わせ】
株式会社tobiraco 03-6425-6912
https://tobiraco.co.jp/

発達障害の子のための「すごい道具」 どんなものがある?

●自分のことを表現できない、相手の話を聴けない子に「きいて・はなして はなして・きいて トーキングゲーム/tobiraco」(2500円)

「人の話を最後まで聴けずに自分だけ喋り続けてしまったりする子が、コミュニケーションの楽しさを発見できる道具です。『質問カードをめくって、それに対して答える』というシンプルなアイテムですが、『好きな果物は何?』といったよくある質問から、『1日だけ魔法使いになれるとしたら、何をする?』など、さまざまな会話を楽しめるような仕掛けになっています。自分の内面をさらけ出すことに抵抗感がある子のなかには、批判や批評をされることに強烈な嫌悪感を抱く子もいるので、どんな発言も否定せず真剣に耳を傾けることがゲームのポイントです」

【発売元・問い合わせ】
株式会社tobiraco 03-6425-6912
https://tobiraco.co.jp/

発達障害の子のための「すごい道具」 どんなものがある?

発達障害の子のだけではなく、社会生活において生じる“苦手なこと”の克服に一役買ってくれそうな道具の数々。もし我が子が困り感を解消できずに悩んでいたら、こうした道具の利用を考えてみてはいかがでしょうか。

(取材・文=末吉陽子/やじろべえ)

お話をお聞きした人

安部博志
安部博志
筑波大学附属大塚特別支援学校主幹教諭
群馬県出身。慶應義塾大学文学部卒業。長野県の小学校(通常学級)で4年間、さらに盲学校で3年間担任をする。その後、東京都の小学校(特別支援学級)で7年間担任をする。この間、筑波大学大学院(夜間)を修了し、1998年から筑波大学附属大塚特別支援学校の教諭として現在に至る。専任の特別支援教育コーディネーターとして、2003年度から地域の子どもと保護者、教師の相談・支援にあたっている。
群馬県出身。慶應義塾大学文学部卒業。長野県の小学校(通常学級)で4年間、さらに盲学校で3年間担任をする。その後、東京都の小学校(特別支援学級)で7年間担任をする。この間、筑波大学大学院(夜間)を修了し、1998年から筑波大学附属大塚特別支援学校の教諭として現在に至る。専任の特別支援教育コーディネーターとして、2003年度から地域の子どもと保護者、教師の相談・支援にあたっている。