夫の過労死への心配の前に 月の労働時間を確認しよう
これだけ大きな社会問題になったことで、「いつか我が夫も倒れるのではなかろうか」と不安を抱く妻も増えていそうですが、そもそも、世の中一般にはどのくらい働いているものなのか、いまいちわからないという人が働いている人のなかにも数多いのも事実です。
そこで、手始めに厚生労働省が発表する「毎月勤労統計調査 平成29年9月」(確報)を調べてみると、事業所規模5人以上の月間実労働時間の平均は、調査産業計で144.0時間。業種によっても開きがあり、もっとも労働時間が多い業種は、「建設業」で174.1時間。逆に、短い業種は「飲食サービス業等」で97.9時間となっています。
だからといって、飲食サービス業等が楽…というわけではないので、数値の見方にご用心。飲食サービス業等はシフト勤務であることも多く、スタッフ数を増やし、一人当たりの労働時間を減らしている店舗などもあることから、実労働時間が短く見えている可能性も高い。また、飲食サービス業に限らずどの業界にも言えることだが、労働時間に計上されない労働時間が発生している場合もあります。こうした数値は、あくまでも一般的な相場として捉えるべきですが、夫や妻、自身のパートナーの1カ月の労働時間と比べて、いかがでしょうか?
【参考】
調 査 産 業 計 144.0
鉱業,採石業等 163.3
建 設 業 174.1
製 造 業 165.9
電気 ・ ガス業 153.2
情 報 通 信 業 156.9
運輸業,郵便業 173.5
卸売業,小売業 135.8
金融業,保険業 145.1
不動産・物品賃貸業 153.9
学 術 研 究 等 154.3
飲食サービス業等 97.9
生活関連サービス等 132.1
教育,学習支援業 131.0
医 療,福 祉 136.0
複合サービス事業 149.6
その他のサービス業 144.0
過労死ラインは80時間
では、残業時間はどうでしょうか。
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署が発表しているリーフレット「時間外労働の限度に関する基準」によれば、時間外労働に関して1カ月なら45時間。1年間なら360時間(一般労働者の場合)のように、その上限が定められています。時間が許す限り、無制限に残業をさせてよいというわけではないのです。
そして、月80時間の残業は「過労死ライン」と呼ばれています。業務による明らかな過重負荷は、脳内出血やくも膜下出血などの脳血管疾患、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患等を引き起こしやすいのです。もしも、パートナーが過労死ラインを越える働き方をしていたら、すぐに労働時間を改めるよう働きかけましょう。
また、過労は会社での仕事だけでなく、家事や育児も然り。朝から夜まで一晩中子どもの世話になってしまう人や、日中働きながら育児もこなすママも同様に注意が必要です。
過労状態からの脱出法について、カウンセリングルーム アンフィニの青柳雅也さんにお聞きしたところ、「多くの人は、もうちょっと我慢すれば、あと何年我慢すればという我慢をしてしまいがち。自分の命があと1週間しかなかったならどうしたいか、そう考えてみると本当に今どうしたいかに気づけるかもしれません。『このままではいけない』と気づくことが大切なのです」と、警鐘を鳴らします。
苦しいのは今だけと楽観的に考え、つらい状態から脱せなくなってしまうのは危険。思考停止に陥ってはいないか、今一度普段の過ごし方や仕事への考え方を見直す必要がありそうです。
(文・鈴木大介/考務店)